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読書レビュー「身銭を切れ」

前作「反脆弱性」が好きだったので買ったものの難解すぎて、年末から2回読み直した本。思い切ってそろそろまとめます。

あまりに多岐にわたる話題なので全然頭に入らず2回読んで大まかに理解したのは、この本は著者による「世の中にはリスクとリターンの非対称性がこれだけ溢れていますよ」という壮大なエッセイの一部分だということです。タイトルにもなっている「物事は身銭を切る(=リスクを負う)当事者が決めるべきで、外野はいつも話をややこしくするだけ」という話はその中の一つの話です😅

前作から繰り返される著者の主張は様々で、「◆大企業経営者が100年に一度利益をふっ飛ばすテールリスク(ブラックスワン)の責任を取らずに、残りの99年間は利益を出してさえいれば高額報酬を得られるのは本当にフェアと言えるのか(今の経営者には『時限爆弾』を隠すインセンティブが多分にあるのでアンフェアだ)」、「◆紛争問題を始めとした世界の諸問題は、火の粉のかからない(=身銭を切らない)立場の人間が話をややこしくしているので彼らの話は聞くべきでない」、「◆長く生き残るシステムには、外部環境の変化によって補強されていく特徴(≒反脆弱性)が共通している」、「◆個人で取るべきリスクを見誤るな(最悪でも生き延びれるリスクだけ取りなさい)」と、共感できる部分は多いです。リスク評価の誤りもテーマの1つなので、名著「Fast&Slow」のような行動経済学のエッセンスも多分に含まれます。

投資銀行でリスク評価をしているめちゃくちゃ頭の良い人が、身近なリスク評価の誤りについてひたすら皮肉を話しているエッセイとして読む感じの本です。ただ、もう少しわかりやすい表現もできると広く伝わるのではーと😅

(以下引用)
"身銭を切れ――「リスクを生きる」人だけが知っている人生の本質"(ナシーム・ニコラス・タレブ, 望月 衛, 千葉 敏生 著)

"本書では、次の4つの話題を同時に論じている。(a)不確実性と、実践的な知識や科学的な知識の信頼性(両者が違うものだと仮定して)。もう少しぶしつけな言い方をするなら、たわごとの見分け方。(b)公平、公正、責任、相互性といった人間的な物事における対称性。(c)商取引における情報共有。(d)複雑系や実世界における合理性。この4つが切り離せないものであるということは、身銭を切っている人間にとっては明々白々な事実だ。身銭を切ることは、公平性、商業的な効率性、リスク管理にとって必要なだけではない。この世界を理解するうえで欠かせない条件なのだ。"

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