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【掌編小説】 らん

昨日

前の彼の車を
見かけた

もう
完全に
忘れたと
思っていたのに

一瞬
視界に入った
見覚えのある
フォルムに
反応して

ドキッ
とした

多分

彼は
気づいてはいまい

懐かしさと
言い表せない
感情が
込み上げてくる

別れて
2年以上
たっただろうか?

わたしは

今彼とも
上手くいってるし
幸せですよ

あなたは

幸せに
過ごせてますか?

一度は
結婚も
考えたほどの
付き合いも

時間が
経てば
記憶すら

現実にあったことなのか
都合よく
塗り替えてしまった
ものなのかすら
曖昧だ

最後は
お互い
修復不可能と
判断して
別れたけど

嫌いになった
わけじゃない

何処かで
元気でいてくれたら
それでいい

わたしとは
叶わなかった

夢みた暖かい家庭を
誰かと
築けてますか?

一緒に
暮らしてた時みたいに
だらしなくして
彼女を
困らせたりしてませんか?

懐かしさとともに
母性?
のような
よくわからない
気持ちが
胸を擽ぐる

どうか
幸せで
ありますように


感傷から
覚めて

隣に寄り添う
今彼の
手を
強く
握りしめていたら

『どうかした?』
と不思議そうな彼

『なんでもないよ
今凄く幸せだなって
思っただけ』

それは
本心だ

通り抜けてきた
幾つもの
出会いが

今のわたしを
形作ってきた

いつも
現在(いま)こそが

最高
最善なのだと

信じてるから

彼に
ギュっと
抱きついた




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