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否定から入んなよ

太田裕美と言う歌手の「木綿のハンカチーフ」と言う曲をご存知だろうか。
結構明るい曲調だが、思いっきり失恋ソングである。
相当古い曲なので、ご存じない諸氏もいらっしゃるだろう。

歌詞は手紙のやりとりのようになっている。
都会に出た男と、田舎で男の帰りを待つ女だ。
女への贈り物を都会に求める男と、往時のままの男の帰郷を望む女。
徐々に都会に染まっていく男と、男の無事を祈る女。
やがて男は都会で生きていく事を決意する。
それが意味する物は一つ、遠距離恋愛の破局である。
女は男にただ一つ、涙を拭くハンカチを要求するのだった。

簡単に言うとそんな歌だ。
これだけ聞くと、どうにも男が悪いんじゃないかと思ってしまう。
しかし、歌として聞くと疑問が浮かんでくる。

男は終始、女の為に何かしようとしている。
贈り物を探そうとしたり、指輪や写真を送っている。
それに対して、女が送る手紙の始まりはいつも同じだ。
「いいえ あなた」。台無しである。

恋人を想い、何をしてもいいえと否定される。
さらには昭和時代の歌謡曲特有の熱に浮かされたポエムで煙に巻かれる。
明確な要求は破局確定時のハンカチのみ。これでは男は報われまい。

この「否定から入る」人間は、現実的に多い。
やらかしたとき「ちゃうねん」から入る奴。
提案したとき「えー、でもそれさー」から入る奴。
これって積み重なると「どうせお前、俺の話聞く気ないんだろ」となる。
すると優先度は別の人間の方が高くなり、否定から入る奴とは疎遠になる。
これは俺の予想だが、木綿のハンカチーフに出てくる男は
都会で「せやなー」から入る女と懇ろになったに違いない。アカネチャンカワイイヤッター!

この歌から学べる物は一つ。否定から入るな。
その言葉を送った者の心境はどうあれ、否定から入られたら自分の言葉を否定されたように錯覚する。
「せやな」や「ええやん」から入り、「でもな」と返せ。
ワンクッション挟むだけでも、トゲトゲしさは幾分か削れる。
誰だって一旦は受け入れてくれる人間の方が話しやすいってなモンだ。

という事は、だ。
一刻も早く離れたいクレーマーや嫌な奴に肯定的な言葉から入ると引き離すのとは逆の力が働いてしまうんじゃないか……と思うんだが。
ま、それはそれ、これはこれか。
せやな、ええやんええやん。

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