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深呼吸で息が吸いにくい症例

以下に記す症例について、見方、知識の使い方、考え方の流れが参考になれば幸いです。

情報)
20代の男性である。深呼吸すると息が吸いにくくなり、最近では息切れも起こる。この症状は20歳ごろからである。

高校時代は野球部に所属していた。呼吸器系障害の既往はない。

Q) 何が原因か?

A) 吸気の問題であるが、吸気は胸郭の動きとそれを動かす肋間筋群や横隔膜の働きが重要となる。

また、深呼吸では吸気の補助筋も必要になる。

横隔膜の動きについて腹式呼吸は行えた。

しかし、このとき胸郭の動きが少なかった。

そのため胸腔内の広がりが少なく、胸腔内の陰圧が不十分で息が吸いにくくなっていると考えた。

Q) 胸郭の動きが少ない原因は?

A) 吸気筋の低下、あるいは肋骨の可動域低下のいずれかである。

しかし、高校まで野球を行い、若い男性で体型も良いため筋力低下は考えにくい。

そこで、何らかの原因で可動域が低下したのではないかと考えた。

Q) 可動域低下の原因は?

A) 症例は野球を行っていた。野球の投球は大胸筋を使用する。

症例の肩は前方位で大胸筋の緊張を疑わせる。


大胸筋は筋連結で腹直筋につながる。

腹直筋は外肋間膜がつながり、外肋間膜は胸肋関節の安定化に働くが可動域を狭める。

以上から、野球の投球を優位にさせる作用が胸郭の動きを狭めたと推論した。

Q) アプローチは?

A) 大胸筋の牽引による上部胸椎の後弯があり、その部位の伸展可動域も減少していた。


そこで、上部胸椎の後弯に対してロールタオルを入れて伸展の可動域を拡大した。


このとき可動域制限による痛みが出現した。



Q)  結果は?

A) 深呼吸で横隔膜の使用を優位にする下部胸郭の動きが出現した。

また、本人も深くまで息が吸えると言っていた。


最後までお読み頂きましてありがとうございます。

Thomas W.Myers 著 坂場英行 他 訳:アナトミー・トレイン 徒手運動療法のための筋筋膜経線 第3版 より引用 






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