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『稲盛和夫一日一言』 9月27日

 こんにちは!『稲盛和夫一日一言』 9月27日(水)は、「組織に命を吹き込む」です。

ポイント:組織に経営者自身の意志や意識を吹き込み、ダイナミックに活動し始めるようにすることこそが、トップの務め。

 2023年発刊の『熱くなれ 稲盛和夫 魂の瞬間』(稲盛ライブラリー+講談社「稲盛和夫プロジェクト」共同チーム編 講談社)の中で、「リーダーの意識改革こそが、JALを変えた」として、日本航空 元意識改革推進部長 野村直史氏は次のように述べられています。

 JALが経営破綻したのは、2010年1月。その後、稲盛さんを会長に迎え、再生の道を歩んでいくことになるのですが、退任されるまでの3年の間に、JALは大きく変わりました。
 その原動力になったのは、リーダーの意識や価値観が劇的に変化したこと、そしてリーダーが部門の垣根を越えて強く結束していったことだったと私は思っていますが、その渦の中心にいたのは、間違いなく稲盛さんでした。

 稲盛さんは会長就任の挨拶で、「策定中の再生計画を何があってもみんなでまっとうするしかない。そのためにはリーダーが強い意志を持って当たらないとダメだ。リーダーが奮起しないといけない。その先頭に自分が立つ」と話されました。

 再生計画に魂を入れて本気で取り組んでいくためには、社内の意識改革が絶対に必要であり、それは会長がやるわけでもなく、社長や役員だけがやるわけでもない、社員一人ひとりがやっていかなければならない。そうして始まったのが、意識改革のためのリーダー教育でした。

 結果的に17日間にわたるプログラムで実施されたリーダー教育によって、少しずつ少しずつ、稲盛さんの哲学が浸透していき、リーダーの心の中に沁み込んでいったのですが、その際大西社長は先頭に立って参加され、常に一番前の席に座られて、他のリーダーに範を示されました。

 教育での稲盛さんは、経営に関するテクニカルな話はされず、話の中心はどのような業界であろうと共通して必要となるリーダーとしての心構えについてでした。
 1回、2回と聞いているうちに、稲盛さん自身の本気度がひしひしと伝わってきました。そもそも、稲盛さんはJALにはなんの縁もゆかりもない方です。そこに、利他の心を持って会長に就任され、我々を引っ張ってくださろうとしている。それが、だんだんとみんなに伝わっていき、少しずつ場の雰囲気が変わり、参加するリーダーの皆さんの顔色、表情も変わっていったのです。

 火中の栗を拾う形で、しかも無報酬でここまで懸命に頑張ってくださっている。世のため人のためという大義に尽くすとはこういうことなのか。それをまさに目の前で見せていただいている。そう強く感じました。(要約)

 名誉会長がJAL再生に携わられることになったとの一報に、当時私が在籍していた京セラ秘書室内には強い衝撃が走りました。
 もしも再建に失敗されたら、晩節を汚すことになる、迷われるかもしれないが、結果的には固辞されるだろうと、誰もがそう思っていたからです。
 さらに名誉会長が、当時の秘書室長 大田嘉仁氏を、会長補佐として随行させ、意識改革を担当させるらしい、との情報にまた驚かされました。

 JAL会長就任前の名誉会長は、すでに盛和塾や稲盛財団の活動に軸足を移されており、京セラ本社内におられる際は、「グループの経営は君たちに任せたからね」というスタンスで、とても柔和な表情をされていたと思います。
 しかし、JAL再生に携わられた3年間、ごくまれにですが、本社19Fの執務室にこられる機会があり、その際にお見受けした顔は、経営者としての迫力というかすごみ、そして目を合わせると射貫かれてしまいそうな鋭い眼光が完全に戻っておられる! そう感じたのをよく覚えています。

 無生物である組織が、あたかも生き物であるかのようにダイナミックに活動し始める。「組織に命を吹き込むことがトップの使命」ということを身近に感じることのできた強烈な経験となりました。


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