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aikoのカブトムシとブルーハーツ

音楽番組でaikoの「カブトムシ」のMVが流れていた。

いい曲である。男の自分でも沁みる。

リリースされたのは自分が20代後半で、ある意味恋愛狂騒曲の時期だったので、もっとドンピシャだったはずなのに、あの頃はあまり好きとは言い難かった。といってもアンチ巨人ファンが巨人ファンであるように、多分気になって仕方なかったのだと思う。

ブルーハーツは『人にやさしく』という曲に見られるように、「気が狂いそう」から始まって「優しい歌が好きで」と真逆な言葉を続ける天才的なソングライティングをしていた。『リンダリンダ』の「ドブネズミみたいに」「美しくなりたい」、『NO NO NO」の「戦闘機が買えるくらいの」「はした金ならいらない」などなど。

aikoのカブトムシ。よく見るとカブトムシって黒くて不気味だし、ゴキブリなみに実は汚いらしい。その不気味で汚いものを「私」であると名乗りをあげて歌うが、その歌声は透き通るような、それでいて味がしっかりある美しい声なのである。

これってブルーハーツそのもの。
しかもカブトムシって死ぬときに羽から変な気味悪い茶色いのがはがれるようにほころんで出てきて動かなくなるし、短命である。それを「生涯忘れることはないでしょう」ってどんだけロマンチック番長(略してロマ番)なんだと。

しかもブルーハーツの歌う「生き方」「生きざま」にはある程度普遍的な礼儀正しさや思いやりみたいなものがあるけれど、人それぞれ、様々な観点を持って様々な角度でコミットメントする恋愛をこういう手法で歌うのはすごく難しいことなんじゃないかなと。そういうことをさらっとやってしまうのがすごい。ディーバというに相応しいなと思いました。

自分よりも結構若い世代(1990年生まれくらいか)の作家たちの小説を読んでいると、aikoが絶大な人気を誇っている(ユーミンとか桑田佳祐並み)のだなあ、と感じるのだけれど、その理由がよくわかります。

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