あなたからもらう言葉
ここ数日体調不良で、睡眠の質も悪く、寝るたびに夢をみる。
大半が悪夢で、眠るのが嫌になってしまうほどだが、一つだけ美しい夢を見た。
その世界では言葉が統制されていた。
過去に誰かが言った、既存の言葉しか使えない。言葉のピースみたいなものが空気中を漂っていて、それを集めて組み合わせてしか会話はできず
物語などの創作もその範囲内でしか許されていなかった。
私は作家のような仕事をしていて、その制限の中でどうにか物語を書き終えることができ、大切な人に何通も手紙を送ることができた。
既存の言葉も使いようじゃないか、幸せな人生だ、と幸福感のある夢だった。
この夢を一日なんとなく反芻していた。
実は、今のこの世界もそうかもしれないな、なんて思った。
言葉が生まれてからずっと、言葉は紡がれて、交わされて、贈られて、テレビで流れて、インターネットで広まって。
SNSが出てきてからは尚更、noteにもたくさん、新しい言葉が生まれて、逆にもう誰か使ってるかもしれない表現を書いているかもしれなくて。
もう「自分だけの特別な言葉」なんてものはなかなか書けないのかもしれないな、なんて思った。
特別な言葉じゃなくても、ありきたりでも、言われる相手だったり、その言葉に込める気持ちが結局は大事なのかな。
職場で大切な仲間がどんどん退職して、辛くて寂しくてたまらない時があった。
みんな辞めようとしている気がして、誰も頼れない時があった。
そんなときにある人が言ってくれた。
「僕がいます」
こんなシンプルな、今まで漫画でもドラマでも使い回されているような言葉だけど救われた。
私にとってとても大切な存在である人が退職し、
彼自身も同じく寂しい思いをしているであろうときに言ってくれた言葉だった。
もう本人は覚えていないかも知れないが、私にはお守りのようになっている。
現実の私は作家でも何でもないけど、言葉を操る力はある。
シンプルでも、使い古された言葉でも、誰かの支えになる言葉を紡げる人でありたい。
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