【掌編小説】 かをる
今年の夏は
海に行かないで
終わりそう
つい
1ヶ月前まで
隣にいた
彼が
いなくなった
影響は
思っていたより
ずっと
大きかったみたい
別れた直後は
ベッドも
窮屈さを感じることなく
1人でゆったり
過ごせるし
いびきに
眠りを
妨げられることもない
なんて
快適なんだろう
って思ってた
TVだって
全然興味ない
スポーツ番組
見なくていいし
ドラマや
映画も見放題だ
相手の
予定に合わせて
スケジュールを組む必要も
なくなった
大柄な
彼の為に
大量の料理を
作ることも
ない
どこにでも
行きたいとこに
行けるのに
気力が
出ないのは
なぜなんだろう
前は
1人でも
全然余裕だったのに
最近は
家で
ダラダラ
過ごすことが
多くなった
どこに行っても
何をしてても
あぁ
前にも
彼と
来たなとか
こんな事
あったな
とか
なんでも
彼に
繋げて
考えてる
自分が
嫌になる
こんなんじゃ
ダメだ
いつまで
引きずっても
元には
戻るわけじゃない
前を
向いて
いくと決める
よし
今から
海へ
行こう
決断したら
即
行動するのが
わたし
の特技だ
40分後には
もう
海に
着いた
冷たい
海水と
サラサラの
砂が
まとわりつくように
洗い流すように
繰り返し
同じリズムで
押し寄せては
引いていくのが
心地よい
去年
彼と来た
海が
思いだされて
自然と
涙が
浮かんできた
もう
思い出すのは
これが
最後だ
思い出も
全部
この波に
さらってもらおう
きれい
さっぱり
流して
新しい
わたしに
なれますように
海の
神様に
願う
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