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#141 竹紙職人・三宅賢三さんの話がめちゃくちゃ面白かった!

『紙について楽しく学ぶラジオ/Rethink Paper Project』
このラジオは、「紙の歴史やニュースなどを楽しく学んで、これからの紙の価値を考えていこう」という番組です。
この番組は、清水紙工(株)の清水聡がお送りします。
よろしくお願いします。

紙漉き職人・三宅賢三さん

先日、紙漉き職人・三宅賢三さんの講演を聴いてきました。
かなりマニアック且つ、めちゃくちゃ面白いお話だったので、今回は、講演でお聴きした内容を一部抜粋してお届けしていきたいと思います。

まず、三宅さんがどういった方かというと、竹を原料とした「竹紙」を主に漉かれる方です。
手漉きの紙漉きといえば、国内では主に「楮」とか「三椏」とか「雁皮」とか「麻」なんかがメジャーですが、三宅さんは、「竹」を主な原料とされています。
その理由として、「竹はそこら辺ですぐに取れるから、コストがかからない」とのことでした。確かにそうですよね。

そんな三宅さん。
「竹紙」だけにとどまらず、藤、ミョウガ、苦参、オニシバリなど、ありとあらゆる植物を紙にしてこられた方です。
道端で植物を見つけると、紙にしたくなってしまうという、いわゆる、生粋の方です。
ご自身で、病気とおっしゃっていました(笑)

現在は、引退されていますが、現役の時の紙漉きの実験の膨大な記録が残っていて、今回は、その一部をお話いただきました。

今回は、「RETHINK PAPER PROJECT」史上、トップクラスにマニアックな回になります。
ただ、紙マニアの方からしたら、よだれが出る回になるかと思います。
よろしくお願いします。

竹紙の製造工程

まずは、三宅さんの真骨頂「竹紙」について掘り下げていきたいと思います。

「竹紙」といえば、業界的には「中越パルプ工業」が有名ですかね。
中越パルプ工業は、近代的な製法で「竹紙」を製造されています。
竹を伐採して、チップ化、パルプ化した後、機械抄紙で紙に仕上げていきます。
封筒、ハガキ、紙袋など、結構いろんな製品として使われているそうです。

一方、三宅さんはと言うと、昔ながらの製法で「竹紙」を製作されています。
それでは、三宅さん式・竹紙の製造工程を、ご紹介していきたいと思います。
先に言っておくと、紙を漉くまでに9つの工程があります。すごい手間ですよね。

まずは、当たり前ですけど、竹を伐採しにいきます。原料から自分で確保しにいくんですね。

続いて、取ってきた竹の節の部分を切り落とします。節は硬いので処理が難しいからです。

次に、殺青(さっせい)と言う処理をします。これは、竹の青みを抜く作業です。

次に、青みを抜いた竹を割って、ソーダ灰で煮ていきます。ソーダ灰で煮ることで、繊維をほぐしていきます。

ある程度繊維がほぐれた竹を、次は、しばらく保存することで、発酵させていきます。発酵させるんですね。根気のいる作業です。

そして、発酵させた竹は、アク抜きをして、紙を漉けるように木の棒で叩いていきます。いわゆる、「口解(こうかい)」と言う作業です。

口解した材料を洗浄して、ようやく紙が漉ける状態になります。

どうですか。かなり手間のかかる作業ですよね。
手漉き和紙もオートメーションが進んでいる部分もありますが、やっぱり漉く前の下処理は、とっても大変だし大事な作業なんです。

竹紙の特徴

竹紙は、基本的に枝が出る前の若い竹を使います。
枝が出ている竹は硬くて作業性が悪い上に、紙自体もあまり良くない状態になります。
一方、若い竹は、白くてコシのある紙になります。
逆に若すぎると、青みが取りにくかったりするので、丁度いい若さの竹が良いそうです。

ただし、若い竹が良いことばかりかと言うと、そうではなくて、粘り気が強くて、水切れが悪いため、漉く時が大変なんだそうです。
ここで出てくるのが、和紙界のエース「楮」です。楮を5〜10%混ぜることで、水切れが良くなるそうです。さすが、楮ですね。こんな活躍の仕方もあるそうです。

また、竹100%だと、乾燥時に紙が割れてしまうリスクが高いそうで、楮を混ぜることでこの乾燥時の紙割れ問題も解決できるそうです。

「竹を漉くときは、楮を5〜10%混ぜるといいよ」と覚えておいてください。

さて、竹紙の製造工程と、特徴が、分かっていただけたかと思います。

紙の原料になる3条件

冒頭で、「三宅さんは、竹紙以外にも色んな植物で紙を漉いてきた」と申し上げました。
そんな植物オタクの紙漉き職人・三宅さんが、色んな植物で紙を漉かれてきた中で、「紙の原料になる3条件」を見出されていましたので紹介したいと思います。

①まとまった量が確保できること
②処理が楽であること
③使い勝手がいいこと

まずは、「①まとまった量が確保できること」。
今では絶滅危惧種に指定されている原料もありますから、材料が簡単に確保できるというのは、とっても重要ですよね。

そして、「②処理が楽であること」
これは、漉く前の処理が楽であること、ということです。例えば、「藤」なんかは、めちゃくちゃ硬くて、ソーダ灰で煮ても、全然ほぐれないそうです。

最後に、「③使い勝手がいいこと」。
これは、漉きやすいこと、ということです。竹100%だと水切れが悪いという話もありましたが、このように、漉きやすいっていうことも、重要になってきます。

おさらいしておきましょう。
「紙の原料になる3条件」は、
①まとまった量が確保できること
②処理が楽であること
③使い勝手がいいこと
です。

色んな紙で実験されてきた三宅さんが言うからこそ、重いですよね。

という訳で、今回は、三宅さんと竹紙についてお届けしてきました。
本日も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

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