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ポケモン世界における「太陽」(前編)

※一応、各種ポケモンシリーズのネタバレに注意




https://www.pokemon.co.jp/ex/legends_z-a/ja/


先日、「POKEMON LEGENDS Z-A」が発表された。これに伴い、もう十年以上前の作品となってしまった「ポケモンX・Y」では語られないまま放置されたいくつのもの伏線・未回収要素に光が当てられることになるまたとない機会が訪れようとしている。
個人的にはフレア団の思想的な意義について、この十年間で起きた様々な事件・戦争・技術革新などなどを踏まえて、改めて問うてほしいと、一応子供向けのゲームには似つかわしくない期待を抱いている。


こうしたカロス地方の未回収要素も気になるが、一方でLGENDSがシリーズ化された、という意義も大きく、「LEGENDS アルセウス」での伏線回収がなされる可能性もある。
このように考えた時、カロス地方・ヒスイ地方での未回収伏線の共通項が存在するのか、ということが気になってきた。そこで注目したいのがヒスイ地方のフラグてんこ盛り要素、「ふるいポエム」の20である。

それは太陽であった
太陽はお隠れになり
みなは嘆き悲しんだ
多くの者が太陽を追い求め
この地を去った
この地に暮らすのは
ポケモンだけとなった


曰く、昔の「この地」(ヒスイだろうが別の可能性も否定できない)に「太陽」と形容される存在があり(ポケモンか、人間か、はたまた別の何かかもしれない)、どこかの時点でなくなってしまったらしい。人々は「太陽」を求め、「この地」を旅立ち、ポケモンだけが住む土地になった、ということらしい。ここでいう「太陽」とは何を指すのか、作中では謎のままである。(この話にはいろいろと突っ込みどころがあるのだが、ここでは立ち入らない)。

この「太陽」の話は「ポケモンSV」で回収すると思っていたのだが、アテが外れてしまった。「SV」のDLC発売前は円盤のポケモン(=テラパゴス)が怪しいと思っていたのだが、どうやらまた違う話のようだ。この「太陽」の回収が「Z-A」でなされる期待をもっているのだが、それを補強する要素はないだろうか。

蓋し、ポケモン世界における「太陽」は複数存在する。カロス地方にも「太陽」と関係しそうな要素がある。ポケモンにおける「太陽」について、思いつくことを述べておきたい。


太陽っぽいポケモン

「太陽」と称されるものは、ポケモン世界である以上はやはりポケモンが第一候補になるだろう。太陽に関係するポケモンは、わかりにくいものを含めればそこその数があるだろうから、ひとまずわかりやすいものを挙げてみたい。


エーフィ

ぶんるいは「たいようポケモン」。昼になついたイーブイをレベルアップさせることで進化する。「ポケモン金・銀」から導入された時間の概念に合わせて登場したイーブイの進化先である。


キマワリ

こいつもまごうことなき「たいようポケモン」。太陽というより向日葵でしかない気もするが、晴れ+トリル下では太陽神なので無問題か?
真面目に考えるなら、日差しをエネルギー源とし、太陽を追いかけて移動する習性を指してこう呼称していると考えるべきだろう。

最近では「ポケモンSV」におけるボウルタウンのジムチャレンジや、ジムリーダーであるコルサの芸術作品「投げやりのキマワリ」が記憶に新しいかもしれない。


ソルロック

太陽といえばこいつを連想する方も多いと思われる。見た目は太陽を模しているし、図鑑説明でも「太陽の分身」という噂が紹介されている。上記二体と違い、ぶんるいは「いんせきポケモン」で、対となっているルナトーンも同様である。

最近では、剣盾のレイドバトルNPCのハズレ枠になっているせいであまり良い印象を持っていない方もいるかもしれない。

 ・ソルロックと「おやじ」

さて、こいつが登場するゲームのイベントとして特筆すべきなのが、「ポケモン サン、ウルトラサン」におけるウラウラ島ハイナ砂漠のおやじイベントである。

・殿堂入り後に解放される
・トリガーとなるソルロック(ムーン版はルナトーン)が作中で入手不可能
・ハイナ砂漠が迷路となっており立ち入るのが億劫になりがち

なことから、イベントの存在を知らなかった方も多いだろうが、一度見た方ならそのユニークな内容を覚えている方も多いだろう。

ざっくりした内容は、記憶をなくして砂漠にたたずむおやじにソルロック(ルナトーン)を見せると、ソルロックから力をもらって記憶を取り戻し、主人公に感謝しながら宇宙へと飛び立っていく、というものである。その際に「たいようのいし」(ムーン版は「つきのいし」)をくれる。トリガーとなるポケモンなどが違うだけで、おやじの発言は両バージョンとも同一である。

本編のストーリには一切関係ないもので、首を傾げた人も多いだろうが、おおよその事情は察しが付く。

ポケモン世界で怪しい力を授けるあまたのおやじとくれば、候補は一つに絞られる。
彼はおそらく「ポケモンX・Y、ΩRαS」に登場したキズナおやじが主人公に渡してくれる「Oパワー」の力の源となった人物なのだろう。

自身を「おやじ」と名乗り、公式でも「おやじ」と称されることからほぼ間違いはないだろう。
キズナおやじの口癖である「オウッ!」を意識した発言だろう
わざわざ二回も同じような発言をしている


これに関しては「太陽」というキーワードより、「いんせきポケモン」ソルロック・ルナトーンがもたらした「Oパワー」の源泉「ほしのこどう」の存在を示唆したものとして考えるのが自然かもしれない。ただし、この「ほしのこどう」がふるいポエムに語られる「太陽」と同じ力である可能性もあるし、「Z-A」で何かしらの伏線回収がなされるものとも考えうる点には留意すべきだろう。


ウルガモス

イッシュ出身の「たいようポケモン」。

イッシュ地方の古代の城最深部においてシンボルエンカウントするため、伝説ポケモンと思った方も多かったポケモンだろう。
イッシュチャンピオンだったアデク(ついでに孫のバンジロウ)の相棒枠でもあり、そうした印象の深いポケモンでもある。

これに加え、最近パルデアの大穴で確認された”古代のウルガモス”ことチヲハウハネ、あるいは”宇宙人が操るUFO”ことテツノドクガと、古代・未来の両方でパラドックスポケモンのモデルとなっているのも気がかりだが、これらはパラドックスポケモンの謎が未回収となっている現状では詳細不明というほかない。

こいつに関してはいろいろな考えをお持ちの方があるだろうし、ここでは私が気にしていることを少々拾っていきたい。

 ⅰ)図鑑説明


「ポケモン ブラック、Y、αS」の図鑑説明では、

火山灰で 地上が 真っ暗に なったとき ウルガモスの 炎が 太陽の かわりに なったという。

と書かれている。

また、「ポケモンBW2」の図鑑説明では、

太陽の 化身と される。寒さが 厳しい 冬に 現われ 震える ポケモンたちを 救った。

とあり、寒さに弱いイッシュ地方で信仰の対象とされていた所以が察せられる記述になっている。第七世代ころまでの図鑑説明は、ウルガモスはすごいポケモンだ、という論述の方針が一貫している。

これに対し、最近の作品での図鑑説明はやや毛色が異なってきている。
「ポケモン ソード」の図鑑説明は、

炎の りんぷんを 振りまき 火事を 起こすとも 寒さに 苦しむものを 救うとも いう。

さらに「ポケモン スカーレット」の図鑑説明は

暑い 土地では 燃える 体は 嫌がられるが 寒い 土地では 太陽の化身 と 崇められる。

という記述がある。温暖な地域では、ウルガモスが必ずしも歓迎されないという側面を指摘していて興味深い。寒冷地であるイッシュの図鑑説明の記述に少なからずバイアスがかかっていることを示唆している。

同じく「ポケモン バイオレット」の図鑑説明は

炎の りんぷんを まき散らす。 危険なのは 高熱よりも あたりの 酸素が なくなること。

と書かれる。こう考えると厄介者にしか見えなくなってしまう。ジニア先生はウルガモスが嫌いなのだろうか?
(メタいことを言えば、当初シンボルのみの登場だったのが、最近の作品で一般ポケモンと同じような扱いになっていることを考慮している記述だろうと思うが。)

ともかくこうした記述から、最近のゲーフリはウルガモスを一般ポケモンとして扱おうとしている意図を読み取ることができるだろう。


 

 ⅱ)アデクと「コダイノエイユウ」


ウルガモスと直接の関係はないが、序で「LEGENDS アルセウス」に触れたからには、このことも指摘しておかなくてはならない。コンゴウ・シンジュ集落の住居に飾られている人物の絵である。冒頭で掲げた「ふるいポエム20」に登場する「太陽」をこの人物に比定する考え方もある。

明らかにアデクそっくりである

この人物が何者かは作中で明言されることはないが、コンゴウ団・シンジュ団の両者が伝承していることからして、ヒスイの民がコンゴウ・シンジュの二団に分かれる前、すなわち古代シンオウ人と呼ばれる人々がいたころにまでさかのぼることが推察される。

それはおそらく、コンゴウ団のヨネがちいさいころに聞いたという昔話に登場する「英雄」と一致しているはずである。

ヨネのゴンべをやっつけた後にこんな発言を聞ける

「英雄」と呼ばれる人物は、アルセウスが言及した「コダイノエイユウ」とも関連するだろう。


このアデク似の人物について作中からわかることはこれくらいであるが、なぜイッシュ地方の人物であるアデクに似ているのかなお疑問が残る。ヒスイの「コダイノエイユウ」は、シンオウ神殿にまつられる10のポケモン(ヒスイ各地のキング・クイーンとライドポケモン)を従えていたはずである。ヒスイ地方にはウルガモスは生息していないし、アデクらしい要素はそう多くない。
しいて言うなら「ポケモンB・W」におけるアデクはイッシュチャンピオンとして人々から尊敬の念を集めていた節があり、民衆のリーダーというイメージは強い。

イッシュにおける「英雄」といえば、レシラム・ゼクロムを思い浮かべる方も多いだろうが、その元ネタと思われるローマ建国神話のロムルス・レムスと、シンオウ神殿やカミナギ寺院から見て取れる古代シンオウ人やその文化が古代ギリシア・ローマをモチーフにしていることにも注意したい点である。トルネロス・ボルトロス・ランドロスの存在など、他にもシンオウ地方とイッシュ地方との関連を示す伏線が貼られていることも踏まえ、「Z-A」を含めた今後の作品での回収が期待される。


次稿に続く

想定以上に記述が長くなったので、続きは稿を改めて論じることにしたい。


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