ウェディング霧子に網膜を焼かれた人間の考察
何も言わず、とりあえずもう一度見ておきましょう。
P-SSR【白・架・祝・幻】幽谷霧子の登場は、(私に)大きな衝撃を与えました。
だってなんかイラストからすごい。かわいいとか綺麗とか、そういった言葉では満足できない。威力すら感じる。
久しぶりに血の滾りを感じたので、気合で引いてきました。
コミュを読んで色々と感じることがあったので、ここに考察(感想)として記録しておくことにします。
※ここからコミュの中身に触れていきます。当然がっつりネタバレするので、自己防衛をお願いします。
まず最初に言っておきたい。
これは、公式から出てきた最高のP霧です。
P霧というのは、いわゆるカップリング表現です。
個人的には、公式に対してはあまり使うべきではないのかなと思いつつ、でもこれはそう表現せざるを得ない。
何をもってそんなことを言っているのか、順を追って見ていきましょう。
1.さきのこと
彼女に、家族に、これから先待っているかもしれないこと。その未来に思いを馳せる。
この章は、Pと霧子さんの通話を通してのやりとりに終始します。話題は、霧子さんがこれから臨む「結婚」をテーマにした撮影と、その準備について。
「霧子さんに結婚について考えてほしい」という先方の求め。そのため、たくさんの資料が用意されました。Pはそれを幽谷家に送ったのですが、なんとお父さんがそれを見つけて、落ち込んでしまったそうです。
霧子パパ、可愛過ぎる。
でも、仕方がないでしょう。遠くない将来、人生をかけて守ってきた娘が、自らの手を離れることを想像してしまえば、誰だって落ち込んでしまいます。
そんな父の様子に戸惑いつつ、霧子さん自身も自らの将来に思いを向けます。
まだ想像もつかない、という感じではありますが、そんな未だ見ぬ日々をどこか愛おしむような、そんな彼女が描かれていました。
2.とんとん とんとん
真っ白なドレス、さらさらのベール。思い起こすのは微かな光景。
いよいよ、ドレスの試着の時が来たようです。
ちょっとテンションが高めのスタッフさんに少し圧されつつ、純白をその身に纏います。
そこにPが到着するのですが、彼を見たスタッフさんの様子がなんだかおかしい。Pにかける言葉、霧子さんを見やる様子、これはもしや……!
ラブコメ、いただきました。
こんなに直接的な展開、シャニマスにしては珍しい気がしませんか?
まあもっとやってくれて全然かまわないんですが。
そんな一幕がある一方。ベールをつけた時、霧子さんの頭にはある光景が浮かんでいました。
大きな窓の前、でしょうか。そこで誰かが、「とんとん……とんとん……」と優しい声を誰かにかけています。
この声、きちんとボイスがついているのですが、明らかに霧子さんの声とは違います。おそらく幽谷霧子役を務める結名美月さんのお声ではあると思うのですが。
少し大人っぽい声色に加え、小さな子供をあやすような言葉遣い。そこから予測できるのは、この声は霧子さんのお母さんで、あやされているのは小さなころの霧子さん自身、ということです。(でも、霧子さん本人以外のボイスをわざわざ入れることがあるのか?という疑問については、後ほど)
ではなぜ、ドレスやベールを着た瞬間にこの光景がよぎったのか。
その答えは、もう少し先にあります。
霧子さんのドレス姿が気になってちょっとテンションが上がってる男と共に、この章はお別れです。
3.お日さまとまいご
二人一緒に右往左往。そのちょっとした旅路は、まるで____。
結婚式場にやってきた霧子さんとP。どうやらここが撮影会場になるようです。
早速実際の撮影場所へ向かおうとしますが、目的地までは意外と遠くて。その迷い道の中には、様々な出会いが待ち受けていました。
霧子さんと自らの娘の学生時代を重ね、泣き出してしまった新婦のお父さん。
ガーデンウェディングにて、ブーケを噴水の中に投げ込んでしまった新婦さんと、参列者の方々。
色々な人に、色々な心に触れて、迷い道もどこか楽しそうな二人。
終わってしまうのが惜しい二人の冒険も、やがてゴールが見えてきます。
ゴール手前では、お決まりの選択肢が出ます。
どれを選ぶかによってその後の展開が大きく変わるのですが、必ず全部見てください。
すごいです。
全部に触れると冗長になるので控えますけど、すごいです。
全ての言葉が、二人一緒に歩む幸せを表してる。
目的地とは違った場所に着いてしまっても。
目的までの最後の道の入り口に立つ瞬間も。
最後、そこにたどり着いても。
この二人は、二人で歩んできた道を愛おしみ、そこから先に待っている道を慈しむのです。
この章、私には、結婚式場という舞台を通して、彼と彼女がこれから二人で歩んでいく道を暗示しているようにしか見えません。
こんなん結婚するじゃん、この二人。
ところで、章題である「お日さまとまいご」ですが、その意味は上の画像のシーンから読み解くことができます。
「目的地までもう少し、さあ先へ進もう」、というシーンなんですが。
たとえ迷子になっても、転んでしまっても、二人の道はとても明るいので、またすぐに前へ進めるそうです。
ごめん、我々の知らぬ間に君たちすでに結婚してた?
4.むすびめ
誰かの思いが、言葉が、時間が。ここで結び合わされて。それを彼女は受け取った。
幽谷霧子コミュお馴染み、難解な詩を読み解く時間です。
場面は、撮影の休憩時間から。
何をしているのかと思えば、
再びのラブコメ、いただきまし……?
あれ、なんか甘い雰囲気になってないですね。
この2人、いろいろ変わったところはありますが、基本的に超がつく真面目なので、どんな場面でも仕事には真剣に取り組むのです。
さて、一通り練習も終えたところで、ふとベールのことが話題に上がります。
霧子さんの頭には、再びあの大きな窓の前の光景が広がって。
2章で霧子さんの頭に浮かんだものと同じ言葉。「きりちゃん」と呼ばれていることから、霧子さんに向けられたもので間違いないでしょう。(思い起こしている光景の色味が違うのは、何か意図が......?)
ではどうして、この記憶がよみがえってきたのか。
それは、Pの言葉によって明かされます。
自らの付けているベールがさらさらとこすれる音で、霧子さんが思い浮かべたのが先ほどの光景です。
霧子さんのお母さんが身に付けたベールは、幽谷家のカーテンとなって、幼い霧子さんの近くでさらさらと揺れていたのでしょう。
ベール/カーテンがさらさらと揺れる音。
背中を、とんとんと優しく叩かれる音。
幼いころ、カーテンの向こうに見た光や風。
今、ベールの向こうに見える光や風。
この会場で目にした、多くの人の様々な思い。
母が、自らに向けてくれた確かな愛。
それらがここで、結び合わされる。
上の画像のセリフの後、最後に、彼女はこう言います。
「でも、飛び込んできてくれたのなら___」
「抱きとめるから」
始めて読んだ時、この言葉に違和感を覚えました。
なぜなら、この言葉の前に、「でも」という接続詞に繋がるような言葉が無いからです。
直前のセリフからは繋がらないし、もっとさかのぼっても繋がる言葉が見当たりません。
なら、この言葉は何を意味しているのか?
「飛び込んでくる」のは何なのか?
正直まだよくわかっていませんが、あくまで推測として記しておきます。
まず、この「でも」はどこから繋がっているのか?
次に示すこの言葉ではないかと、私は考えます。
「この光の名前を、私は知らない。ただ溢れ行くものを、私はとどめる術を知らない」
この言葉は、テキストのどこを探してもありません。
これは、アニメーションが流れる際に、霧子さんが話す言葉です。
「でも」に自然に繋がる言葉は、これ以外には見当たりませんでした。
では、この言葉はどういう意味なのか?
名前も知らない光が溢れている。それをとどめることは出来ない。
「光」については、いくつかの言及があります。
3章で触れた、自分たちの道を照らしているお日さまがあって。
ベールを通して今見えている、優しい光がある。
しかしこれらは、霧子さんにとっては「知っている」光ではないかと思えます。
実はもう一か所、光について言及されている箇所があります。
次の画像のところです。
この言葉たちは、「でも、飛び込んできてくれたのなら___」と「抱きとめるから」の間に挟まっています。
夕日の光にすべてが包まれて。
夜になれば闇が覆う。
そして朝、再び光に照らされる。
一日の終わりと始まり。光を通して、流れる時間について語られているのです。
では、「光」を「時間」に読み替えてみましょう。
霧子さんが名前も知らない「時間」とは?
当然、霧子さん以外の人が過ごしてきた時間です。
霧子さんを見て娘の学生時代を思い出し、泣き出してしまった新婦のお父さん。
彼は娘さんとどのような時間を過ごしてきたのでしょうか。
どうして、泣き出してしまうような思いを抱いたのでしょうか。
自らが身に付けたベールをカーテンにリメイクしたであろう、霧子さんのお母さん。
どんな思いをもって、カーテンにしたのでしょうか。
その前で霧子さんをあやしながら、何を感じていたのでしょうか。
それぞれが過ごしてきた時間があって、その中で育んできた思いがあって。
たとえそれが切なくても、とどめることは出来なくて。
多くの人のそれらがここに集まって、一つの結び目になる。
その結び目を抱きとめて歩んでいく。それが結婚であると、霧子さんは考えたのではないでしょうか。
1章で、「結婚について考えてほしい」という先方の要求があるという話がありましたが、それに真剣に取り組んだ結果の描写だったのではと、私は考えました。
「この光の名前を、私は知らない。ただ溢れ行くものを、私はとどめる術を知らない」
「でも、飛び込んできてくれたのなら___」
(時間と歩むことを選ぶ者たちがいる限り)
「抱きとめるから」
なんとなく、繋がる気がしませんか?
True End:ひびいていた、る
その終わりを覚えている。その始まりを、共に踏み出す。
このエンディングの解釈、考えれば考えるほど難しい。
もはや私の妄想が入っている気もしますが、大目に見てください。
撮影を無事に終えた霧子さんとPは、今回の衣装を手掛けたレース作家さんのもとへ向かいます。
そのアトリエはずいぶんと山奥にある様子。少し迷ったようですが、霧子さんがレースのように美しく咲き誇っている花をヒントに、場所を導き出しました。
無事、作家さんに出会えた二人は、ベールについての興味深いお話を聞きます。
ベールは境であり、ベールアップはそれを取り去る儀式である、と。
お話も終わり、アトリエを後にする二人。
これで、このウェディングのお仕事はお終いです。
終わりという、一つの「境」を迎えます。
ウェディングの仕事が終わって、また次が始まる。
一日が終わって、また新しい日が始まる。
そんな「境」を積み重ねて生きていく。
ベールは二人の境であり、ベールアップはそれを取り去る儀式だと聞きました。
ですが、「終わり」「始まり」という境については、霧子さんはむしろ大切に思っているようです。
少し先んじて、このエンディングの最後の最後に映されるシーンについて。
Pの回想のような形で、ベールをかぶっていない霧子さんの後に、ベールをかぶった霧子さんが出てきます。
普通に考えると、ベールを取って、境を取り去るのがハッピーエンドに思えますが。逆につけてしまいました。
このベールは、二人の間の境ではなく、「終わり」や「始まり」という境、つまり時間のことでしょう。二人だけではなく、関わってきた人皆の。
その境が積み重なって、結び合わさることを知っているから、大切に付け直したのではないでしょうか。
Pも最後に、「俺も、きっと忘れることはないだろう」という言葉と共に、霧子さんと一緒に見た光景を思い起こしていました。
霧子さん自身は、何かを覚えている、忘れない、とかいうことは一切言っていないのですが。それでもPは「俺も」と言いました。霧子さんが一つ一つの時間を、その境を大切に抱きとめているのを、彼はわかっているのです。
場面を少し遡って。
霧子さんは、またもあの光景を頭に浮かべていました。
かつて自分に響いていたような、優しく叩かれる音。
その音は今でも、前から響き続けている。
ここで言う「前」は、時間軸的な前、つまり未来のことでしょう。
つまり、この場面の「とんとん……とんとん……」は、未来の出来事ということです。
2章にて霧子さんの頭に浮かんだ光景には、ボイス付きのセリフがありました。
しかし、4章におけるその光景では、ボイスはありません。
4章でのセリフは「きりちゃん」と呼び掛けていたため、幼い霧子さんにかけられた声で間違いありません。では、2章においては......?
そう。あの時の声は、成長した霧子さんが、自らの子供にかけていた言葉なのではないでしょうか。
プロデュースコミュにおいては、はづきさんや社長を除いて、基本その本人の声しか流れないという原則があるというメタ的視点からも、この説は有力なのではないかと思っています。
そして、最後に。
霧子さんはPに、とある提案をします。
ベールの時間の終わりという境を、一緒に飛び越えて。
また新しい始まりを、同時に、一緒に始めたい。
その境を共に積み重ねた先には。
今も響いているあの音が待っている、未来がある。
その未来を共に過ごすとはどういうことなのか、わかってるのかな...…。
ということで、考察はここまでです。
最初にこのコミュを読んだときは、「なんかよくわからないがすごいものを見た気がする」という感じでした。
何度か読み返すうちに「あれ、やっぱりすごいこと書いてない......?」となり、せっかくなので自分の考えたことを文章に起こしてみようと思い立ったわけです。
自分で書いておいてなんですが、公式の意図が本当にこの考察通りだとしたら、ちょっと攻めすぎだとは思います。でもシャニマスならやりかねないという気持ちもあるし、個人的にはこのくらい攻めたシナリオが好きなので、もっとやってほしい。
ここまで読んでくださった方、ありがとうございます。
そしてシャニマスの運営に携わっている皆さまにも、ありがとうございます。
これからも個人的に、自由に楽しませていただきます。
最後は、今回のフェス衣装でお別れです。
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