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ignite!を終えて: 1年間のワークショップを運営して思うこと

2018年から開催してきた年間ワークショップ型プログラム「ignite!」2019年度版(2期目)の最終発表会を終えた。
ignite!は、なにかやりたい、アイデアがある、誰かとなにかに関わりたいという人が集まり、チームを作りながら1年間かけてアイデアをカタチにしていく、津田と松井で始めたプログラム。

ある方からもらった、
「会社でアイデアや企画を出して進めようとしても『儲かるの?』という声に潰されて、エンジニアとしての火が消えそう」
という悩み相談を聞いたきっかけに始まったこの年間の取り組みは、「儲かるか」「市場性があるか」よりも、「なぜやりたいのか?」という自分の中の“Why?”を探求しながら進めていく。
(ここはサイモン・シネック氏のGolden Circle理論がベース)

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ignite!の年間プロセス

具体的なプロセスとしては、
集まった参加者(年間で参加できる人に限る)が“ワイガヤ”を通じて関心ごとについて話し合いところから始まる。

1. 関心ごとに基づくアイデア発表を通じて、他の参加者から共感・賛同を得る → 仲間集め
2. アイデアのイメージ化を具体化する →  誰向け、その人にとっての価値、必要な機能 → 企画化
3. 企画のフローを描く → UXフロー作り(利用者の動作と心理の変化、必要な機能との整合性を想像し描く) → 人に見せて検証
4. 企画のプロトタイプを作る → 簡単なものでいいので作ってみる、試してみる、トライアル開催してみる → リアルな形で検証
5. 企画をより多くの人へ伝える → コミュニケーション・プロモーション企画の基礎を学ぶ → Webサイトやfacebook pageを立ち上げ、他者向け企画書を書く
6. 企画を人前で発表する → 他分野の人からのアドバイスや協力を得る
7. プロジェクトとして独り立ち

毎年どんなメンバーが参加するかも、どんなアイデアが出てくるかも分からない(進める側としてはめちゃめちゃ不安…)。また、2期目となる2019年度版からは「通年参加できる人」という条件をつけたが、全員が残る訳でもなく、今年は24〜25人いたうち2〜3人は2〜3回で来れなくなった。
それでも残った人の多くは、1年を通してチーム作りや議論を進め、実際にモノやサービスを作って試すところまで行き着くことができた。

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ignite!で伝えたいこと

ignite!ではユーザー体験を描く専用ワークシートを使ったり、企画を詰める上で様々な宿題が出たりもするが、そういったワークシートなどはいずれ古くなるし、あまり重要ではない。
ignite!で伝えたいことはなにか?というと、以下の3つだと感じている。

① なぜやるのか?という自問に向き合い、自分なりの答えを持つことで、前へ進みやすくなる。
② やってみないと分からない。そしてやめなければ失敗にはならない。
③ 1人ではできないことも仲間がいれば実現に近づく。そして仲間がいるかぎり、足取りは軽くなる。

① 答えが見えにくい世界では、人や組織から与えられる指示よりも、自分なりの問いと答えを持つ、内的な原動力を持つことが、進む上で大事なのではないか。
社会の動きやニーズとの関係性を探っていくのは、進みながらでよい。
様々なビジネスモデルを当てはめながら、関係性の構築を探ればよい。

② やってみることは当たり前だが、ここでもっと強調したいのは、やめないこと。
何かを始める時、うまくいくことに対する期待が大きすぎると、そこにとらわれすぎる上に、失敗を恐れてしまい、身動きが取れにくくなるだけ。
自分自身を過大評価せず、「想像してるよりはうまくいかないと思うけどやってみようかな」程度にとらえながら、小さく始めてみる。
そして大事なのは、例え理想通りにいかなかったとしても、やめないかぎりそれは失敗にはならない。ピボットをし続け、状況や社会の変化に応じて微修正を繰り返していけば、当初とはちょっと違った展開にはなったとしても、それは現行プロジェクトとして現在にフィットしたものになっているはずだ。
結論を急がせ「失敗だ」と言う外野は無視し、自分の問いと答えからくる原動力を糧に動き続けることが、「失敗しない」ために必要なことだと想う。

③ しかし、こうした行動も、1人ではなかなか継続しづらい。また、なにかを進める上で全ての役割を全うするのはさらに難しい。
また、社会の動きやニーズとの関係性を探るということは、他者の共感や同意、賛同を得るということでもある。
人や社会との良い関係を持てない独りよがりな活動は、いずれ袋小路につながってしまい動けなくなるだろう。しかし、活動に対して共感や同意、賛同という関係性を築ける「仲間」を得ることができれば、自らのフットワークを軽くし、役割を分担できる。
そして、活動を世の中に対して説明し、より広い関係性を築いていくための近道にもなる。
また、各チームの歩みを見ていても、いわゆるリーダーとなる“アイデアを出した人”以上に、そのアイデアに賛同してくれた人たちの動きはめざましいものがあった。「この人がいなかったらここまで来れなかっただろう」というような展開を目の当たりにすると、“アイデアを出した人が偉い”のではなく、それに共感・賛同し腰を上げた2番手3番手の人があってこそ、物事は実際に進むのだと感じる。
チームでは、自分なりの問いと答えを持った全員が主役なのだ。

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企業活動も個人活動も、コロナによって手段としてのビジネスが絶たれてしまう中でも、これらの3つがあるかぎりは、原動力と本質を見失わず、ピボットしながらチームで動き続けることができるはずだ。

ignite!に集まる参加者から生まれるプロジェクトでも、自分たちのプロジェクトでも、その後どのように発展するか正確に予想することはできない。どこまでやめずに進めることができるのか?仲間はできるのか?も予想はできない。自分自身、不安になることもある。
ただ、自分なりの問いと答えを持つかぎりは前に進むことができるだろう。実際にignite!に集まる参加者たちが、徐々に自分たちなりの「なぜやるのか?」を固めていく様を目の当たりにしていくと、そう感じることができる。


オンラインでの発表会と、今後について

今期の最終発表会は初のオンライン開催。
コロナウィルスの影響が出始めた2月のワークショップからオンラインへ移行したが、最終発表会はリアルな会ができるまで延期するべきかどうかも考えた。
が、結果的に98名の視聴者が集まり、各チームのプレゼンに対するコメントやその後のフィードバックを見ていると、オンラインだろうがオフラインだろうが、熱のこもったプレゼンは伝わるものだということを強く感じることができた。

今後のignite!については、しばらくオンラインで第1期・第2期の参加メンバーを中心に、これまで生まれたプロジェクトの育成にフォーカスするつもりだ。

第3期はいつ始まるのか?という質問を多く受けるが、リアルで集まれない状況が続く中、最初の仲間作りやアイデア出しをオンラインだけでやるのはとても難しいと感じている。

また、各プロジェクトに対する反響や「協力したい」という人々の声を聞いていると、いまはプロジェクトを促進させる方に集中した方が、参加者にとってもより有意義な時間になると感じている。

この1年で着火された火をより大きくし、各チームの後押しをしていきながら、お互いのチームが刺激し合う場をオンラインでも作り上げていきたいと思う。

「普段の会社の仕事では得られない、仲間と一緒に何かを作り上げる充実感を感じることができた1年だった」
「自分の中にある『なぜ?』を突き詰めていけたからこそ、これだけ多様な人たちとモチベーション高く続けることができた」
「このプロジェクトがなかったら、日常生活が代わり映えのないものになっていたかもしれない」

最終発表会を終え、参加メンバーからの感想を聞いていると、先の見えない状況の中で少し不安のあった自分の中に、また火がついたような気がした。


第1期・第2期のプロジェクトチームに入りたい・サポートしたいという方、また、今後のオンライン版ignite!においても詳しい内容を聞きたいという方は、ぜひignite!のfacebook pageへのメッセージか、森のオフィスのメールアドレスまでお問い合わせください。


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