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『稲盛和夫一日一言』 5月24日

 こんにちは!『稲盛和夫一日一言』 5月24日(金)は、「解決の糸口」です。

ポイント:どうしても、という切迫した気持ちに加えて、物事を素直に見られる謙虚な姿勢を忘れてはならない。ふだんは見過ごしてしまうような、ごく小さな解決への糸口を見つけることができる。

 1996年発刊の『成功への情熱 ーPASSION- 』(稲盛和夫著 PHP研究所)の中で、あるがままに見ることの大切さについて、稲盛名誉会長は次のように述べられています。

 澄んだ純粋な心には真実が見えます。しかし利己心に満ちた心には、複雑な事象しか見えません。
 例えば、もし「この仕事ができたらどんな利益が得られるのだろうか」といった私欲を抱いて仕事に取りかかると、その欲望が単純な問題さえも複雑にしてしまいます。

 また私たちは往々にして、自分を良く見せようとしますが、そのような利己的な動機は問題の焦点をぼけさせ、解決を遅らせてしまいます。
 物事をあるがままに見ることのできる、純粋な心を持つように努力すべきです。利己的な欲望にかられた目には、単純な問題でさえ非常に複雑に見えてしまうのです。

 たとえ自分にとって不利益であったとしても、物事をあるがままに見て、自分に非があれば、間違いを認めなければなりません。純粋な目で物事を見始めるとき、突然問題が解け、簡単な解決方法が現れるということはよくあることです。
 ところが、自分自身が快楽や贅沢を追い求めるような利己的な心から離れることができなければ、目が曇ってしまい、物事の真実は曖昧なままになってしまいます。

 しかし、真実を見つめるだけでは充分ではありません。その真実を追い求め続けるためには、勇気を持つことも必要です。
 物事をあるがままに見て、さらに自己犠牲を払ってでも成し遂げようという心構えができていれば、克服できない問題などないのです。
(要約)

 2010年発刊の京セラ社史「果てしない未来への挑戦」(非売品)には、「すべての現象を真剣にとらえる」として、名誉会長の次のような言葉が掲載されています。

 研究開発に従事する人たちにとって大切なことは、実験においても生真面目にその現象を追いかけていくことだと思います。
 もともと予想して、その方向に遮二無二走っていくというのは、研究者の態度ではありません。実験の結果が語りかけてくれる何かでもって、自分の方向を決めていくのです。

 私は、研究開発において最も大事なことは、研究開発担当者の態度だろうと思っています。自分の中途半端な観察眼と疎かな判断でもって、とんでもない方向へ研究が進んでいくということはよくあることです。
 それゆえに、自分の目、自分の手で確かめて、自分に絶対の自信がある、これだけ真剣にこのテーマに打ち込んでいるのだから、この実験は間違いないという自信の裏付けが必要です。

 そのためには、意識して、または自分の意志をもって、その現象をとらえるということにコンセントレーション(精神集中)しなければなりません。
 また出てきた各種のデータの中の、それを律しているエッセンス・問題点を鋭く抽出できる能力が必要です。これは非常に先天的なものがありますが、先ほどの集中力と兼ね合わせてトレーニングすることにより、醸成されるのではなかろうかと思います。

 さらに、研究のテーマ選定は非常に重要です。営業や各事業部から上がってきたニーズを入れながら、京セラグループをさらに立派に発展させていくために何をすべきなのか、その研究の効果が会社の発展に大きく一般化されるものなのかといったことで、テーマを選定しなければなりません。

 今後は研究にかける比重を大きくとって、研究所を3つくらいつくって、会社の運命を託していこうと考えています。
 材料からはじまってエレクトロニクス、または機械のシステムまで含めて垂直統合を果たし、世界的にも最も進んだ研究所にしていきたいと思っています。
 研究所から何か生まれなかったら、会社がつぶれるというくらいになっていくべきだと思います。開発に携わる人々の一層の奮起を期待しています。
(要約)

 これは1979年、京セラ創業20周年を機に、鹿児島県霧島市の鹿児島国分工場内に総合研究所が開設されたときの、社長訓示の内容です。

 研究開発に限らず、目の前で起こっている事象が語りかけてくれるものに気づくことができるかどうか。

 今日の一言にある「ふだんは見過ごしてしまうような、ごく小さな解決の糸口を見つけることできる」かどうかは、日頃から、自分が素直に生真面目に物事を見つめようとする謙虚な姿勢を持っているかどうかにかかっているように思います。


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