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『稲盛和夫一日一言』 5月22日

 こんにちは!『稲盛和夫一日一言』 5月22日(水)は、「持てる力を出し切る」です。

ポイント:困難な仕事にあたるとき、また高い目標を成し遂げていくときには、「そこまで努力したのなら助けてやらなくてはなるまい」と、神様が重い腰を上げるくらい、徹底した仕事への打ち込みが必要。

 2009年発刊の『働き方』(稲盛和夫著 三笠書房)の中で、「持てる力をすべて出したとき神が現れる」として、稲盛名誉会長は次のように述べられています。

 登山では、平地から自分の足で一歩一歩踏みしめて、頂上を目指していくしかありません。しかし、その一歩一歩の積み上げが、やがて八千メートルを超える、ヒマラヤの高峰を征服することにつながるのです。

 古今東西の偉人たちの足跡を見ても、そこには気の遠くなるような努力の跡があります。生涯を通じて、そのような地味な一歩一歩の努力を積み重ねていった人にしか、神様は成功という果実をもたらしてくれないのかもしれません。

 逆に、「地味な努力などバカげたことで、そんなことをしていては短い人生で後れを取ってしまう」と考え、何かもっと楽な方法はないかと、日々の地道な努力を嫌がるから、仕事で成功を収めることができないのです。

 京セラが創業して、まだ十年もたっていないころ、当時の技術水準をはるかに超える要求レベルの製品を受注しました。悪銭苦闘してやっと要求通りの製品ができたと思ったのもつかのま、すべて不良品と判定され、全数返品の憂き目にあいました。

 「もうこれ以上は無理だ」といった空気が社内に満ちていたある夜、私は製品を焼成する炉の前に立ちすくんでいる、一人の若い技術者を見かけました。彼は、どうしても思うような製品がつくれず、万策尽きたといった風情で、意気消沈して泣いていたのです。

 「今夜はもう帰れ」
 私がそう言っても、彼は炉の前から動こうとしません。そんな姿を見ていた私の口から、思わずこんな言葉が飛び出しました。
 「おい、神様に祈ったか?」「焼成するときに、どうかうまく焼き上げてくださいと、神様に祈ったか?」

 それを聞いた彼はかなり驚いたようでしたが、私の言葉を何度かつぶやいた後、「わかりました、もう一度、いちからやってみます」と、吹っ切れたようにうなずいて、仕事に戻っていきました。

 その後、彼を含む開発チームは困難な技術課題を次々と克服して、高い要求水準を満たす製品の開発に成功したばかりか、気の遠くなるような数量の製品を期日通りに納品していったのです。

 「神様に祈ったか」
 技術者らしくない言葉ですから、そのやりとりをはたで見ている人がいたら、気でも狂ったかと思ったかもしれません。
 しかし私は、人事を尽くして、後はもう神に祈り、天命を待つしか方法はないと言えるほど、すべての力を出し切ったのか。自分の身体が空っぽになるくらい、製品に自分の「思い」を込め、誰にも負けない努力を重ねたのか。そういうことを言いたかったのです。

 そこまで強烈に思い、持てるすべての力を出し切ったとき、はじめて「神」が現れ、救いの手を差し伸べてくれるのではないでしょうか。

 「おまえがそこまで努力したのなら、その願望が成就するよう助けてやらなくてはなるまい」と、神が重い腰を上げるくらいまでの、徹底した仕事への打ち込みが、困難な仕事にあたるとき、また高い目標を成し遂げるときには、絶対に必要になるのです。(要約)

 1996年発刊の『成功への情熱 ーPASSIONー 』(稲盛和夫著 PHP研究所)「エネルギーを奔(はし)らせる」の項で、困難なことを克服するにはすさまじいほどのエネルギーを集中させることが必要として、名誉会長は次のように説かれています。

 新しい領域へのチャレンジというのは、技術開発にしろ、市場の開拓にしろ、非常に難しい課題です。そこには経験したこともない障害が待ち構えていて、予想もしなかったような困難に突き当たるかもしれません。
 ですから、そこから脱出するにはたいへんなエネルギーが必要となるのです。

 かねて私は、大事をなすにあたっては「狂であれ」と社員に言っています。すべてを燃やし尽くすほどの情熱を持つことが必要なのです。
 情熱は、克服困難と見えるようなバリアを乗り越えようと果敢にチャレンジするために必要なエネルギーとなります。燃えるような熱意、強烈な意志力、強い決意や執念、そういったものがバリアを打ち破るエネルギーの源となるのです。


 困難なことを克服するにはエネルギーが必要であり、「狂である」ということは、すさまじいほどのエネルギーに満ちた状態を言うのです。
 困難に打ち克つには、エネルギーを集中させ、人間の潜在能力を引き出さなくてはなりません。それが人々を成功へと推し進めていくのです。
(要約)

 気を込めて、己の潜在能力をも引っ張り出そうと懸命な努力を続ける。

 「あいつは尋常じゃない。倒れてしまうんじゃないか」と周囲が心配するほど仕事に打ち込めば、神様もきっと思い腰を上げてくれるはずです。
 そう信じて、今後とも精進していかなければと思っています。


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