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忘れられない、デビュー寸前の【中島みゆき】押しの先生!

忘れられない先生、あれは高校3年生だったと思う。
名前も思いだせないし、美術の先生だったか音楽の先生だったかも覚えていない。ただ、指が長くピアノが上手い【目が離れた男の先生】だったことは思いだせる。と、いうことは「音楽の先生だったのか?」いや、授業内容は全く思いだせない。

ある日、パンフレットを持って教室に表れた【目が離れた先生】は、
「私の知り合いが今度デビューするので、みんなよろしく!」と、パンフレットを配り始めた。

「先生の知り合い?そんなのどうでもいい!興味ねーよ!」の男子の声。
「えっ!なに、この田舎臭い女は、かわいくなーい」と女子。
自分たちのほうが田舎娘だったくせに、よくも言ったもんだと思うが。(笑)

それが、長い髪を三つ編みにして、ギターを持っている【中島みゆき】だった。

「『アザミ嬢のララバイ』?なに、この変なタイトル!」
「へー!ギターを弾きながら、この変な『アザミ嬢』を歌うんだ?!」
「第一かわいくない!こんなの、売れねーよー!」

のちに、偉大なシンガーソングライターになるとも知らず、次々に好き勝手な言葉を、これでもかというくらい浴びせた。

と、そのとき、バン!!と机を両手で叩き、離れた目を近づけるように眉間にしわを寄せながら
「なにを言っているんだ!君たちは!ギターを弾きながら歌うってことは、大変なことなんだぞ!ましてや彼女は、作詞作曲もする!君たちにはできるのか?!」と【目が離れた先生】は頭から湯気を立てた。

教室は静まり返った。
内心私は「私だってギターを買って、友達とバンド組むもんねー」と、叫んでいた。クラスの男子がバンドを作ったのが羨ましく「女子も絶対、バンドを作るんだ!」と意気込んでいたのだ。

学校も卒業しバンドを組むことは叶わなかったが、【中島みゆき】はデビューのその年『時代』が、世界音楽祭でグランプリ受賞。これを目にしたときは、震えが止まらなかった。「あの時の【中島みゆき】だ!」


「あんなこと言って、ごめんなさい!」ひたすら心の中で謝った。と、同時に【目が離れた先生】を思いだした。

「【中島みゆき】の知り合いって、どういう関係?」
「しまった!聞いておくんだった!こんなに有名になるんだったら、根ほり葉ほり聞いておけばよかった!」と、いろいろな思いが駆け巡ったが、後の祭りであった。

それ以来、カラオケで『時代』を歌えば【目が離れた先生】が浮かぶことに。結婚式で『糸』が歌われたり『地上の星』がテレビで流れたりしても、当の【中島みゆき】ではなく、【目が離れた先生】が真っ先に頭の中に出てきてしまうのだ。


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