喫煙者のレシピ(タバコを吸うに至った経緯)
タバコが嫌いだった。
小学生の頃だったかな。
たまたま電車で隣に座ったおじさんのあまりのタバコ臭さに席を離れたことがある。
街中でタバコを吸いながら歩いている輩を見れば、咄嗟に舌打ちが出そうだった。
そんな俺がいまや喫煙者だ。
喫煙者になるステップが俺にはいくつかあった。
ここには、喫煙者が出来上がるまでのレシピを書き記したい。
1.「臭いの克服」
中学も高校もヤンキーがおらず、15歳で吸ってるなんて迷信だと思っていた。
家族の中でも吸ってる人が居なかった。
そもそもタバコと触れ合う機会がなかった。
だから、吸う以前にそもそも臭いへの耐性が全くない。
俺がタバコの臭いを克服した瞬間を明確に覚えている。
それは初めて居酒屋に行った時だった。
川口駅のすぐそばだったと覚えている。
その居酒屋は全面喫煙可。
""これが居酒屋なのか!!!!""
大人になるということは酒を飲むことだと思っていたのはテレビCMのせいだろうか。
いつもうまそうにビールを飲むタレントの姿を見るたびに、俺もいつかは、、と思っていた。
大人とは酒を嗜む。そう思っていた。
一番最初に入ったその居酒屋のせいで感覚が狂ったんだろう。
"この臭いに慣れなければ酒を飲めないのか。"
当時の俺は、これを受け入れる以外に酒を飲む方法はないと考えてしまった。
あっけない諦めだったと思う。
タバコの臭いを許容するようになった。
2.「初めて吸った日」
忘れもしない。
歌舞伎町を抜けた先の鳥貴族。
喫煙者2人と飲んだのがいけなかった。
いやあいつのせいだ。
いまでもたまに飲みに行くと、いつの間にかオールする羽目になる。
その日も同じようにしつこかった。
吸うまで絶対に離してくれない。
何ラリー押し問答をしたのだろう。
「いやまじで、いっぺん吸ってみ!」
「もういいよ!吸うから!やり方教えろ」
「吸ってからさらに深呼吸してみて」
こいつ、中学時代トップレベルのアホだったくせに、このアドバイスだけは今でも的確だったと思う。
吸えちゃったんだよね。
初めての煙に少し体がびっくりしてむせたけど、それよりも
"吸えるなぁ"
って思った節がある。
俺にタバコの耐性があったのかもしれないし、タバコを吸えないのがその場ではダサい気がして見栄を張ったのかもしれない。
とにかくファーストコンタクトで、
"別に無理ではない"
そう思った。
3.もらいタバコ期
タバコを初めて吸ってみたのが、すぐそこから喫煙者になったわけではない。
要因としては、周りにタバコを吸ってる奴がそんなにいなかった。
20歳にもなればタバコを吸い出す友達もちらちら出てきた。
2ヶ月か3ヶ月に1回ぐらいだろうか。
吸ってるやつがいたら吸ってみる、そんな感じが1年半続いた。
この時期は、コンビニのレジで、
"◯◯番お願いします。"
これさえ言わなければ本当の喫煙者ではない。
そう思っていた。
この一線が、俺と喫煙者を隔てていた。
銘柄とか、どこにどんなタバコがコンビニに置いてある、か当時は見なかったし、そもそも気にもならなかった。吸いたいとも本当に思ってなかった。
友達との付き合いで吸えるなら吸う。
それ以上はなかった。
もし今後仲良くなりたい人がタバコを吸っていたら、そういう付き合いもできるからメリットもある、そんな風に思っていた。
付き合いで"吸える"ぐらいは別に悪いとは思わ無くなった。
感覚がだんどんバグってきていることにまだ気づいていない。
そもそもタバコ嫌いだった自分がこんなことを思っているから。
都合のいい言い訳だ。
4.喫煙者前夜
いつぞやの年末。
忘年会というには穏やかな宅飲みだった。
「タバコテイスティングしよう!」
なんでそんなことを友達は言ったのだろう。
この頃の俺は、タバコを持っている人がいたら吸うぐらいだったが、もうタバコを吸うことへの抵抗がすっかり無くなっていた。
めちゃくちゃにストレスが溜まった日には、
"タバコ吸いて〜〜"と思ったことも。
でもぜんぜん踏みとどまってはいた。
日常的に吸いたいとは全く思わなかったから。
友達がコンビニで銘柄の違うタバコをいくつか買う。
4箱だったかな。
結構きついタバコから少し甘いタバコだったり。
"友達の金だしなぁ、一本ずつ試してみるのも楽しいだろう。"
この考え方はもう喫煙者に片足以上は突っ込んでたと思う。
「これ結構きついわ」
「頭くらくらする、こんなのよく吸えるなぁ」
いろんなタバコを吸ってみるのは本当に興味本位だった。
知るに越したことはない。
友達は終電で帰った。
翌朝のことである。
机にタバコの箱が4箱置いてあった。
"あいつ、なんで忘れてったんだよ"
今までに友達が家にタバコを忘れて行ったこともあったが、捨てることに躊躇はなかった。
1人で吸うことは絶対にないから。
"4箱。"
4箱を捨てる気にはなれなかった。
"まぁ、、気長に吸ってみるか。"
"いろんなタバコあるし、気分変えながら"
自覚はなかったが今思えばここが俺の喫煙者人生の始まりだったと思う。
年も明けて、1月が終わる頃だろうか。
4箱あったタバコがいつの間にか無くなっている。
"あれ、待って。どうしよう。タバコない。"
ここで初めて喫煙者としての自覚が芽生えた。
もうタバコなしでは生きれなくなっていた。
気が向いた時に手にしていたタバコが、いつの間にか、なくてはならないものになっていた。
もらいタバコをしていた時期に思っていたことを思い出す。
"自分でコンビニの前に立ち、番号さえ言わなければ。"
少し考えたけど、衝動に抗えなかった。
そこからの記憶は全くない。
初めて買ったタバコの銘柄すら覚えてない。
衝動だったんだと思う。
理性との争いがあれば覚えているはずだ。
5.喫煙者完成
もう3、4年吸った。
量が減ることはなかった。
辞める理由がないから辞めない。
健康?知るか。
臭い?知るか。
金?知るか。
喫煙者は都合のいい理由をつける。
喫煙者は喫煙者とつるむ。
当たり前になってしまった。
タバコの匂いがダメなんて、そっちの感覚がちょっとおかしいんじゃないか、、そんな横暴な考え方すら少しある。
いつしか、友達からは
「お前が吸うと思わなかった」
から
「お前、おっさんみたいな吸い方するな」
に変わった。
どっぷりタバコの煙に肩まで浸かっている。
いまならわかる。
吸わないに越したことはない。
この文を読んだ非喫煙者は、俺をたどらないように、この喫煙者レシピを破り捨てて欲しい。
家に4箱タバコを忘れていった話を本人にしたことがある。
「お前のせいで俺、喫煙者になったわ」
「あれは、お前を喫煙者にするためにだな..笑」
たまたま忘れたのか、故意だったのか。
本当のところはわからない。
悪い友達を持ったものだ。
やれやれ。
だけど、それに流されここまできた俺には、情状酌量の余地はないだろう。
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