『隣の家族は青く見える』から考えたこと~大きな愛と幸せ

 2020年5月21日にアメブロに投稿した記事です。

『隣の家族は青く見える』から考えたこと~大きな愛と幸せ

1 『隣の家族は青く見える』というドラマ

 松山ケンイチさんと深田恭子さんが演じた30代夫婦の不妊治療を中心に、家族の在り方・パートナーの在り方を描いたドラマでした。過酷な不妊治療を経験した方には、賛否両論あるようですが、私がよかったと思ったのは、

 子どもがいる夫婦VS子どもがいない夫婦

という二者の単純比較で終わらなかったことと、主人公の奈々夫婦には気の毒ですが、ある意味では子どもが生まれてハッピーエンドという結末にもっていかなかったことであると思います。

 このドラマには、
・子どもがいらないカップル(しかも夫が前妻との間にいた息子も登場)
・LGBTカップル
・子どもはいるが夫婦仲・親子仲がぎくしゃくしているカップル
・できちゃった婚(授かり婚)カップル
というありとあらゆるタイプのカップルが登場します。
 まるでピーターラビットの妹たちが、子だくさん・子どもがいない・独身のように書き分けられているように・・・。

2 心にぐさりときたこと~2人の母の姿


 このドラマはリアルタイムでは見られず、あとでDVDを借りてきて見たのですが、もう色々な意味で逆泣きピタドラマでしたよ。
 さらに、①大器の実家が焼き鳥屋、②彼が長男、③お母さんは孫を楽しみにしている、④名前の大ちゃん呼びは、個人的な事情から心にぐさりと刺さりました。

 女性側に問題があると思われるタイプの不妊で一番きついのは、「彼が長男、お母さんは孫を楽しみにしている」というこの部分でしょうが、大器のお母さんは奈々を〇女(言ってはいけない言葉なので伏字)や人でなし呼ばわりすることなく、温かい言葉をかけます。実家は妹が手伝っているとはいえ、やはり昔ながらの考えでは、長男は特別なものであり、まして自営業をしているならば店を継がなかろうがなおさらです。

 世の中には子どもができないからという理由で、息子の嫁に離婚を迫る義理の家族など星の数ほどいます。中には自分の息子に原因があってもそれを認めず、子どもができないのは女性側に原因があると信じて疑わない人がまだまだ多いのです。そして、実家の親でさえ、娘に向かって子どもができないことを責めたりする場合もありますね。しかし、奈々の実家のお母さんも奈々たちに不妊治療をやめたらどうかというくらいに、娘を責めるどころか心配するのです。

3 不妊について考える~人生の課題がなければ子どもは出てこない

 私は不妊の問題について、再三書いてきましたが、はっきりいって子どもの有無はもう神仏の領域であると思います。どんなに高額な不妊治療をしようが、年齢が若かろうが、病気や障害がなかろうが、聖人なみの人格者だろうが、夫婦仲がよかろうがダメな時はダメなのです。その人に子どもを持つという課題がなければ、はっきりいって無理ですよ。普通は温泉を掘るように深く掘って考えませんから、子どもがいなければその犯人探しに走ってしまうのですね。

4 ある意味では大きな幸せと愛を手に入れた奈々

 物語の終わりに、主人公の奈々は流産してしまったことで、彼女は大器が子ども好きであるのに、自分と夫婦でいるうちは子どもが持てないだろうと思って離婚を切り出します。この気持ちはよくわかります。私が同じ立場でもおそらくそう言うでしょう。しかし、けして大器は奈々を子どもを産む道具とは見ていないのです。子どもがいなくても奈々がいない人生は耐えられないと言います。彼にとっては、奈々が一番大切なのです。

 最終結末として、奈々は結果的に子どもをもつことはできませんでした。不妊治療もやめて、養子をとることもしません。彼女は最愛の夫である大器や家族・仲間に囲まれてくらすという、ある意味、夫婦と血のつながった子どもという1つの形だけにこだわらない生き方を選択します。しかも、彼女がすごいところは、不妊治療と流産でつらい思いをしたものの、実の子どもがいなくても、子どもという存在を遠ざけることはせず、むしろ関わっていくというところでした。普通は苦しみや悲しみの根源から離れようと思うものですが、ある意味、苦しみや悲しみを大きな愛に昇華したのではないかと思います。もはや悟りの境地であり、これも1つの大きな愛の形です。

5 色々あるから人間なのであること

 そして、大器の妹夫婦も入れたら、奈々たちの他には4組のカップルがいるわけですが、どの形が正しい・間違っているのではなく、愛の形は本当にそれぞれであり、どれも尊いのですね。
 金子みすゞさんの詩ではありませんが、「みんなちがってみんないい」のです。優劣がつけられるものではありませんし、比較しようがないのです。
 どんなに完全無欠に見えても、全知全能ではない人間という生き物が集まって生きているわけです。何の問題も悩みもないカップルや家族はなく、何も起こらないという絶対的な幸せもなく、さまざまな葛藤をくりかえしながら生きていくから人間なのでしょうね。

 隣の家族は青く見える
 https://www.fujitv.co.jp/tonari_no_kazoku/

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