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『稲盛和夫一日一言』 7/8(土)

 こんにちは!『稲盛和夫一日一言』 7/8(土)は、「運命は宿命にあらず」です。

ポイント:大事なことは、因果応報の法則のほうが運命よりも若干強いということ。持って生まれた運命さえも、善きことを思い、善きことを行うことによって、善き方向へと変えることができる。

 2004年発刊の『生き方』(稲盛和夫著 サンマーク出版)の中で、「因果応報の法則を知れば運命も変えられる」として、稲盛名誉会長は次のように述べられています。

 人生が運命どおりに行かないのは、因果律の持つ力がそこに働くからであり、善行が必ずしもすぐに善果につながらないのは、そこに運命が干渉してくるからです。

 そこで大事なのは、因果応報の法則のほうが運命よりも若干強いということです。人生を律するこれら二つの力の間にも力学が働いていて、因果律の持つ力のほうが運命の持つ力をわずかに上回っている。そのせいで私たちは、持って生まれた運命でさえも、因果応報の法則を使うことによって変えていくことができるわけです。

 したがって、善きことを思い、善きことを行うことによって、運命の流れを善き方向に変えることができる。人間は運命に支配される一方で、自らの善思善行によって、運命を変えていける存在でもあるのです。

 「運命は宿命にあらず、因果応報の法則によって変えることができる」
 これは、私が勝手に考えたことではありません。多くの政治家や経済人に多大な影響を与えた思想家である安岡正篤(やすおかまさひろ)さんが、中国の古典『陰隲録(いんしつろく)』を紐解かれた著作を通じて学んだことです。

 天が定めた運命も己の力で変えられる。善き思い、行いを重ねていけば、そこに因果応報の法則が働いて、私たちは運命に定められた以上の善き人生を生きることが可能となる。それが「立命」という考え方です。(要約)

 1990年発刊の『立命の書「陰隲録を読む』(安岡正篤著 致知出版社)のあとがきに、『陰隲録』の内容が次のようにまとめられています。

 『陰隲録』の著者 袁了凡(えんりょうぼん)は、中国明代、呉江の人、嘉靖年間から萬歴年間を生き、七十四歳で亡くなった。代々学者の家に生まれ、初め医を学んだが、孔という不思議な老人に出会い、その予言に従って科挙に志した。
 その後、彼の一身上に起こったことが、ことごとく孔老人の言う通りになったので、彼は徹底した宿命論者になった。
 後、北京に出て、棲霞(せいか)山中に雲谷禅師を訪ね、その立命の説に強く感動し、禅師の教えに従って、徳性を充広し、善事を力行し、多くの陰徳を積んだところ、孔老人の予言は段々と当らなくなり、科挙に及第し、五十歳で死ぬと言われたのに七十四歳まで生き、子に恵まれないと予言されたのに、一子をもうけることもできた。この子のために自身の体験を書き留めたのが、この『陰隲録』である。(要約)

 『陰隲録』を貫いている考え方は、人間は「運命」とか「宿命」というものを、自らの道徳的努力によって、「立命」に転換していくことができるという思想です。

 つまり、この書は「禍福(かふく)は人間の力ではどうすることもできない天の命ずるところのものである」ということを悟り、その上で、謙虚、積善、改過といった道徳的な精進によって、自らの運命をも開拓し、素晴らしい人生を実現していった人の実録なのです。

 原文の部分は難解ですが、現代語訳に加えて、詳細な解釈・解説が添えられていますので、「運命」「立命」といったものに興味のある方は手にとってみられてはいかがでしょうか。自身の人生を考える上での一助となるのではと思っています。


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