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演技で拍手を起こす為に


本題の拍手を起こすテクニックや理論の前に1つ問いたい。

あなたのマジックに拍手は必要か?


ぼくのマジックには必要ではない、ぼくはそう考えている。

拍手をするかどうかは極力お客さんの自由意志に任せたいし、感動や感情の表現方法は拍手以外にもある。

えーっ!と声をあげたりほぅ……とため息を吐いたり、果ては涙を流すなどその場その場でその人にとってのベストな選択肢は変わるものである。

しかしそれでも拍手を起こす事、もっと具体的に言うなら拍手を起こすための動作は必要、とぼくは考える。

それによって拍手が起こるかどうかは重要ではないのだ。

ここまで読むと拍手を起こそうとする動作は必要なのに拍手は起きなくてもいい?と思うかもしれない。

ナンパ記事を読んでいて『女の子を落とすテクは使うけど女の子は落ちなくてもいいんだよ』と言われれば、金と時間を返せと言いたくなるのもわかる。

が、これはマジックである、そして目的は拍手を起こす事ではなく、いい演技をする事、ひいてはお客さんに楽しんでもらう事である。

拍手はあくまでも手段であり目的ではないのだ。

特にぼくの場合は店で演じるのがメインだったというのもあってこの傾向が強いので拍手は必要ではないという結論に至った。

女の子は落とせないけどせっ○すはできますよ、と続くならその記事はナンパ記事としては優秀なのである。

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では

いい演技に拍手を起こすための動作が必要な理由はなんだろうか?

ここを考えると何をすればお客さんが拍手をしてくれるのか(しやすいのか)がわかる。

自分がマジックを見ていて拍手がしやすい演技としにくい演技を見た事はあると思う。

特にFismのステージ上位入賞者の演技なんかはわかりやすい、こちらが拍手したいと思うタイミングで演者がポーズを決め曲が最高潮になり、惜しみない拍手を贈るための間が取られている。

彼らのアクトで拍手がしやすいのは

①拍手をするに足る充分な現象
②拍手をしてもいいとわかる起点(ポーズ)がある

他にも細かい要素はあるが基本としてこの2つがしっかりと計算されアクトに組み込まれているからだろう。

そしてこれらが組み込まれるタイミングが演技の中でひとまずの終わりや、ラストの観客の感情、感動がピークとなる部分だ。

その部分に拍手を起こす為の起点、いわゆる終わった感を出す事で観客はため込んだ感情を演技の進行を邪魔する事なく拍手という形で吐き出すことができる。

逆に上の2つがしっかりしていないとどうなるか

例えば①が不足している時。

クロースなら序盤の軽く消した流れのワンコインバニッシュで拍手を求められても、観客の中にはまだ拍手をしたいという気持ちがないから微妙な空気感の微妙な拍手になる。

②がない時。

凄いことが起きて拍手はしたいが、拍手した瞬間演者が次のセリフをはじめていてその邪魔をしてしまったら…周りの人に恥ずかしい人と思われる、という恐怖が拍手を踏みとどまらせる。

吐き出したい感情がないのにそれを強要されるか、吐き出したい感情はあるのにそれをさせてもらえない、どちらにせよフラストレーションが貯まるのは明確だ。

人間は、美味しい料理を食べたらシェフを呼んで感謝を伝えたいように、良いものを見たら自分は感動したと伝えたいものなのだと思う。

そしてその感動したという感情を他者と共有したい、感情の発露や表現が他の人と同じだと一体感が生まれ嬉しくなる、それこそがライブならではの楽しさというものになる。

だから拍手の起点を作ることは、演技のメリハリを作るため、そしてお客さんたちに感情の共有というもうひとつの楽しさを提供する為に必要なのである。

長々と書いたがここでやっとクロースにおける拍手を起こす為のテクニックの紹介にうつろう。

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1.お願いしちゃう☆

もっとも簡単でもっとも確実な手法、『拍手のお願い』である。セリフの中に「これが〇〇だったら…大きな拍手をお願いします!」などシンプルに言ってしまう、100%拍手されます。

これでもし拍手されなかったら相当にヤバい、ラブホテル入ってキスと前戯をしたのに挿入を拒否されてるのと同じ、めちゃくちゃち○こ臭いとかそういうレベル。

その演技は致命的な欠陥を抱えていた可能性が高いのですぐさま問題点を洗い出しましょう。

注意点として、この手法は確実性の代わりに拍手したくなくても拍手させるという側面も併せ持っている。

ので、使うにしても最初の一回に留めておくのが無難、ひとつひとつのマジックの終わりに毎回「拍手をお願いします!」なんて言われるとウザくなるしお願いしないと拍手をもらえないマジシャンという評価を下される事になる。

変化球として丸山真一氏の「拍手が鳴り止まねーよ!」というセリフを紹介しておこう。

これは拍手が起きてないシチュエーションで言うことで、拍手しろよ!というのをギャグテイストに伝える優秀なセリフだが、氏曰くそれでも拍手が起きなかったことが1度あるらしい…何か致命的な欠陥を抱えてるのかもしれない、頭に。

2.手をパンッとたたく

これはデビットストーンがレクチャーで解説していた手法で、ひとつのマジックの終わりに両手でパンと音を立てる事で、音によって終わったという区切りを示す事と、拍手する時の最初の動作を演者がする事で続きを観客に促すことが出来る。

直接お願いしてるわけではないので確実性は無いが、したくない拍手を強要することのいやらしさもなく、演技の区切りであることを示すという目的はしっかり示せるのでぼくはお気に入りの手法である。

似た例として『当たったカードを指先に持ってデコピンする』や『プロダクションしたものを机にドンと置く』などがある。

どちらも音をたてることで起点とすると言う意味では有効な手法だが、カードデコピンはなんかカードを大事に扱ってない感がして好きじゃないのでぼくはやらない(あくまで個人の感想です)しボトルプロダクションしたボトルを机に強めに置くのも(それ机痛めそうじゃね?)という不安があるのでマットの上や、明らかに痛めても大丈夫な机(自分の店の机)とかじゃない限りは他の手法を選ぶようにしている。

3.ドヤ顔をする

なんか凄いことしてドヤ感をだす。

実際には表情じゃなくてもドヤ感が出ればそれでいい。

人がドヤ顔をする時は何かをし終わって『どうよ?俺凄いだろ?』というアピールなので終わった感を出したいという拍手の起点を作る目的に合致する。

もちろん演者のキャラや空気感に左右されるが許されるのであればギャグテイストの面白さも加わる。

4.一歩下がる

これはぼくが店に入った初期に店長に教わった事だが、重要な場面では一歩前に出て客に近づき、終わったり雑談やトークのタイミングで一歩後ろに下がって喋る。

マジシャンの立ち位置で客の集中力をコントロールするテクニック。

実際に道具を机に置いて一歩下がると確かに何も出来なさそう感が出る。

何もできない=終わった感を出せるのでこれ単体で拍手を引き出すほどではないが他の手法の底上げとして組み合わせるのに良い手法。

参考までにぼくの演技映像です、2の手を叩くと3のドヤ顔をやっています。

他にも声のトーンや、体の開閉、ありがとうございますのセリフや机をトントン叩く(これはぼくの先輩であるにゃほ氏の技)などいくつか同時に使っていますが終わった感は出せてるんじゃないかなと思います。(映像では切れていますがこのあと拍手を頂いてます。)

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他にもまだまだ手法自体は沢山あるがひとまずどのシチュエーションでも使えるかつ簡単な4つを紹介させてもらった。

もしまだ試したことがないものだったならぜひ演技に取り入れてみて欲しい、が、気をつけて欲しいのは①拍手をするに足る充分な現象という条件をきちんと満たした上でやる事だ。

お客さんにしたくもない拍手を強要するマジシャンにはならないで欲しい。

だからと言って一概に拍手の強要が悪であると断じるのもやめて欲しい。

例外として営業マジックや大道芸など一部のシチュエーションにおいては強要することも許容範囲ではある。(営業では拍手の量がクライアントへのわかりやすいお客さんの満足度アピールとなり次の仕事につながる、大道芸などは拍手が起きていると人が集まるので、という別種の目的があるからだ。)

そういったものをメインとする人にとっては最初の問いは『拍手は必要である』となるかもしれない。

だからこの記事を読んだ人には脳死でこうするのかこれが正しいのかと受け入れるのではなく、自分にとってそれは必要なのか?正しいのか?取り入れるべきか否か?を考えて欲しい。

久々の投稿となりましたが少しでも参考になった面白かったと思ってもらえたなら幸いです、次がいつになるかはわからないですが、また次の記事でお会いしましょう。

P.S
コンテストの客で何があろうと絶対拍手しない審査員気取りの犬は、シンバル叩く猿のおもちゃでも眺めて拍手の仕方を学べ。


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