重大事故を起こさないための運転術 ~運転免許を取ったら知っておくべきこと~

割引あり

 今の世の中は若者のクルマ離れが進んでいるとも言うが、それでも新たに運転免許を取得する人はまだまだ多い。運転免許を取った人は少なからずこれから自動車を運転できることを楽しみにしたり、不安な気持ちであったり、人それぞれ様々な感情を抱いていることだろう。また、昨今はライドシェアばやりで、普段あまり運転しないが時々そういったサービスを利用して運転するとか、全くのペーパードライバーだったのに、ある日旅行などで運転することになってしまうとか、日常的にクルマを運転をしない人にとっては運転することには不安の方が大きいのではないだろうか。
 免許を取ったばかりの人、時々しか運転しない人、免許は取ったが今までペーパードライバーの人は運転することに不安があることは当然だが、一番気にすべきことは、ベテランドライバーが長い間かけて身に付けている安全運転術を知らないということだ。そのために、こういった人たちは重大事故を起こしてしまう、または巻き込まれてしまう可能性がベテランに比べより大きくなる。運転操作が未熟で駐車場などで他のクルマや塀などにこすったというような事故ならば大したことはないが、重大事故を起こし、相手や同乗者に重傷を負わせてしまったり、命を奪ったりしたら、運転者の人生は大きく狂ってしまう。重大事故に巻き込まれ、自分や同乗者が大きな怪我を負えば、事故に巻き込まれたことを悔やむだろう。
 私はプライベートでは約40年間で100万キロ以上運転し、仕事ではクルマの事故を減らすシステムの開発を長く手掛けてきたためクルマの事故について人一番関心が強く、どうして事故が起こるのかその原因について特に心理的な側面について考えて来た。このような経験から、事故を起こさない、特に重大事故を起こさない、重大事故に巻き込まれないために運転する人が知っておくべき安全運転の知識について、不幸な事故が一つでも少なくなることを期待しお伝えしていきたいと思う。

 まず、重大事故とはどういう事故のことを言うかだが、国交省が定義する重大事故には色々あるが、ここではその中の一つである、”死者または重傷者を生じたもの”という前提で考えていきたい。先にも書いた通り、重大事故を起こしたら人生が変わってしまう。怪我人が出ない接触事故とは訳が違う。だからこそ、皆さんがそういう目に遭わないよう、重大事故を避けるための術を知っておいてもらいたいと強く思う。私は40年間運転してきて4度事故に遭った。最初の事故は、学生時代の秋に運転免許を取得し、翌年の夏に起こした事故で、いままでで唯一の自責による人身事故だった。免許取得からちょうど1年くらいで運転に慣れてきて一番危ないと言われる時に事故を起こした。事故は交差点でのバイクとの衝突でクルマもバイクも大破したが、幸いにもバイクの運転手が重傷を負わなかったためその後の人生が大きく狂うことはなく、いまこうやって伝えることができている。その事故の他に、若い時に2回バイクとの衝突事故、ダンプカーとの衝突事故に遭ったが、何れも被害事故で負傷者も出なかった。厳密に言えば、バイクとの衝突の2回のうちの1回は、バイクの運転手は手に少し怪我をしていたようだった。しかし、怪我の程度が小さかったこと、私が停止しているところに飲酒運転のバイク(原付)が突っ込んできたといった状況から、人身事故扱いにはならなかったというものだった。何れの事故も20代か30代の前半の時で、事故を起こしやすい、事故に遭いやすい年齢だったと言えるかも知れない。ただし、若い人だけが重大事故を起こしやすいとは必ずしも言えないので要注意だ。
 この4回の事故の経験がその後の自分の事故に遭わない運転術に生きているのは間違いないと思う。それに冒頭でも書いたように、私は自動車の事故を減らすシステムの開発に長く携わってきたので、クルマの事故が起きにくいようにする、重大事故を減らすようにするのが仕事であり、事故を起こさないためにはどのような運転をすればよいかについて人一倍考えてきたと思う。重大事故を起こさないためにどのようなことに気を付ける必要があるのかについて、こういった経験から私が身に付け、実践している具体的な内容について説明していきたい。

 サーキットなどとは違い、歩行者、自転車、バイク、クルマなど様々なものとの衝突を避けなければならない一般の道では、どのようなシーンが重大事故に繋がる恐れがあるかを知ることが、重大事故を避けるためには必要不可欠だと思う。もちろんそういったことを知らず、注意もせずに運転していても、幸運にも重大事故には遭わないかもしれない。しかし、注意すべきポイントを知っており注意して運転している人よりは何倍も重大事故を起こす確率が大きいだろう。重大事故はその被害者だけでなく加害者や加害者家族も不幸のどん底に突き落とす。後悔先経たずであり、重大事故は絶対に避けなければならない。そのためにKY、KYKなどと呼ばれる危険予知、危険予知活動などを行なうことで、この状況にはこんな危険が潜んでいるかも知れないということを日頃から意識することも大切だし、典型的な危険パターンを知っておくことも重要だ。これを読んでいただいている皆様には、典型的な重大事故のパターンを知って頂き、その状況において注意深い運転ができるようになっていただきたいので、以降に重大事故が起きやすい状況について説明していきたい。

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