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荒野に希望の灯をともす 感想

自分みたいのはネット情報から距離を置いた方が本当は良いのだと思う。
でも本当のことについて知りたい。逆に言うとオブラートに包まれたものにあまり興味がない。衝撃が多少あろうと、知っておきたい気持ちがある。政治的な思想も信条もない。どちらかと言うと、どうして社会が政党の思惑通りにコントロールされやすくなってしまっているのか、そちらの方に興味がある。

中村哲さんのドキュメンタリー映画の予告編を見て涙が止まらなくなり、これは行かなくては、と思った。
「荒野に希望の灯をともす」

以下感想。インスタの文章をちょっと修正したものです。

大暑。10mも歩くと汗がダッラダラ。
想田和弘さんと上田未生さんのトークショーもあり、満席だった。ポレポレ東中野って昔から良い映画しか上映しない。大好き。近くにあるミスドも変わっていないようで、何となくほっとした。

映画が始まっても自然に涙が出てきて、でもこの涙は感動したからとか、そういう理由の涙だけではないと思った。うまく言えないけれど知りたかったことが知れた、という満足感でいっぱいだった。しかしところどころで泣く。周りの方も静かに泣いていたようだった。
いまの政治や、自分さえ良ければ良いという世の中の雰囲気に嫌になっていて、もうなんかどうでもいいかなこの国終わってるし、と思っていた矢先に観れたのは本当に良かった。流れて受け取っていた情報に、思っている以上に精神的にやられていたようだった。だから情報シャットダウンとか情報断捨離とか皆やるのか。なるほど。でも私は散々正義を振りかざしておきながら、しらばっくれる感じにすごくムカついているから、当分はやらないかな。

中村哲さんは、皆と美味しいご飯を食べるとか、笑い合うとか、そういう素朴なことがとても好きな方だったんじゃないかなと思う。あれだけの偉業を成し遂げたのに、ふんぞり返ったり偉ぶる姿が一切ない。言葉も訥々としており、威圧感が全くない。笑うと、こちらまで自然に釣られてしまいそうな柔和な笑顔。想田さんが「お顔を見てるだけでなんか、良いんですよね」と言っていたが
、本当にそうだなと思う。
一方、米軍が低空飛行している下で黙々と灌漑作業をしている様子から、心の内にはものすごい反骨心というか気概があったんだろう。言葉や論理ではなく、行動で、地道に平和を築く。
争いではない方法が必ずある、平和を願う気持ちは止めなくていいと思えて、それは他の観客にも通じるものがあったのか、上映後に自然に拍手があったのも良かった。悲しみだけではない、希望が残っていて、色々な感情が込み上げてきて今も整理できていない。こうやって書くことで吐き出している。
終わった後も中村哲さんや殉死した伊藤和也さんのことを調べたりしていたら、また涙が止まらなくなった。決してお涙頂戴の映画ではない。けれどたぶん一年分の涙が出た。
言葉ひとつひとつが哲学者みたいに美しいので、本も読みたいと思う。

行きの電車の中では、アルコール缶とつまみのビニール袋が放置された席を見た。帰りの電車では、倒れたコントラバス(でかい楽器)に手を差し伸べた女性、笑顔でお礼を言う女の子の姿があり車内が和んだ。
最低と最高がある、どっちもある世界に生きている。

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