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書評 推される力 推された人間の幸福度 てんちむ 秋カヲリ

同書は23年秋に無期限の活動休止を表明したてんちむについて、ライターの秋が、てんちむ本人や周辺にインタビューした形でまとめられている。小生がてんちむのことを知ったのは、テレビの有吉反省会を通してである。子役として活動し、出版した本が売れたことで、あまりに暇すぎることを反省しに来たという体だった。その時、なかなか面白い人がいるなあ、というのが率直な感想だった。その後、映画などに出てきたが、この本を読むと子役としての活動は、母親の影響もあり、あまり気の進まない仕事もあったことや、映画の仕事も当初の話とは違って「体を張った内容」になっていて、それでも受け入れたという話が出てくる。

近年はユーチューバーとしての活動が主だったが、自分が再びてんちむの名前を知ったのは、いわゆるナイトブラ炎上事件である。その借金を返済するために、さまざまなことに挑戦する動画を見るようになった。

とにかく、驚いたのはそれを返済したことと、また視聴者を新たに獲得したことだ。炎上といえば、消えてしまう人も多いが、てんちむの場合は、それをバネにして、新たなポジションを獲得した。秋によれば、取材を通じて感じたことは、「てんちむ自体がコンテンツ」だという点。そして、彼女がストレス源となる自他への期待や感情を割り切って捨てる「あきらめや絶望は生存戦略」だという。彼女も最後のあとがきで、自分を顧みて「今までを手放す」「壊す」「捨てる」という作業を定期的に繰り返していると語る。当たり前のことなのだろうが、生存していくためにも捨てるという行為は重要なのだろう。軽い気持ちで読んだが、ちょっと最後は良い意味で重みのある内容だった。

#書評 #てんちむ #ユーチューバー #エンタメ