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患者さんを捉える  -腰を鳴らせた後、腰に痛みが生じる症例-

以下に記す症例について、見方、知識の使い方、考え方の流れが参考になれば幸いです。

情報)
20代の方である。
腰をひねって腰を鳴らすと、その後から腰にズキンとした痛みが生じる。

痛み部位は右PSISあたりである。
その後、右下肢荷重や歩行で痛みが出現し、しばらく続く。

Q)原因は?

A)PSISなので仙腸関節の可能性が高い。

Q)評価では?

A)座位で両仙腸関節を触診しながら骨盤の前後傾自動運動を行わせると
右仙腸関節が過可動であった。


恐らく、腰を鳴らす動作により徐々に接合組織が緩み
痛みが生じるまでになったと考える。
そして、荷重により右仙腸関節のずれが生じて痛みが起きた。

Q)アプローチは?

A)仙腸関節安定化筋を触診すると、右多裂筋の萎縮が確認された。

多裂筋は腸腰靱帯に付着して、仙腸関節の安定化を図る筋の一つである。

左上部位置するのが腸腰靱帯

AnneM,Gilroy 他著、坂井 建雄監訳、市村浩一郎 他訳:プロメテウス解剖学コアアトラス第2版より引用


Q)方法は?

A)多裂筋を強化しようと臥位でクッションを左踵に入れ
左下肢で身体を支える状態で
臀部から背部を挙上してから
右下肢を挙上、外転させた。

写真上が左下肢、下が右下肢


この時、本来であれば左下肢を挙上、外転させ、右多裂筋の強化するべきところを逆に行ってしまい
右PSISに痛みが出現してしまった。

そこで、負荷の少ない座位での骨盤前傾、腰椎前弯を行った。

通常座位


骨盤前傾、腰椎前弯


この場合、痛みが出現しなかった。
そこで、この運動を5分間実施した。

Q)結果は?

A)痛みは減少した。

Q)何故、臥位のアプローチを逆にして、右PSISに痛みが出たのか?


A)殿部の挙上で大殿筋、腰部の挙上で起立筋群が働く。
これら筋は、仙骨と腸骨をつなぐ。

左踵と胸部で身体を支え
左殿部と腰部の挙上で、左腸骨と仙骨はしっかりとつながり、仙骨は動かなくなる。


ここで、右膝関節を伸展位で、股関節屈曲・外転させると、パワーの二関節筋である
膝関節伸展、股関節屈曲、外転作用の大腿直筋
股関節屈曲・外転作用の大腿筋膜張筋
などが働く。

大腿直筋は下前腸骨棘に付着し、仙骨が動かない状態だと腸骨を前傾、外転方向に牽引する。

また、大腿筋膜張筋も腸骨稜に付着するので、腸骨を前傾・外転させる。

腸骨の前傾は、(仙骨が動かないため)相対的に仙骨の起き上がりになり、右仙腸関節を緩ませる肢位になる。

A.I.KAPANDJI 著 塩田悦仁 訳:カラー版 カパンジー機能解剖学 Ⅲ脊椎・体幹・頭部 原著第6版 より引用


よって、大腿直筋と大腿筋膜張筋の作用で、腸骨上部は外転して、その部位にある仙骨と腸骨をつなぐ組織に伸張ストレスがかかる。


最後までお読み頂きましてありがとうございます。




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