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ステンレスにローバルを塗って、異種金属接触腐食を防ぐ。

『塗装された鉄にステンレスの部品が付いています。異種金属接触腐食が起きる気がします。ローバルを塗りたいですが、鉄は塗膜を剥がすのは困難です。何とか異種金属接触腐食を抑えることはできないでしょうか?』

この質問にお答えします。
『ステンレスにローバルを塗ると、ステンレスによる異種金属接触腐食作用が緩和されるので、ステンレスに塗ることをお勧めします。もちろん、鉄にも塗った方がより高い防錆効果が得られます。』


異種金属接触腐食が起きる状況

質問にあった「塗装された鉄にステンレス部品が取り付けられた状態」とはどんな状態かを考えてみます。例えば、下写真のように塗装された鉄扉にステンレス部品が付いた状態です。

塗装された鉄扉に取り付けたステンレス部品周辺が発生

鉄扉の塗装部でさびは発生していないのに、ステンレス部品付近だけでさびが発生しています。これが異種金属接触腐食(ガルバニック腐食)です。

通常、ローバルは鉄に塗装します。このケースでそれを実践するとなったら、鉄の扉の塗装を剥がしてローバルを塗ることになります。正直、それは現実的ではありません。

異種金属接触腐食(ガルバニック腐食)ってどういうこと?

1. ナイロン製ボルトが付いた板には目立つ赤さびが発生していない。

一般的なさび止め塗装を施した鉄の板にナイロン製のボルトを取り付けます。これを水平に置いて、屋外に放置します。太陽光や雨風にさらされて1年経過すると、下の写真のようになります。

ナイロン製ボルトを取り付けても目立つ赤さびは発生しない。

塗膜下でさびが発生していそうな傾向が見られますが、目立った赤さびは発生していません。

2. ステンレス製ボルトを取り付けると、赤さびが発生した。

ナイロン製ボルトをステンレス製ボルトに取り換えて、同様に屋外に1年間放置します。

ステンレス製ボルトを取り付けると、異種金属接触腐食が発生する。

ナイロン製ボルトと異なり、ステンレス製ボルト付近で赤さびが発生しています。ボルトの素材がステンレスに代わったことで、この腐食は異種金属接触腐食であると判断できます。

異種金属接触腐食を防ぐには?

3. ステンレス製ボルトに一般用さび止め塗料を塗っても、異種金属接触腐食は防げない。

ステンレス製ボルトに鉄の板と同じ塗装(一般用さび止めペイント+ラッカー)をします。同様に屋外に1年間放置します。

ステンレス製ボルトに一般用さび止めペイントとラッカーを塗っても、異種金属接触腐食が発生。

赤さびの量が減ったりするかなと思っていましたが、塗装をしない時と変わらない感じで赤さびが発生しています。一般用さび止めペイントを塗装しても異種金属接触腐食は防げませんでした。

4. ステンレス製ボルトに ローバルを塗って、異種金属接触腐食を防ぐ。

今度はステンレス製ボルトに“塗る亜鉛” ローバルを塗ります。同様に屋外に1年間放置します。

ステンレス製ボルトに“塗る亜鉛”ローバルを塗ると異種金属接触腐食が発生しない。

ステンレス製ボルトにローバルを塗ることで、赤さびが発生しなくなりました。ローバルを塗ることで異種金属接触腐食、ガルバニック腐食を防ぐことができています。ボルト付近の塗膜の方が、光沢感が残っているようにも見え、ボルト周辺にもローバルの防錆効果が及んでいそうに見えます。

この結果から、ステンレスにローバルを塗ることで、異種金属接触腐食が防げることがわかりました。

異種金属接触腐食には犠牲防食を。同じ現象だからよく効く。

2つの金属が接触していると、さびやすい金属が金属がさびてから、さびにくい金属が金属がさびるという性質があります。
鉄とステンレスがくっついていると、ステンレスよりも鉄がさびやすいので、鉄がさびてからステンレスがさびます。鉄がさびるのは都合が悪いのでこれは“異種金属接触腐食”と呼びます。
一方で、鉄と亜鉛がくっついていると、鉄よりも亜鉛の方がさびやすいので、亜鉛がさびてからでないと、鉄はさびません。鉄がさびないのは都合が良いので、これは“犠牲防食”と呼びます。異種金属接触腐食と呼んでも間違いではありません。
異種金属接触腐食と犠牲防食は基本的には同じ現象です。鉄とステンレスがくっついていて鉄のさびが進んでしまう状況でも、よりさびやすい亜鉛をくっつけると、鉄ではなく亜鉛がさびることになります。この犠牲防食によって、鉄を守ることができます。
異種金属接触腐食と犠牲防食は同じ現象なので、よく効きます。「目には目を歯には歯を」ではありませんが、「異種金属接触腐食には犠牲防食(異種金属接触腐食)を」なのです。

ステンレスにローバルを塗ろう。

最初に挙げた異種金属接触腐食の事例では、こんな感じに塗ってみました。

ステンレス部品にローバルを塗って、異種金属接触腐食を防ぐ

ローバルはあくまで塗膜なので、物理的強度はステンレスやめっきには敵いません。そのため、稼働部や傷が入りそうなところには塗装していません。取り付けるステンレス部品すべてを塗る方が望ましいですが、一部分を塗るだけでも異種金属接触腐食作用を緩和させる効果はあると思います。犠牲になる亜鉛は多い方が良いので、膜厚を厚く塗ったり、できるだけ大きい面積塗った方が良いです。
ローバルの光沢感のない質感では違和感が出てしまうので、磨いて金属光沢を出しています。

まとめ

異種金属接触腐食を防ぐには、鉄とステンレスを接触させないことが一番効きます。ただ異種金属接触腐食で困っている場合は、すでに鉄とステンレスが接触していて、両者を離すことは困難だと思います。
その場合は、ステンレスにローバルを塗るということで、問題が解決できます。さびないステンレスにローバルを塗ることに意味がないように感じるかもしれませんが、ステンレスの電気的な攻撃を他に出させない効果があります。


補足

5. 板にもボルトにもローバルを塗ると、より高い防錆効果が得られる。

鉄の板にもローバルを塗ると、より良いさび止め効果が得られます。

鉄にもステンレスにもローバルを塗ると完全に守れる。

1から4までに挙げていた写真では、取り付け時に塗膜に傷が入ってしまっており、取り付け部位にてさびが発生していたりしましたが、ローバルの塗膜では、少々傷が入ってもさびは発生しにくいのが大きな特徴です。

(記事担当:MTMTH)


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