『稲盛和夫一日一言』 6月27日
こんにちは!『稲盛和夫一日一言』 6月27日(木)は、「成功を持続させる秘訣」です。
ポイント:成功を持続させようとするならば、心の中に頭をもたげる利己的な思いをできるかぎり抑えるように努め、他に善かれかしと願う「利他」の思いが少しでも多く湧き出るようにしていかなければならない。
2016年発刊の『稲盛和夫経営講演選集 第6巻 企業経営の要諦』(稲盛和夫著 ダイヤモンド社)収録の第20回盛和塾世界大会(2012年7月開催)塾長講話『人と企業を成長発展に導くもの』の冒頭、企業経営を成功に導く美しい「利他の心」の実践について、稲盛名誉会長は次のように述べられています。
記念すべき第20回盛和塾世界大会を、日本のみならず中国や台湾、また遠くアメリカやブラジルの各塾から、さらに今回は、オブザーバーとして韓国からも参加いただき、2日間にわたり盛大に開催できましたことを、本当にうれしく思いますとともに、感謝しています。
この両日にわたり、8名の塾生の方々のたいへん感動的な体験発表をお聞きしてきましたが、皆さん、業種や企業規模こそ違え、それぞれ、心を高めることに努め、経営を伸ばしてこられた方々ばかりでした。
それは、この会場を埋め尽くす4,000名にならんとする塾生の皆さんも同様です。私利私欲に流れがちな現代の世相にあって、盛和塾生は、従業員の幸福を実現するため、また世のため人のために、真摯に経営に打ち込んでおられる方々ばかりであろうかと思います。
話す側も聞く側も、双方が美しくピュアな魂をもった人たちであるために、この会場には、凛とした空気の中、心からの感動と共感の渦が広がっていったように感じています。この雰囲気に触れただけで感化され、心が浄化され、高められるように感じるのは、私だけではないと思います。
これは、盛和塾特有の空気であり、森羅万象、生きとし生けるものすべてを成長発展させようとする「宇宙の意志」にも似て、人、また企業を成長発展させるエネルギーに満ちているように思います。
この素晴らしい雰囲気の中から、日本の産業界、いや世界の産業界をリードするような、卓越した経営者が輩出していくのではないか、と私は期待しています。
私は2010年2月、山ほどの経営課題を抱えて破綻した日本航空に、航空運輸業の経験などまったくない私が、たった二人の京セラ役員と、自分でつくり上げた経営哲学「フィロソフィ」と、経営管理システム「アメーバ経営」だけを携えて向かっていきました。
しかし、初めて訪れた日本航空は、私の想像をはるかに超えるほど、企業としての体を成していませんでした。週のほとんどを東京のホテル住まいで過ごすことになって疲労困憊(こんぱい)していた当時の私がたいへん心強く感じたのが、私が日本航空の再建に携わると聞きつけるやいなや、すぐ当時5,500人の盛和塾生の皆さんが、一人につき100人の仲間を集め、合計55万人で日本航空を応援しようと動いてくださったことです。
具体的には、「JAL応援団」という名刺をつくっていただき、塾生の皆さんを中心に、その友人知人の皆さんが、「日本航空に乗ってあげよう」と、無理をしてでも、日本航空を使ってくださった。
また、搭乗のつど、日本航空の社員たちを励ましてくださった。さらには、日本航空のマークにちなみ、たくさんの千羽鶴を折って、贈っていただいたりもしました。
そのような応援が、私のみならず、破綻で傷ついた日本航空従業員たちの心の支えとなったばかりか、採算面でも大きく貢献し、日本航空再建に向けた最初の一歩に対して、まずは盛和塾生の皆さんから後押しをしていただいたように感じました。実際に皆さんがしてくださったこと、それは「利他」の心の発露そのものであったと私は思っています。
私も今まで、30年近くも手弁当で、盛和塾生の皆さんに「経営とはいかにあるべきか」ということをお話ししてきました。その30年にわたる私の盛和塾活動を見てこられた皆さんが、「今まで塾長にお世話になったのだから、今こそ恩返しをしよう」という思いで動いてくださったものと思います。
つまり、私が無償の愛で、皆さんの経営に何らかの貢献をした。それに対してお返しをしてもらった。私はそのことが本当にうれしくて、涙が出るほどに感動しました。
それが日本航空再建の本当に大きな力となったのです。そのようには公表されてはいませんが、日本航空再建の相当部分は、皆さん盛和塾生の力だったと、私は固く信じています。(要約)
今日の一言には、「大成功を収め、人々の羨望(せんぼう)を集めていた人が、いつのまにか没落を遂げていく。謙虚さを失い、ただ自分だけよければいいというような利己的な思いを抱き、自分勝手に行動するなら、すべてを生成発展させようとする宇宙の意志に逆行し、一度成功したとしても、それは長続きしない」とあります。
名誉会長は日本航空再建において盛和塾生が起こした「JAL応援団」というアクションを、「利他の心」の発露そのものであったと表現されています。
「宇宙の意志に逆行する」というと、何やら宗教的なにおいがして、それだけで拒絶反応が出そうだという方もおられるかもしれませんが、「できるだけ利己的な思いを抑え、少しでも利他的な思いが発露しやすい心の状態をキープしていきましょう」と言われると、少なからず「なるほど・・」と感じることができるのではないでしょうか。
「情けは人の為ならず」