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裕太のこと②

子供の頃、誰でも一度や二度はイタズラをする。
イタズラは必ず大人に見つかり、怒られるのが世の必定だ。

妖怪ば○あと恐れられた渡辺の婆ちゃんが、丹精込めて育てあげた近所のコスモス畑。
前を通るたびに、いつかTVで見た「花のトンネル」を作るのにお手頃な物件だと、かねてより目を付けていた。

僕が隊長。
怖がる裕太と鼻を垂らした裕太の妹が隊員。
妖怪はびこるコスモス畑へいざ行かん。
TVで見た花のトンネルは、カラフルな花が沢山編み込まれた結構な代物だったが、こちらは材料が限られている。
量より質で勝負だ。

始めてみると、作り方がよく分からない。
仕方ないから、手当たり次第コスモスをかた結びする。ええいままよ。

怖がって半泣きの裕太。笑う鼻垂れ。
「もうやめよう、帰ろう」
と裕太が泣き、僕も段々怖くなる。
いよいよ本泣きの裕太。笑う鼻垂れ。

イタズラの犯人がバレるのは何故だろう。
日本の治安も捨てたものではない。
鼻垂れ隊員による
「兄ちゃん達、コスモスで遊びよったよ、ウフフ」
という背信行為により、夜には犯罪の一部始終と下手人が明らかになった。

僕は親から吐くほど怒られた、というか吐いた。
後にも先にも、怒られて吐いたのはあの一回だけだ。
いや、この先もう一回ぐらいあるかもしれない。

翌日、裕太と一緒に婆ちゃんに謝りに行った。
ちょっと泣いてる婆ちゃんを見てたら、なんだか申し訳なくて僕も泣いた。
「ごめんなさい、もうせんき、ごめんなさい。」
泣いてる僕らに婆ちゃんはカンロ飴をくれた。
撫でてくれた手はシワシワで、大人のおっちゃんみたいに固かった。

帰り道、カンロ飴を舐めながら
「もう悪い事はせんめえな」
と裕太と誓った。

このしばらくのち、畑にいた婆ちゃんにネズミ花火を投げこむのはまた別のお話。



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