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患者さんを捉える -汁物を食べるとむせる症例-
以下に記す症例について、見方、知識の使い方、考え方の流れが参考になれば幸いです。
情報)
20代の男性である。
ラーメンなど汁物を食べるとむせてしまう。
そのような症状が出現したのは、2年ほど前からである。
心当たりは、その頃ラーメンが好きで、ほぼ毎日食べていた。
そして途中からむせるようになった。
それ以降、改善は見られない。
その頃の血圧は180/100mmHgで、体重は今より16kg太っていた。
そのため、ラーメンを食べる量を減らし、運動等で減量して、血圧は160/80mmHgに落ち着き、体重も減った。
また、ラーメン以外の麺類でもむせてしまう。
麺のつゆが熱いほどむせやすい。
そのため、麺類が食べたくても食べられない。
既往では
幼少の頃から下痢気味で、5~6回/日にトイレに行く。
これは今も続いている。
Q)何が原因か?
A)むせるのは、嚥下の咽頭期に喉頭蓋軟骨がしっかりと閉まらず、気管に水分が流れるためである。
![](https://assets.st-note.com/img/1696809610912-3XIZxDb9Da.png)
稲川利光 編集:摂食嚥下ビジュアルリハビリテーション より引用
![](https://assets.st-note.com/img/1696809645850-amjYKCpWjK.png)
AnneM,Gilroy 他著、坂井 建雄監訳、市村浩一郎 他訳:プロメテウス解剖学コアアトラス第2版より引用
あるいは、頸椎の前方偏位による食道の圧迫や、咽頭から気管への角度が鋭角になり、気管に食塊や水分が入りやすくなる場合である。
![](https://assets.st-note.com/img/1696809711807-JdU86aLoC8.png)
Q)症例の場合、どちらの原因か?
A)むせるようになったのは、頻繁にラーメンを食べるようになってからである。
なので、頸椎の偏位よりも喉頭蓋軟骨の閉まりと関係している可能性がある。
Q)ラーメンとむせ込みのつながりは?
A)症例は消化器系が幼少期から弱い。
そこに、頻繁にラーメンを長い期間食した。
ラーメンによる弊害(血圧上昇、体重増加)が身体に現れているように、消化器系にも負担が大きかったことが想像できる。
そこで、消化器への負担を減らす防御反応が生まれた。
そして防御反応が徐々に過敏になり、熱い汁による消化器への刺激も受け付けなくなった。
そのため、ラーメンを食す頻度を減らしても改善されなかった。
Q)消化器系への防御とむせ込みの関係は?
A)咀嚼した食塊を胃に移動させるために、食道の絞まりを調節する輪状咽頭筋が弛緩する。
![](https://assets.st-note.com/img/1696809909559-IJ921iOp1D.png)
![](https://assets.st-note.com/img/1696809930220-sn9WJ8UY3f.png)
Keith L.Moore 他著 佐藤達夫 他訳:臨床のための解剖学 第2版 より引用
この時、食物の胃への流入量を抑えようと輪状咽頭筋が緊張し、食道を狭めた。
そのため咽頭内に食塊がたまり、たまった汁物の液体が、気管の蓋である喉頭蓋軟骨の隙間から気管へ入り込み、むせた。
Q)アプローチは?
A)液体が気管に入り込まないように、喉頭蓋軟骨の蓋をしっかり閉めさせる。
Q)方法は?
A)喉頭蓋軟骨の蓋は甲状軟骨が挙上することで閉る。
![](https://assets.st-note.com/img/1696810066510-PoFndJh8cC.png)
甲状軟骨の挙上は舌骨上筋群で行なわれる。
![](https://assets.st-note.com/img/1696810095901-qptyyJoUVj.png)
そして、舌骨上筋群は開口の作用筋でもある。
そこで、開口運動により舌骨上筋を強化することで、甲状軟骨の挙上を高め、喉頭蓋軟骨の蓋がしっかり閉るようにさせた。
Q)方法は?
A)下顎に手を当て、開口の抵抗運動を行なった。
この時、顎関節に負担を感じない程度の抵抗にさせた。
休憩を含め、5分間実施した。
![](https://assets.st-note.com/img/1696810212938-23mWaeg31E.png)
![](https://assets.st-note.com/img/1696810229714-1mJLRpcl5w.png)
Q)結果は?
A)実際にカップラーメンを食べてもらったところ、むせ込まなかった。
しかし、このむせ込みは消化器への対応であり、身体を守る防衛反応である。
なので、むせ込みがなくなっても、ラーメンを食す頻度は減らすよう忠告した。
最後までお読み頂きましてありがとうございます。
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