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Let’s Talk About Roya ー La Royaについて

こんにちは、ROUTEMAP COFFEE ROASTERSの松村です。

普段気軽に楽しんでいる1杯のコーヒー。その背景には、日本語では届かないコーヒー生産の現状や問題がまだまだ多く存在しています。

今回はそのうちの一つ、各生産国でこれまで多くの被害をもたらしてきた『葉さび病(Leaf Rust)』…通称 "La Roya" について、生豆輸入販売パートナーであるカナダのインポーター 【Semilla Coffee】がSNSにて発信した内容を日本語訳し、記事にしてまとめました。

これまで要所でこの葉さび病についてはこちらのnoteでも発信してきましたが、Semillaでは生産地からヒアリングした「今」の声を情報にまとめ、逐一発信されています。

原文での情報からご覧になりたい方はこちらからぜひフォローしてみてください

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Part1/ La Royaとは

“コーヒーの葉さび病は、古くから存在する危険な病害である。”

コーヒーの葉さび病はコーヒー業界ではよく知られているものの、小規模農家にとってどれほど深刻な影響を及ぼすのか、またコーヒー全般にとってどれほど差し迫った脅威なのかを理解するには難しい存在です。

今回、La Royaの歴史と最近の動向、小規模農家への影響、そしてこの病害に対処するために私たちが生産者と行っているサポートの内容についてお話します。

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La Roya…ラ・ロヤ/コーヒー葉さび病は、世界中のコーヒー生産に多大な影響を及ぼしている葉面病です。

Hemileia vastatrix(ヘミレイア・ヴァスタトリックス)というカビ菌によって引き起こされ、葉が落ち、コーヒーチェリーの収穫量が減少し、最終的にはコーヒーの木そのものが枯れてしまいます。

この病気は1878年にスリランカのセイロンで発見され、その1世紀後に南米に伝わりました。そして1970年頃にブラジルで最初にLa Royaが発生し、その後北のコロンビアや他の国々に広がっていきます。

南米でのRoyaの伝染経路

中米では1980年、グアテマラ、コスタリカ、エルサルバドルなどで最初の感染が確認されました。

この病害の影響は非常に顕著であったため、各国の政府はすぐに対策に乗り出していきます。特にブラジルでは新しいさび病耐性品種の開発に着手しているところです。

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これらの初期の発生は冷戦時代に起こったため、Royaが深刻な収入減につながり、“カンペシーノの反乱”や“共産主義革命”を引き起こすトリガーになるのではないかと懸念されていました。

中米でのRoyaの伝染経路

しかし、最悪の事態は2012年に発生し、壊滅的な葉さび病の蔓延によってアメリカ大陸のコーヒー生産量は激減。

コスタリカ、ホンジュラス、グアテマラは非常事態宣言を発令し、グアテマラの小規模農家は平均71%の生産量をRoyaによって失い、2013年の中米のコーヒー総生産量は、2011年から2012年にかけて生育中のコーヒーの木々のうち16%にまで減少してしまいました。

なぜアメリカ大陸でコーヒー産業がこれほどまでに深刻な打撃を受けたのでしょうか?

調査でもまだ明確には示されていませんが、考えられる理由としては、

・農園管理や資源へのアクセス
・葉さび病防除のためのベストプラクティスに関する情報の不足(アクセスが困難な地域の小規模農家ほど情報が届かない)
・菌自体の変化

さらには植民地主義者が競争相手への妨害行為のために生物兵器として流用・使用したという仮説などもあるといわれています。


Part2/ La Royaがコーヒー農家に与える影響

La Royaの影響について、また小規模農家たちがどのような苦境に立たされているのか?

そしてこの病害に対処するためにSemilla Coffeeがどのような取り組みを行い、被害を防ぐ希望を見出しているのか、小規模農家たちの声と共に解説します!

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写真はグアテマラ/アドルフォ・ガルシアの農園にあるコーヒーの木。

アドルフォと息子のルイスは、グアテマラのマタケスクイントラにあるカフェ・コリス・レジステンシア・グループの一員で、世代を超えた小規模農家であることに加え、自分たちの土地での有害な採掘プロジェクトに反対するシンカ抵抗運動の活動メンバーでもあります。(※詳しくは以下の記事をご覧ください)

アドルフォは近年Royaの対策に苦戦しており、2月にSemillaのチームが見て回ったこの土地では、ほとんどすべての木が葉も実もない状態でした。

その結果、収穫はほぼ完全に失敗に終わり、この土地からの年間収入はゼロになってしまったのです。

Royaの壊滅的な影響は世界中のコーヒー生産者を苦しめ続けており、アドルフォと同じ問題を経験する人が増えています。

最も深刻な影響を受ける栽培条件は“標高の低い場所”であり、暑さと日照のためにほとんど手に負えなくなっている状況です。

しかし、この病気は高い場所に忍び寄り続けており、標高1700m以上の農園では、ほんの数年前まではほとんど見られなかった病気が徐々に発生しています。

植物が古く、管理があまり行き届いていない農場ほど被害が大きく、資金やベストプラクティスに関するトレーニングを受けられない小規模農家が、このような大規模な病気の発生を食い止めるのに最も苦労しているようです。

葉さび病には確立された治療法はありませんが、殺菌剤での治療は可能です。研究によれば、特に標高の低い地域では、殺菌剤による治療よりも、肥料を与えて株を強くする方が、より高い効果が期待できるといいます。

しかし、肥料やこのような化学処理剤の価格は高く、近年価格は上昇の一途をたどっています。

数年前にコロンビアにRoyaを蔓延させた原因となるこのコーヒーの低価格と高コストの投資の組み合わせは、まさに「完璧な嵐」であると研究者たちから言われている次第です。

Royaの発生を促進する気象条件への気候変動の影響と相まって、多くの小規模農家はこの病気を存続の危機、さらには克服不可能な脅威とみなしています。

果たしてこのままRoyaの脅威によってコーヒー生産の未来は壊滅してしまうのでしょうか…?

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この危機的状況を打破する生産の将来の可能性は、Fl品種のような葉さび病耐性品種にあります。

Fl品種とは、World Coffee Researchによれば「遺伝的に離れた2つの親を人工的に交配させ、その第一世代(F1)の子孫を使用する」ことによって生まれたハイブリッド品種。

特に、さび病に強いエチオピアの在来品種であるT5296 Sarchimor種と、Landrace Sudan Rume種を交配させたH1(Centroamericano)は、素晴らしいカップクオリティを生み出す可能性を秘めており、かつ干ばつの影響に強く、収量も非常に高いため、中央アメリカのコーヒー生産者に将来の展望を提示しています。


Part3/ La Roya - 乗り越えられない障害?

あらゆる困難の中でも生産に取り組む多くの小規模農家と同じように、我々Semilla Coffeeもその困難に対して決して諦めず、共に解決策を見出せるよう努めています。

私たちは、生産者が直面する危機への対応は、彼らの今抱えている課題に耳を傾け、目標を合わせた上での協力的な行動をデザインすることから始まります。

それが “Silver Bullet”(=困難を解決する決め手)ではなく、場合によってはこれらの課題が、その規模と範囲においては達成が難しいものであることは否定しません。

しかし、私たちは物質的な変化に向けて小さな一歩を踏み出すためにできることをすることに全力を尽くしていきます。

ここでは、グアテマラとホンジュラスの生産者とともに、Royaと闘っている私たちの活動を少しご紹介します。

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コーヒーの葉さび病は、これまでも、そしておそらくこれからも、世界中のコーヒー生産者に脅威を与え続けるでしょう。

この病気はあらゆる種類のコーヒー生産者に影響を及ぼしますが、経済的余裕がなく、研修やトレーニングへのアクセスも少ない小規模農家、つまり私たちSemillaのパートナーグループと同じ規格のような生産者は、この病気によって最も大きな打撃を受けます。

私たちは彼らがこの病気に対処できるよう支援し、彼らの闘いをサポートすることを約束します。

Semilla CoffeeのPatrick(左)とグアテマラ生産者グループメンバーとのディスカッション

グアテマラでは、カフェ・コリス・レジステンシア・グループの多くの小規模農家は近年、収穫期の暑さと干ばつの増加に悩まされ、それによって威力を増すRoyaの被害に対抗し続けています。

そんな中、この地域には多国籍のバイヤーが多数進出しており、彼らはグループへ高収量・低品質の品種の生産を奨励し、スペシャルティ規格の取引では全くグループの利益にならない状況に陥っています。

そのためSemillaは、干ばつや病気に強い品種を評価し、適切な台木を確保するため、検証済みのサプライヤーから4000株のH1 Centroamericano種を共同で購入することにしました。

Centroamericanoの台木

なぜ台木の方を獲得したのかというと、確かに種子を購入する方が安上がりではありますが、その種子が正確な製品なのかどうかという信頼性においてかなり不安要素が多く、コーヒーの栽培においては検証することは非常にリスクが高いのです。

しかしながら、平均的な小規模農家にとって、1株あたり約1USドルの種子の購入は非常に高くつきます。そこで、Semillaが50%、生産者グループから50%で共同で購入することでこの負担を軽減し、コミュニティに新しい品種を導入することができるのです。

さらにこのH1プロジェクトとは別に、セミラは2022年にカフェ・コリス・レジステンシア・グループの全メンバーの土壌分析を促進しました。

これは、彼らの土壌に何が欠けているのか、どのような施肥方法が病気に対抗しながら収量を上げるのに最適なのかを明確にするための手段です。

それ以来、多くの生産者が補足的な分析を行い、今年の訪問ではそれらの分析によって農場全体の健全性が向上したという結果が見出せました。

ホンジュラスでは、IHCAFEが研究所で土壌分析を行っており、私たちの新しいプロジェクト『Sueños de Semilla』の一環として、グループに参加する小規模農家が土壌分析を受け、得られた知識から還元されるよう活動を奨励しています。

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引き続き、Semillaが発信する情報をこちらのnoteにて共有を続けていきます。

葉さび病や、それに対抗する品種のお話、ご質問もいつでも受け付けておりますので、お気軽にお問合せください🍀

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