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フィールドの魅力を最大限に活かしたキャンプ場づくりで日本独自のキャンプ文化を支える

キャンプ場運営を民間企業が手掛けることが稀だった1995年以来、キャンプ・アウトドアビジネスの業界で活躍すること約25年。キャンプ場の立ち上げから施設の開発、運営、コンサルティング業務など、
数多くの経験を活かし、2020年に株式会社Recampへ入社。キャンプ場づくりのプロフェッショナルとして、魅力的なキャンプ場を各地につくり、キャンプを楽しむ人を増やすため、チャレンジし続ける與茂さんに、キャンプ場開発の仕事について、お話を伺いました。

與茂 雅之(よもまさゆき)
R.projectグループ キャンプ事業
所属:株式会社Recamp 施設開発本部 | 本部長
キャンプ・アウトドアビジネスの業界一筋20年以上の経験と知識を活かし、新規施設の開発や既存施設のリニューアル整備計画等を担う施設開発本部で、その手腕を発揮する。


<R.projectグループのキャンプ事業を担うRecamp>

四季折々の自然・体験・味覚、人々の慣習、歴史など、日本にはまだ発見されていない魅力がたくさんあり、キャンプには、それを実感させる力がある。キャンプのあり方を、「再発見」「再定義」「再価値化」によって「新しく=RE」し、日本の遊休資産を活用、地域活性に貢献するキャンプ場の企画・運営を行っています。「キャンプ場運営の達人」を目指して、北海道から九州まで9道府県・20拠点で展開しています。


■日本のキャンプ業界の成長とともに歩んできたプロフェッショナル

━━業界歴25年ということですが、当時と今とでは大きく変わりましたか?

與茂:第一次キャンプブームといわれる1990年代は、日本でもキャンプ・アウトドアビジネスに参入する企業が増えてきたタイミングです。私もキャンプ場運営を始める会社へ入社しましたが、正直、こんな長く続けると思っていなかったし、想像もしていませんでした。当時は、周りに胸を張って「就職できました」と言える業態ではなく、単純に夏以外はどうするの?みたいな…。言っても心配されるのであまり言わないという状態でした(笑)。まだまだな部分もありますが、当時に比べれば、今はそれなりに社会的にも認知されてきたと思います。季節による繁閑差が激しい業界のなかで、Recampは正社員比率も高く、このような会社が存在できていること自体が、大きく変化したなと思うところです。

━━当時のお仕事についてお聞かせください

與茂:最初の会社は、アメリカでキャンプ場を展開する企業のフランチャイズシステムに入っていて、アメリカでは文化として根付いているモデルがあるので、それを真似してやればいいと思っていました。
夢と希望を持ってというよりは、ちゃんと仕組みがあるから安心して入社した、そんなスタートでした。最初の5年くらいは、実務に必死でしたし、「アメリカのノウハウなんて全然日本に通用しないじゃん!」と愚痴も言ってました。5年を過ぎたころから、日本に根付かせるためには、自分たちでつくるんだ!とベクトルが変わり、モチベーションも上がっていきました。国内にあるグループの各地のキャンプ場に行って手伝うなかで、それぞれの個性や違った楽しみ方がいっぱいあると良いなと、そう思いだしたのが30代に入った頃くらいですかね…

━━アメリカのキャンプ場運営もご覧になったそうですが、アメリカと日本の違いとは?

與茂:2・3年に1度、会社の研修・視察で行きましたが、自然豊かなキャンプ場ではなく、モーターホームと言って、トレーラーハウスやキャンピングカーで旅をしながら生活するリタイアした人たちがターゲットのキャンプ場運営をする会社だったので、それこそ夏休みや週末に利用される日本のキャンパーとは文化が違います。極端な話、スタッフにソーシャルワーカーがいて、福祉サービスが一緒にあるくらい。ただ、日本にもそういう文化が育つと良いなと思っていたんですけど、日本国内でその需要は少ないので、それはそれで違うもんだなとも感じていました。
今でこそ、ソロキャンプとか若い世代や女性層も増えていますけど、当時は完全にファミリーキャンプが主流だったので、自分たちでどうアレンジするかも考えながらやっていました。

■施設開発は「土地が持つ魅力✕お客さまのニーズ✕働く人の働きやすさ」を常に考えることが重要

━━いろんなご経験があっての今ですね。では、現在の施設開発部の業務について教えてください

與茂:行政施設の開業準備や民地での新規施設開発、既存施設のリニューアル整備計画立案などを行う部署です。他にも、キャンプ場開発におけるモデル化・モジュール開発、ジョイントベンチャーの施設開発・運営サポート業務などがあります。

現地視察の様子

━━具体的にはどのようなお仕事ですか?

與茂:開拓部が土地に紐づく案件を自治体、民間問わず獲得して、施設開発はその後の施設整備をして運営に引き継ぐまでのモデルづくりを担当します。土地の価値を最大収益化するため、敷地や施設を一番良い状態でお客様に提供できるように、企画、設計から工事の手配といったハード面の施設づくりをしています。
たとえば、収容人数を100人で設定するよりも70人の方が顧客満足度も含めて事業モデルとして正しいよね、ということを想定しながらつくっています。土地が持っている隠された価値をキャンプサイトにすることで、それをどう引き出せるかを常に考えています。

━━施設開業までの流れは

施設オープンに伴う各部の役割

與茂:施設の概要となる基本計画を設定して、運営の許可申請手続きを行いつつ、設計士さんと詳細設計、必要な資材等の発注から工事を実施、施設の引き渡しと同時に運営のスタッフが現場に入り、お客様をお迎えするという段階を経ていきます。
ただ、業務は部署を跨いで常にオーバーラップさせながら進行します。

施設オープンまでの流れ

例えば、開発部とは土地を獲得・自治体との契約するまでの計画段階から一緒に動き、運営部とは、開発期間に運営の仕組みやお客様にどういう体験を届けるかを一緒に考えたり、ある程度計画の概要ができた時に、施設の運営方針を説明して採用計画を立ててもらったり、それぞれの役割を滞りなく進めるために各部署と連携しながら進めています。

━━施設が開業してからの他部署との関わりにはどのようなものがありますか?

與茂:既存施設のバリューアップですね。開業したら終わりではなく、さらに良くしていくためにどうするか。
例えば、キャンプ場はホテルと違って小さなリニューアルをし続けています。一旦完成すると、ホテルは客室のサイズを簡単には変えられないけど、キャンプ場は区画とか広さとか、その時々で変えられるので、少しずつのリニューアルをずっとテストしながら改善していくイメージです。サービス面は運営側が実施しますが、施設開発はトイレが足りないから追加するとか、そういったことで継続的に関わっています。ただ、お金のかかる話なので資金の準備は経営企画部と相談しながら進めていきます。

他部署とのミーティング

━━どういう目的でリニューアルをするのでしょう?

與茂:お客さまへのサービス向上と収益力強化です。Recampはまだやりきれていないことが多くて、我々の経験値からできるところはいっぱいあると思っているので、優先順位を付けてやれることからやっています。
今は、事業パートナーとの連携で、チャンスが広がったり、会社としての環境も変わったりしていると思います。

━━細かくリニューアルをしていくのはRecampならでは、ということでしょうか?

與茂:Recampならではというよりは民間企業としての改善サイクルならではです。公共のキャンプ場に比べて、特に民間のキャンプ場の場合は、細かく対応できるので、改善が日常的に行われています。

━━結果が反応や数字で表れると嬉しいですよね

與茂:25年やっているのである程度は見えているといっても、すべて自分が考えた通りに進むわけではありません。想定外の事故やトラブル、困難なことも工夫しながら実現していく、それがお客さまのところに届いて、体験して、気に入ってくださって、リピーターになっていただいたら、その時には「よしっ!」ってなりますね(笑)。
我々の仕事は、「これをやったから今期にすぐに結果が出る」ということは少なく、結果が出るまでに数か月、数年かかるので、そういう意味では喜びどころが難しいんですよね(笑)。施設の開業はひとつのマイルストーンですが、実際にお客さまがリピーターになってくださるところまでで考えると、プロジェクトのスタートから2~3年かかかるので…まぁ、気長にやっています。
ただ、そういう喜びが得られる仕事をさせていただいてることは、感謝していますし、非常にありがたい環境だと思っています。

■人生を豊かにする経験や体験を提供できる仕事、それが喜びでありやりがいでもある

━━今現在、與茂さんがワクワクするような新しい案件は何かありますか?

與茂:2024年にはRecampが運営する広島県・栃木県の開業案件があり、静岡県でも事業パートナーJVとの案件があります。新しい商圏や希少性の高い自然環境での事業化、他業種との連携事業など、さまざまなチャレンジ案件もありながら、既存施設のバリューアップは確実に顧客満足度を上げるための計画を立案しています。
それもこれも、Recampの施設だけではなく、R.projectの事業である「なっぷ」を含めたプラットフォーマーとして、日本国内のキャンプ場全体のレベルアップになるためのチャレンジが、キャンプ場づくりを通じて実現していければいいなと思っています。

ミーティング風景

━━ 仕事をするうえで大切にしていることや考え方は?

與茂:「こだわるけど、こだわらない」ですね。
今のRecampはいろいろと整理が必要で、整理することは“こだわる”ということにも似ていますが、こだわりながらも、最後はお客さまにどれだけ柔軟にサービスが展開できるかだったり、また上流の部分ではパートナーごとにやり方を整えたり、いろんなことがいろんなフェーズでできる状況です。
こだわらないことでどんどん間口が広がって、アウトドア体験を楽しむ人が増えていくという面はあると思っています。事業者のこだわりだけでは、お客さまが遠のいていく要因にもなり得るので、今は「キャンプ」にこだわって、「そこで何ができるか」を工夫することができているので、楽しいです。

━━キャンプ場開発をやっていて良かったと実感したことや醍醐味は?

與茂:現場にいた頃、お世話になったお客さまで長くリピートしてくださっていて、子どもの手が離れて奥さまとふたりになってからもう一度来てくれたことがありました。お客さまのライフスタイルに変化があってもまた来てくれる、そんな場所を自分たちで提供できたことにすごく感動しました。お客さまとの直接的な接点が少なくなった今も、自分の仕事の先に、絶対にそういう人がいる、そう思うからこそ、この仕事をやり続けられるんだろうな、と今振り返るとそんな気がします。
私自身、これまでのお客さまとの関わりで得た経験やこだわり過ぎないというスタイルというのもあると思いますが、、、いろんなチャレンジができるのは、開発のやりがいであり醍醐味です。

━━反対にキャンプ場開発の難しさは?

與茂:金太郎飴のようにふたつとして同じものはないので、それぞれのロケーションやその地域のお客さまをかけ合わせてつくっていきます。地域によって違う要素があることが必要だと思うし、ベースになる部分、働く人たちの働きやすさも総合的に考えています。そうやって事業を成立させることには難しさがあります。ただ、それ以上に非常に面白いなと思っています。

RECAMP

■外で過ごすことの楽しさや心地よさを体感できる機会を創出していく

━━そんな與茂さんの趣味や夢中になっていることは?

與茂:仕事しかないです(笑)。
学生時代はYMCAの野外活動のボランティアリーダーをしていて 子どもたちにヨットを教えたりしてたので、20代はプライベートでもヨットのレースに出たこともあるんですが、最近はめっきりですね…体力がついていくか心配で(笑)

━━ご自身がアウトドアを楽しむことはありますか?

與茂:今は、新規施設での試泊会などビジネスキャンプが一番のアウトドア体験ですね。
現場にいたころも、自分がBBQをしているわけでもテントで寝ているわけでもないですけど、フィールドでお客さまがテントを張っている姿を見ていると、自分がキャンプをしている気分になります。それだけじゃなく、お客さまの姿を見て、最新のギアを知ることもできるし、それこそ建てたことのないテントでもなんとかできちゃうとか…まぁ、現場のスタッフは全員そうなると思いますよ。
自分自身、そこにいることが気持ち良いからこそ、お客さまにも体験して欲しいと思うんですよね。年に1回しかキャンプをしなかった人が、年に2回目のキャンプをしたいと思ってもらえるための仕掛けが、RECAMPではできている実感があります。

━━アウトドア業界の今後の展望や期待することはありますか?

與茂:具体的に考えたことはあまりないんですけど…少しでも外で過ごす機会が増える社会になったら良いなと。社会の一部としてその役割を果たせるようになりたいです。
そのきっかけづくりができるのはキャンプ場だと思っています。登山、自転車、いろんなアウトドアアクティビティのなかでも、キャンプが一番外にいる時間が長いので 風を感じて、水を味わって、自然とのいろんな接点があって、それが「キャンプ」だと思っているのでそういった体験をちゃんとキャンプ場が空間として提供できるようになれるといいな、と。

現地視察の様子

━━最後に、ご自身の働き方を表す言葉はありますか?

與茂:今は施設開発をメインにしてますが これまでの仕事を振り返ると「なんでも一度は自分でやってみる」という感じかな。
20代からキャンプ場の仕事しかしてないんですけど。
お客様の課題を解決する事に常に思考が向いていて、分からなかったり、疑問に思ったことは一度は何でもチャレンジして自分のものにしていけると思える人には とても楽しい仕事だと思いますよ。
私の場合、休日でも、スーパーに売ってるものを見て「これ◯◯に使えないかな」とすぐ考えて買っちゃったりしてしまうので、失敗もいっぱいありますが、仕事と生活はボーダレスになってしまってます(笑)


【編集後記】

淡々としながらも熱のこもったお話しにどんどん引き込まれていく…不思議な魅力を持つ與茂さん。
「若い人たちがこの業界で自信をもって働けるように、会社としてもチャレンジしているので、先輩面するわけではないですけど、そういうことの道標として携わっていきたい」という言葉からも、心底このお仕事が好きで、誇りを持って働かれていることが伝わってきました。
キャンプを楽しむ人が増え、もはやブームではなく文化として定着してきているとも言われていますが、ここに至るまでには、業界に携わる人たちの試行錯誤があってのこと。ニーズやスタイルの多様化に伴って、これからまた試行錯誤をする人たちにとって、與茂さんにはずっと心強い存在であり続けて欲しいな、と思いました。

取材・文:j.funakoshi
取材日 :Oct.2023


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