#130 意外とスゴイ紙!マーブル紙
『紙について楽しく学ぶラジオ/Rethink Paper Project』
このラジオは、「紙の歴史やニュースなどを楽しく学んで、これからの紙の価値を考えていこう」という番組です。
この番組は、清水紙工(株)の清水聡がお送りします。
よろしくお願いします。
意外とスゴイ紙、マーブル紙
今回は、「マーブル紙」という紙について解説していきたいと思います。
皆さん、聞いたことありますでしょうか?
マーブル模様と聞くと何となく想像がつくと思いますが、独特の模様を持った紙です。
あまり一般的ではない紙ですが、歴史をたどると、すごく面白いんです。
この「マーブル紙」に使われる「マーブリング」という技法は、なんと、国を挙げて厳重に秘密主義を取って守られていたり、紙幣や証券などの偽造防止にも使われたりと、結構スゴイ紙なんです。
日本にも「墨流し」という、「マーブリング」と似たような技法があります。
しかし、墨流しとマーブリングは技術的に区別されます。
そんな、凄くユニークな紙、「マーブル紙」。
今回は、「マーブル紙」について掘り下げていきたいと思います。
マーブリングってどんな技術?
さて、まずは、「マーブリング」が一体どんな技法なのかを確認しておきたいと思います。
まず、紙より少し大きめのバットを用意します。
そのバットの中にゴム樹脂を溶かした水溶液を張ります。
そこに、水分に反発する画材を落としていくと、ゴム樹脂の水溶液と画材が反発しあって、大理石のような模様が出来ていきます。
そうして水面に出来上がった模様に、紙を置くことで、その模様が転写されて、マーブル紙が出来上がります。
ちなみに、大理石を英語でmarbleと呼ぶので、「marble paper」となったそうです。
ついでに、「墨流し」の技法も紹介しておきます。
まず、紙より少し大きめのバットを用意します。
バットに、水を注ぎます。マーブリングのようにゴム樹脂は混ぜません。
水の表面に墨汁を垂らすと、墨が円状に広がります。
その墨の上に松脂を垂らすと、墨と松脂の油分が反発して、墨の円の中が空洞になります。
イメージできますか?
これを何度も何度も繰り返すことで、複雑な模様を作り出します。
墨、松脂、墨、松脂、、、と繰り返していくんですね。
そして、水面に出来上がった模様に、和紙などを置くことで、模様が転写されます。
これが、「墨流し」の技法です。
この「墨流し」は、たまにワークショップなどでやりますが、結構楽しいです。
お子さんからおじいちゃんおばあちゃんまで楽しんでいかれる、人気のワークショップです。
それから、Amazonとかで簡単にマーブリングが出来るキットなんかも売っているので、気になる方は、チェックしてみてください。
マーブル紙の歴史
さて、マーブリングの技法が分かったところで、マーブリングがどんな歴史をたどったのか、見ていきたいと思います。
「マーブル紙」が生まれたのは、12世紀のトルコと言われています。
トルコと言えば、親日でとっても仲のいい国ですね。
そんなトルコで生まれたとされる「マーブル紙」。
製作技法については、めちゃくちゃ厳重に秘密主義が取られていました。
技術が流出しないように、特定の職人だけで作業が行われていたんですね。
しかし、何らかの理由で、その技法がヨーロッパに渡ってきます。
なんで、トルコからヨーロッパに技術が渡ったのかは、分かっていません。
時期的に考えて「中東に遠征に来た十字軍が、マーブル紙のことを知り、技術を持ち帰ったのでは?」という説もあります。
ヨーロッパに技術が渡ってからは、フランス、ドイツ、オランダが、マーブル紙製作の御三家と言われるようになります。
何世紀もの間、ヨーロッパでは、この3つの国でマーブル紙が作られていましたが、ついに、海を越えてイギリスにわたります。
ここで、一人の重要人物が、「マーブル紙」のことを知ります。
アメリカ建国の父、ベンジャミン・フランクリンです。
彼は、1757年~1774年の間、イングランドで暮らしますが、この時に「マーブル紙」に出会います。
その後、アメリカに渡ったベンジャミン・フランクリンは、1775年、アメリカの貨幣の印刷を手掛けることになります。
彼は、アメリカ建国の父であり、同時に、アメリカの製紙・印刷にも大きな影響を与えた人物です。一言で言うと、めっちゃすごい人です。
貨幣をつくるうえで重要になるのが、そう、偽造防止ですよね。
現在の貨幣でも、色んな偽造防止の技術が使われています。
この時、ベンジャミン・フランクリンは、偽造防止の技術として、「マーブリング」を取り入れます。
そうして、1775年に発行された20ドル札には、マーブリングによって、細かい縞が印刷されました。
貨幣の偽造防止に使われていたので、当然、マーブリングの職人は厳重な秘密主義の下、作業が行われていたそうです。
夜な夜な、秘密の作業場で、カギがかけられ、窓はおおわれて作業が行われていたそうです。
めちゃくちゃ厳重ですね。
マーブリングの職人は、基本的に家族で継承されていくそうですが、例え、身内であったとしても、ある程度歳を取って信用が出来るようになるまでは、材料の調合とか、手順などを教えてもらえなかったそうです。
それだけ厳重に守られていたので、職人の名前は勿論、人数なども、未だに分かっていません。
現在でも、マーブル紙はあります。
日本だと、墨流しの紙が多いですかね。
先ほども言ったように、Amazonなんかでマーブリングのキットが売っています。
けっこう楽しいので、気になる方は、お休みの日なんかにやってみてください。
という訳で、今回は以上となります。
本日も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。