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Day One,Day Two

僕が通っていた中学校と、当時僕が住んでいた家とは距離があった。

僕は学区の外れに住んでいたが、当然学区のほぼ中心、学校に近い所に住んでいる人もいる。

僕が教科書を忘れた場合、まずは他のクラスの友達に教科書を借りに行く、それが都合がつかなければ隣の席の人に見せてもらう。

だいたいの人はこんな感じの手段を取ると思う。

僕がクラスの中で仲良くなった中学の友達の一人は、学校の目の前に住んでいた。

その人の元々の性格なのか計算なのか、とにかく教科書を学校に持って来ない。

そして、その授業の前になると先生に「教科書取りに家行ってくる」と言って教室を飛び出す。

僕の手を引いて。

僕はしっかり者の生徒なんかじゃないけど、先生は「とりあえず付き添いは必要」と言いたげに、一緒に教室から、学校から出ることが許可されていた。

学校から僕の家は遠い。

とても休み時間10分の間に行って帰ってきてなんてできない。

その人は学校の中では少し暴走気味だったけど、面倒臭がりでもある。

後々先生に怒られるのが嫌で(でも教科書は持って来ない)、学校を出てまっすぐ家に向かい教科書を手に取り、まっすぐ学校に帰ってくる。

なんなら中学生特有の「え、もう教科書取ってきたの?」と言われて笑われたい速さ勝負みたいなスピード感で往復していた。

僕はただ同行するだけだけど、離れたところに住んでいる僕には考えられない"合法的に学校を飛び出せる非日常感"が楽しくて仕方がなかった。

ひょっとしたら、僕が楽しそうにしているのを見たくて、わざと教科書を置いてきていたのかもしれない。

そんなはずはないだろうけれど、そう思ってしまいそうなくらい、その人は教科書を学校に持ってこなかった。

中学時代、僕は教科書を忘れる度に「配達サービスがあったらなあ」とボヤいていた。

ネットで依頼して、誰かが学校まで届けてくれる。

できれば、教科書を忘れたこと、配達してもらったことを先生に知られないルートで。

子どもからお金は取れないし、経済は全然回らないけど、Amazonがここまで出来るようになったら…

もう誰も学校に教科書を持って来なくなるな、大人になっても必要な物を携帯しない癖が付いてしまう。

配達の進化のしすぎは禁物。

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