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#189 日本人の魔改造!文化で異なる「文房四宝」

『紙について楽しく学ぶラジオ/Rethink Paper Project』
このラジオは、「紙の歴史やニュースなどを楽しく学んで、これからの紙の価値を考えていこう」という番組です。
この番組は、清水紙工(株)の清水聡がお送りします。
よろしくお願いします。

今回のテーマは「文房四宝」

はい、皆さんこんにちは、こんばんは。
いかがお過ごしでしょうか。

今回のテーマは、「文房四宝」です。
書道をやっている、若しくはやっていたという方なら、聞いたことがあるんじゃないかと思います。
ただ、ほとんどの方にとっては、聞きなじみがないですよね。

ちなみに、「文房四宝」の「文房」は、皆さんも日常的に使われているであろう「文房具」の「文房」です。
文房具というと当たり前のように使う言葉ですが、よくよく考えてみると、「文房」の意味、分からないですよね。

今回は、「文房四宝」について、解説していきたいと思います。
それでは早速、本題に入っていきましょう。

「文房四宝」とは?

まず、言葉の意味からいきましょう。
「文房四宝」という言葉は、「文房」と「四宝」から成り立っています。
「文房」はさらに分解が出来て、「文」と「房」ですね。
「文」は「文人」、「房」は「書斎」を意味しています。
文人と言うのは、中国で生まれた言葉で、色んな解釈があるんですが、「学問を修めて、優れた文章を書く才能のある人」くらいで捉えておいてください。
それから、「四宝」はそのまま「4つの宝」ですね。

「文房四宝」を直訳すると、「文人の書斎にある4つの宝」となります。

つまり、「文房具」は、「書斎にある道具」という意味だったんですね。
書斎にある道具と言えば、鉛筆、消しゴム、カッター、定規、テープなどいろいろありますが、そんな文房具のなかでも、特筆すべき4つの宝こそが、「文房四宝」という訳です。

文房四宝、気になりますよね。
はい、それでは4つの宝を発表したいと思います。

「筆・墨・紙・硯(すずり)」
これらをまとめて「筆墨紙硯(ひつぼくしけん)」と読みます。

中国で発展した文房四宝

そもそも、「文房具」という言葉が誕生したのは、中国の南北朝時代(5~6世紀)のこと。
その後、宋の時代になると、その中でもとりわけ重要な「筆墨紙硯」が「文房四宝」として取り上げられていきます。

当時は、実用品というより観賞用としての意味合いが強かったようで、特に、硯は骨董品としての価値を高めていきます。
中国に「端渓硯(たんけいけん)」という有名な硯があるんですが、こちらの硯は、世界最高峰の硯として知られていて、宋の時代の皇帝の御用品として使われたり、現代でもアート作品として取引をされたりしています。
硯ってそもそも墨をためるための道具なのに、それをアート作品として取引するって、なんか、面白いというか、良いですよね。

ちなみに、紙で言うと、#156の回で解説した「澄心堂紙」が、中国では最高峰と言われています。

そして、同じく#156の回でも登場した、中国が南唐の時代の3代目の国王・李煜(り・いく)さん。
政治に目もくれず、文化・芸術に全振りして、南唐時代を終わらせてしまった伝説の国王です。
彼が作らせた「筆墨紙硯」は全て中国で最高峰と言われるほど質が良く、「文房四宝」の発展に寄与しました。
政治家としては残念な方ですが、文化・芸術に多大な影響を及ぼしたという、なんとも皮肉な感じです。

日本における文房四宝

時代が下ると、「文房四宝」は、中国から日本にも伝わっていきます。

そして、平安時代。
貴族の間で和歌が流行ったり、仮名文字が誕生したりしていくと、「文房四宝」も日本の文化に適応する形でアレンジが進んでいきます。

紙については、皆さんご存知の通り、「和紙」ですよね。
中国から伝わった紙の技法を日本なりにアレンジを加えて出来たのが「和紙」です。

和紙以外で言うと、「筆」も日本文化の象徴と言われるものとして世界から高く評価されていますよね。
特に、広島県の熊野筆は、皆さんもよくご存じの通り、書道用のみならず化粧筆としても高く評価されています。
それから、仮名文字が書きやすいようにと開発された「紙巻筆」も中国にはなかった日本独自のスタイルの筆です。

「硯」もそうです。
中国の硯を「唐硯(とうけん)」と言うのに対して、日本の硯を「和硯(わけん)」と呼びます。
何が違うのかを端的に言うと、原材料の石です。
「和硯(わけん)」でいうと、山形県の「赤間硯(あかますずり)」が有名で、国の伝統的工芸品にも指定されています。

墨も、中国で作られたものを「唐墨(とうぼく)」、日本で作られたものを「和墨(わぼく)」と言います。
墨は、煤(すす)と膠(にかわ)に香料を加えて混ぜ固めて作られていますが、和墨と唐墨との大きな違いは、この配合の比率です。
これにも仮名文字の文化が影響していて、繊細な仮名文字を書くのに適した墨を追求した結果、和墨が生まれていったと言われています。

こんな感じで、中国で発展した「文房四宝」ですが、日本に渡ると、日本の文化に応じて形を変えていったということが分かっていただけたかと思います。

書道をされない方も、アート作品として「文房四宝」を手に取られてはいかがでしょうか。

はい、という訳で今回は、「文房四宝」について解説してきました。いかがだったでしょうか。
それでは、本日も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

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