バトル漫画やバトルアニメでよくある「登場人物が必殺技を出したり、何か異変が起きたりする時に周りの地面や岩などが浮かび上がる描写」に関する考察
はじめに
まずはこの動画をご覧いただきたい(画面の点滅が激しいシーンがあるため、苦手な方はスルーしていただいて構わない)。
鳥山明原作、アニメ『ドラゴンボールZ』のワンシーンで、主人公である孫悟空(カカロット)の必殺技「かめはめ波」と、敵として対峙したベジータの必殺技である「ギャリック砲」の対決シーンである。どちらも、「体内のエネルギーを凝縮して発射する」技であり、ギャリック砲はベジータ曰く「地球を粉々に打ち砕く」と豪語するほどの威力で、悟空はこれに対し「界王拳」と呼ばれる戦闘力を高める技を併用した「かめはめ波」で迎撃し、見事ギャリック砲を押し返している。
ドラゴンボールの代名詞的な技である「かめはめ波」は、理系作家柳田理科雄氏によってその威力が考察されている。
この記事での比較検討によると、作中の描写で実際に破壊したものでは、月が最大のものであり、この描写から想定すると、作中での最大威力は120,000,000,000,000,000,000,000,000,000J(12穣J、1.2×10²⁹J)という途方もない威力であり、また『宇宙戦艦ヤマト』の宇宙戦艦ヤマトの「波動砲」は、それをさらに上回る30穣Jであり、かめはめ波を上回る威力であると説明されている。
前置きが長くなったがここで本題に入る。先程の動画では、悟空がかめはめ波を撃つ準備を始めた段階で、周囲の地面や岩が浮かび上がり、発射の衝撃で周辺の岩は粉々に砕け、周りに居た人間は吹き飛ばされている。
バトル漫画やバトルアニメでは、かめはめ波などの必殺技を使用する際や、相手が気合いを入れるシーン、登場人物が怪物や化物に変身するシーンなどで、「周囲の地面や岩が浮かび上がる」という描写が見られることがある。そのシーンの迫力を増す演出としてよく見られるのだが、浮かび上がった岩や地面は、一体どこまで飛んでいくのか。そしてなぜこのような現象が起こるのか。
筆者はこういった現象を科学的に追求することは苦手で、本稿で展開される考察の殆どが推察であるため、本稿はあくまで単なる読み物として読んでいただき、フィクションでのベタな描写に対する叩き台として扱っていただければ幸いである。
あの描写の正体は?
先述の通り、バトル漫画やバトルアニメでは、「登場人物が大技を出す時や、何か異変が生じる時に周りの地面や岩などが浮かび上がる描写」がされる事がある。主人公や敵が力を溜めるシーンや、巨大な敵が登場するシーン、天変地異などの描写として、地面や周りの岩山、建造物などがバラバラになりながら空に向かって浮かび上がる、という描写を見たことのある人は少なくないだろう。殆どのバトル漫画やアニメでこういう描写がされているわけではないのだが、なぜ物体が浮かび上がるのか。自分なりに2つ仮説を考えた。
仮説①
周辺の物質が浮かび上がる現象は、当該の人物が放つ技により、磁場や磁気などに異常が生じ、周辺の物質が離れていく現象の一端である。
仮説②
周辺の物質が浮かび上がる現象は、当該の人物の攻撃によって、重力に異常が生じるからである。
超適当に立証してみる
まず仮説①である。物体が物理的に浮かび上がる現象と聞いてまず思い浮かぶのは磁力によるものだ。磁石にはN極とS極があり、N極同士もしくはS極同士、同じ極同士では反発し合う性質がある。
かめはめ波vsギャリック砲のシーンでは、岩や石ころが宙に浮かび上がっているのだが、実は岩には磁力を持った種類がいくつかある。
この記事によれば、磁石にくっつく石の具体例はマグマが冷え固まってできた火成岩で、磁鉄鉱と呼ばれる磁気を帯びやすい鉱物が含まれており、地球自体が持つ磁場により、長い年月をかけて「残留磁気」を帯びるようになるという。
かめはめ波は発射前に途方もないエネルギーを一箇所に集めている。その際に磁気異常が起きていても何ら不思議ではない。またベジータと戦った戦場に、残留磁気を帯びた岩石が散らばっている可能性も否定できない。
次に仮説②、重力の異常である。
重力とは、一般的には地球上の物体を地球に引きつけようとする力を指し、厳密な定義は、これに地球の自転による遠心力を足したものになる。
仮にかめはめ波とギャリック砲の撃ち合いにより生じた何らかの現象によって地球の引力に手が加えられ、弱まったとする。そうなると、確かに周辺の物質は地球の遠心力に負けて中に浮かび上がり始める可能性は考えられる。だが同時に、悟空とベジータも上空にどんどん上がっていってしまうのではないか。
ドラゴンボールの登場人物は「舞空術」と呼ばれる空中浮遊能力を使用する者が殆どで、作中では空中戦が多い。悟空たちは舞空術で遠心力に抗う事は出来るだろうが、舞空術を使用できない周辺の人間は上空に向かってどんどん浮かび上がってしまうハメになる。描写に食い違いが生じるため、仮説②は却下する。
浮き上がった岩石はその後どうなる?
というわけで、「バトル漫画やバトルアニメで登場人物が大技を出す時や、何か異変が生じる時に周りの地面や岩などが浮かび上がる描写」は、「その際に生じる周辺の磁場異常ではないか」という結論に、まともな根拠がないにも関わらず至った。
そうなると、浮き上がった岩石や地盤は、技を放っている間はある程度の高さで宙に浮き続けていると予測出来る。例えばかめはめ波を撃ち終えるまでは岩石は宙に浮かび、撃ち終わった途端大量の岩石が上から落ちてくるということになる。悟空ほどの戦士なら岩が頭に当たるくらい何てことなさそうだが、勝って兜の緒を締めよとはよく言ったもので、悟空にはギャリック砲を押し返した後も油断せず、上空から落ちてくる岩石を避けながらベジータの様子を伺っていただきたい。
あとがき
文系人間による見苦しい考察で恐縮ですが(というか柳田理科雄先生に考察していただきたい、どっから投書するんだ・・・?)、バトル漫画・アニメあるあるをバカ真面目に検討した記事でした。たまたまマイブームになっていたドラゴンボールを題材にしましたが、北斗の拳のOPなど、他にもいくつも例があるはずです。是非この記事を空想科学考察の叩き台にしていただければと思います。
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