TNENT 雑考察と感想

TNENT 感想と個人的なまとめ

1、どういう時間軸なのか

タイムパラレルものは大きく分けて2つに分かれる。(と私は思っている)
①世界戦が複数あるもの。
いわゆるパラレルワールド。これらは、タイムトラベルをして過去改変をすると、その元居た世界戦から別の世界戦に移動をするもの。例えば、この世界戦で祖父殺しを行うと、その世界戦では自分が消えるが、元の世界戦では変わりなく存在している。なので世界戦が1つ増えることになる。1本の線が枝分かれしていくイメージ。この場合、世界戦=複数の線に対し、個人=複数の点(世界戦ごとに存在するので)のため、点は複数ある。(多分はぐぷりはこれ)
②世界戦が1つのもの
一つの世界戦だけなので、過去改変に応じて世界が「全て」変わる。この世界戦では、時間=1本の直線に対して個人=1つの点なので、点が2つ存在することはない。(してはいけない)なので、タイムトラベルによって点が2つになるとき、それは過去に確定したことで、歴史は変えられず、自由意志が働かない世界戦ということになる。この世界戦で祖父殺しを行っても、なんらかの因果が働き、祖父を殺せない。(自分が存在しているという歴史がある時点で祖父は絶対に殺されないし、殺せないため)(シュタゲはこれ)

さて、TNENTは後者のパターンだと考えるのが妥当だろう。だが、従来のSFと異なる点であり、この作品最大の魅力は「時間軸を現在から前(未来)or後ろ(過去)に飛ぶ」ではなく、「後ろ(過去)に進む」=「逆行」する点だろう。何喰ってたらこんな脚本思いつくんだ?クリストファーノーラン、IQ200000あるだろ。

点が前後に飛び、また元の位置に戻るのと違い、この作品は点が後ろに進む!!そのため、同時に自分が存在する(時間の流れは反対)。時間軸を直線と考えるが、結局はこの直線は点(現在の自分)の連続なのだ。そしてその点が逆行することも含めて歴史が確定している。作中で主人公はニールに「俺たちが今存在しているということは、俺たちは成功したということなのでは?」と問うていたが、これがおそらく大正解。この作品では、歴史改変は行うことが不可能だ。タイムトラベルをして、キャサリンを救うところまでが、歴史で決まっていた。だからこそ主人公はもう一人の自分と闘ったし、キャサリンは自分が飛び込む様子を見ていた。

……と、考えると。黒幕が主人公なこともあるていど納得がいく。なぜなら、現時点(現在=映画終了時)で、「黒幕がいること」「アルゴリズムを完成させようとしていること」「それを主人公が阻止すること」が歴史上確定しているのだから。この先、主人公が絶対に黒幕にならないぞ!と決めても、何らかの因果で必ず同じことを起こさねばいけない。(動機については要考察)そして、「ニールが死ぬこと」も「ニールが主人公を助けること」も改変できない確定事項…なのか…。だからこそニールは「友情のはじまりと終わり」と言ったのかな…。ニール…。


2 疑問点
①逆行することでなぜキャサリンは助かったのか
 打たれた細胞等が逆行していると考えたら、若返りと同じことになってしまう。そうしたら、最終的には消滅してしまうのでは?期間が短いから問題なかったとしても、腹部に傷跡は残っていたし…?逆行すること=その人の体内まで逆行することになるのか?
②主人公はなぜ黒幕になったのか
 歴史の確定事項というのは分かったが、にしてもなぜ…?そもそも第三次世界大戦についてがよく分からない。世界戦が1つだとしたら、主人公は第三次世界大戦が起きる(可能性のある)未来を知っているので、それを防ぐために奔走するんだろうけど、にしてもなんでアルゴリズムを完成させようとするのだろうか。主人公が、全人類を犠牲にしてまでも生き残りたいと思うか?思わなさそう。では、なんで、
ん・・・・・・・・・・・?
あ・・・・・・・・・・・・(打ちながら気付いた)
主人公が初めて逆行弾丸を見た施設で、彼は未来に起こりうる可能性のある第三次世界大戦の残骸を見る。それを防ぐために彼は動き始めたが、待てよ、この作品では「時間軸は1本」。そして「歴史は絶対に変えることができない」
・・・・・・・と、すると。もしかして、第三次世界大戦は「絶対に」勃発する…?そして、それを止めることは不可能。(なぜなら残骸を主人公が見た過去が確定しているから)変えられない歴史と、止めることが不可能な第三次世界大戦。だとしたら、残された唯一の策は、「自分の時間の流れではなく、時間の流れそのものを逆行させる」こと。
これって、作中で主人公が闘っていた「見えない黒幕」の目的と、合致するんですよね…。

主人公は全編を通して、他社の命を重んじる人間だ。序盤のオペラハウスの襲撃も、フリーポートの突入も、死人ができるだけ出ないように行動していた。そんな主人公が、あっさりと人を殺す場面が1度だけある。最後、キャサリンからの連絡を受けた後のことだ。プリヤをあっけなくサイレンサーで銃殺する主人公に、もう序盤のような博愛さは感じられない。何故か?最優先すべき人ができたとき、他社はないがしろになるのだろう。この後の主人公がどうなるかは誰も分からないが、行動指針がキャサリン中心になるのは間違いないだろう。キャサリンとその息子の安全さえ確保できればあとはどうなってもいいと思った主人公が、第三次世界大戦を防げないと悟ったとき、どう行動するか。それが彼が黒幕になった所以…?わかんね~!!!!!!

③ニールが最後に言った「中間地点」って、いったい何と何の中間地点なんだ?
④そもそも序盤のオペラハウスのことも良くわかってない
⑤終盤、結局何と闘っていたの?未来の敵?

3 感想
純粋に、今まで見た映画の中で1番面白かった。人間ってこんなに面白いものが作れるんか!?!?!?!って感動しながら観た。面白すぎて興奮してちょっと泣いた。(どういう感情?)
脚本もだが、カメラワークも良かった。不意に無関係(そうに見える)カットを投げ入れて、「え?今のカットいる?」って思ってたら後からその意味をぜーーーーーーんぶ丁寧に拾っていってくれた。確かに観ながら分からん…ってなることがめちゃくちゃ多かったけれど、それがそういうこと!?!?に全部変わっていくことの気持ちよさと興奮と言ったら…。映画ってすげぇ!作品ってすげぇ!となった。いい刺激になるなー。映画を観るときに、作品の伝えたいこととか、製作者の意図とかを考えるんだけど、これはもう、純粋にめちゃくちゃ面白いの作ろ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!って感じでよかった。アクションありカーチェイスありのSF、全部乗せすぎる。最高。作品ってここまでできるんだな。

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