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『稲盛和夫一日一言』 8月11日

 こんにちは!『稲盛和夫一日一言』 8月11日(金)は、「単純化して考える」です。

ポイント:紛糾している状態のままでは問題を解くことはできない。もつれた糸をほぐすように、まずは原点にまで立ち戻り、その単純な状態をベースに解決を図っていく。

 2001年発刊の『京セラフィロソフィを語るⅠ』(稲盛和夫著 京セラ経営研究課編/非売品)の中で、物事をシンプルにとらえることの大切さについて、稲盛名誉会長は次のように述べられています。

 技術者、研究者というのは、実験してそこで起こった現象を見つめ、そのなかから真理をつかみ取っていくものです。
 それが、発明、発見につながるわけですが、実験をしていれば、いろいろと複雑な現象が起こります。その複雑な現象を複雑なままにとらえてしまえば、何がなんだかさっぱり分かりません。
 そのような場合、複雑な現象を単純にとらえる。つまり、複雑そうに見えるけれども、その複雑な現象を起こしている源は何かを見ていくことが必要なのです。

 大体において、有名な技術者や科学者は、複雑な現象をシンプルにとらえることのできる直観力、分析力といった能力が高いのではないでしょうか。理工系の研究者にはそれが必要だと思いますし、私もそうしたものを重要視してきました。

 会議をしていても、ややこしいそうな話をますますややこしくして説明するような人がいます。学のある人に限って、そうした傾向があるようにも思います。しかし本当に頭のいい人は、複雑なことを単純に説明できる人なのです。

 数学界におけるノーベル賞といわれるフィールズ賞受賞者の広中平祐さんとお話をしていたときのことです。
 私が「一体どうやってその難問を解かれたのですか」とお伺いしたところ、「分かりやすく言えば、二次元では解けないものを三次元にして解いたのです」と説明され、次のように続けられました。


 「例えば、平面交差の十字路があるとします。その交差点には信号がありません。そこへ四方から一度に車が入ってくる。曲がろうとする車もあれば、直進する車もあって、たちまち大混乱。そこで、私はそこに立体交差を作りました。上から見れば十字路の交差点のように見えますけれども、一方は下を走り、一方は陸橋になっているわけですから、信号がなくても車はスムーズに流れるようになります」
 私はそれを聞いて、複雑そうに見える現象を単純化して解を見つけられたのだ、と解釈しました。ここでは、二次元にひとつファクターを加えて三次元にすることで、複雑そうに見える現象を単純化されたわけです。

 何事もシンプルにとらえて核心をつかむことのできる人が、真に能力のある人なのではないでしょうか。(要約)

 今日の一言には、「問題が複雑になる以前の状態というのは、驚くほど単純なものです。その単純な状態をベースにして、解決を図るのです」とあります。

 私たちも、ややこしい話をしているとき、「ちょっと待った。少し立ち止まって、内容を整理してみませんか」といった会話をしているはずです。
 しかしながら、思い入れが強かったり、思い込みが激しかったりすると、気ばかり焦っていますから、途中で止まって冷静に考え直してみようか、などといった発想はなかなか出てきません。

 京セラフィロソフィには、「迷った時には原点に返る」という言葉もあります。
 「迷ったら元の分岐点に戻る」が登山の鉄則であるように、不安に思ったら、勇気を出して原点まで戻り、紛糾する前の単純な状態にしてから、改めて正しく判断し直すといったことも大事なことではないでしょうか。


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