見出し画像

ここから、いちから。

初めて出店側でマルシェに参加した。
デザインを考えて、イラストを描いて、販売するというのは初めてのことで右も左もわかっていないままの当日。今年一番記憶に残る、心身ともに充実した一日であっという間の時間だった。

企画者の友人に誘われつつも、出店するには何度も迷った。正直イラストは趣味でしかしたことがなく、学んだこともない。初心者のわたしの作品をてにとってもらうことなんてあるのか?参加してみたい気持ちと、「わたしなんかが」という自意識によるマイナスな感情の中で毎日葛藤。終わりのない自問自答に、心の奥底には出店してみたいという気持ちが見え隠れしているのを無視しようとしていた。今言えるのは、結局足もとにへばりついているのは、わたし自身。

相談していた友人に「こんな経験、きっと誘われなかったらこの先もないんじゃない?」と言われ、そうかもしれないと気づき、あたって砕けろの勢いで出店を決めた夏。誘ってくれた友人、背中を押してくれた友人や妹には感謝してもしきれない。

この数か月、準備期間はしっかりあったにも関わらず、前日までどたばたした。特に日にちが迫ってきてからは毎日何を届けるかを考えていたように思う。最初はそれが少しストレスにもなっていた。できない自分、理想に程遠い力量、スケジュール管理が下手すぎること、いろんな不安が出てくる夜。下降していく気持ちの中、まわりはどんどん進んでいく。焦りが生まれる中、母の誕生日に花を選んでいるときに柔らかい気持ちになっている自分がいることに気づいた。このことがきっかけで、モチーフや描いてみたいことが定まった。

そこからは当日までの数週間絵を描き続けた。毎日描いていたのは社会人1年目以来で久しぶりだった。きづいたのは絵を描くのを楽しんでいる自分がそこにはいたこと。夢中になって描いていた。見えない相手を想像して、手を動かしている時間はとても新鮮で楽しかった。ああ、つくるのが好きなんだな。心が弾む感覚は久しぶりに思えた。

出店するときは、第一に「楽しむ」ことを目的にしていた。
きっと商売人からしたらとても甘ちゃんの考えで、本業があるからできることのように思う。それでもよかった。受け取る人々の顔を見て、直接作品をほめてもらって感想をもらって、こんなにも緊張と幸福の充実感を味わう瞬間は初めてのように思った。仕事ではいつも誰かのアシスタントな立場で、それはそれで頑張っているのだけれど、どこか他人事で、自分でなくてもいい、と無意識に抱いていた。でもこの作品たちは違うんだ、その事実だけで心が震えた。こんな日を送ることができたなんて、思い出すだけで顔が自然とゆるんでしまう。

これからこうしていこう。もっとつくっていこう。描いていこう、という野心的なものは正直まだ今はない。ただ、完全燃焼したわけでもない。出店を決めたときにはこれで絵を描くことからは離れるかもしれないなって思っていた。でも、参加してみて「あ、こうしてみよう。次はこれもしてみたいな」そんな発想が出てくる自分に少し驚いている。未来が少し開けてきた感覚。きっとこれが「できた」ことに対しての自信のきっかけなんだろう。

「これをしてみたい」そんな感情や想いがあるだけで、少しだけいつも見ている日常の景色に色が増えた気がする。
これからも色を増やして、見える景色をどんどん鮮やかにしていきたい。

「楽しい」「好き」に素直になってみる。そんな選択をしていきたい。
何度でもはじめる。ここから。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?