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日記 明け

あまり眠れなかった。職場も心なしか気だるい雰囲気。苦手な人に新年の挨拶を、一応やっとくかと思ってやってみたら、ものすごい笑顔で返ってきて、へえこの人ってこういう表情もできるのかと思った。もしかして今まで孤独だったのかもしれない。全然違う部署からやってきた人。過去に攻撃されたことがあるから笑顔に絆されてはいけないと気を引き締める。新年早々やらかして、早く辞めちまいたいという念が沸々と湧いてきたが、恐らくそれとなくミスをカバーしてもらえた。
人の対応が男らしい、女らしいとか、頭で色々考えてしまう。そうやって区切ることで、世界を生き延びてきたからだ。木がザワザワ揺れている。私は本当はそちら側のはずなのに。早くお家に帰りたい。
冬の陽射しは強いんだか弱いんだかよくわからない。高いビルからは、高速道路が見える。昔々、小学校一年生時の同級生〇〇ちゃんのお父さんはこの辺に勤めているって言ってたっけ。とすると、結構遠距離を通勤していたのか。どうしてどうでもいいことをいちいち覚えているのだろう。小学校低学年の頃、悪ノリに乗じて〇〇ちゃんにいじわるをしたことがあった。けれど中学生になったら〇〇ちゃんは普通に接してくれて、友達になった。今はもう連絡も取っていない。20歳の時に振袖より、着物と同額の一眼レフが欲しいとせがみ、成人式には出なかった。今でも振袖を着ておけば良かったと思うことはない。そもそも着たいと思ったことがない。記憶はいつもそこら中に埋まっていて、ちょっとの引き金で過去に行ってしまう。PSというファッション雑誌を買って、友達と一緒に公園で読みながら他愛もない話をしたこととか。でも記憶が次々に思い出されるのは居心地が良いものではない。好きなものもあったけれど嫌いなものもたくさんあったからだと思う。

寝不足でふらふらと本屋に向かう。買い忘れた本があった。けれど、並んでいる背表紙を見ると心が段々落ち着いてくる。日本語しか知らないけれど日本語は綺麗だと思う。本は背表紙を見ているだけでも面白い。本と文房具は活力の低い私に元気をくれる。

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