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【エルデンリング】ゲール語(アイルランド語)由来の名前(2022/04/03更新)

ドーモ、マーズです。

実は私、別アカウントでアイルランドの神話をものしておりまして、そのためゲール語にちょっとだけ詳しいんですね。
ゲール語はアイルランド語とスコットランド・ゲール語がありますが、私がやっているのはアイルランド語の方です。なのでゲール語と言いながらほぼアイルランド語の話をしていますがご承知おきください。ちなみにゲール語はケルト諸語のひとつだよ。

今回はエルデンリングに出てくるゲール語由来の名前について解説していきます。
調べ始めの段階なので、新しいことが分かり次第、随時追記していきます。

確実にゲール語由来なもの

宿将ニアール(Commander Niall)

画像は英語WIKIから(以下同)
https://eldenring.wiki.fextralife.com/Elden+Ring+Wiki

宿将ニアールはソール砦のボスです。英語ではCommander Niallと書きますが、この名前はゲール語の人名Níallに由来します。最も有名なのは実在の王Níall Noígíallach(九人の人質のニアル)で、王朝Uí Néill朝の始祖にあたります。

宿将オニール(Commander O'Neil)

宿将オニールはエオニアの沼にいるボスです。O'Neillは英語のファミリーネームとしてはポピュラーなものですが、ゲール語Úa Néillに由来し、その意味は「Níallの子孫」です。外見の類似、同じ宿将(Commander)の称号もあって、宿将オニールは宿将ニアールの子孫か、そうでなくとも血縁者であることが推測されます。

エオヒドの宝剣(Regalia of Eochaid)

エオヒドの宝剣はバグ修正前に能力値補正が入っていなかったことで有名な悲しい武器ですが、「エオヒド」はゲール語に由来します。
エルデンリングのエオヒドは国名ですが、ゲール語のエオヒド(Eochaid, Eochaidh, またはEochu)は人名で、英語化したスペルはEochy,  Achaius, Haugheyになります。アイルランドの神話では非常にポピュラーな名前であり、「マグ・トゥレドの戦い」などに登場する、かのダグザ神の別名を "Eochaid Ollathair"「偉大なる父エオヒド」といいます。また同じく「マグ・トゥレドの戦い」などに登場するブレス王の名前は "Eochu Bres" であります。また「侵略の書」に名前のあるフィル・ボルグ族の王エオヒド・マク・エルク(Eochaid mac Eirc)という王もいます(マグ・トゥレドの戦いはこちらからマグ・トゥレドの戦いと侵略の書のあらすじはこちらから読めます)。Eochaidという名前は馬 (ech) に由来し、アイルランドでは馬は神聖な動物だったのです。

エンヤ(Enia)

エンヤといえばアイルランドの歌手エンヤですね。ジョジョ3部のエンヤ婆を想起した人も多いでしょう。ご存じの通り円卓の二本指の部屋にいて、破片の主の追憶を武器や魔法にしてくれたり、装備を売ってくれたりします。
エンヤ(Enya)もゲール語由来の名前です。実在のエンヤはEnyaですがエルデンリングのエンヤはEniaなので、検索避けでスペルを変えてあるのでしょう。
Enyaは英語化されたスペルであり、ゲール語ではEithne(エスネ)となります(なぜこんなに変わるのか疑問に思う方はアイルランド語を勉強してください)。この名前はそもそもはアイルランドの神話にあらわれる女神Eithneに由来し、彼女はかの英雄神にして万能の神《長腕》のルグ(Lug Lámfada、同じく「マグ・トゥレドの戦い」、「侵略の書」などに登場)の母親です。エスネの娘なので、ルグはLug mac Eithnenn(エスネの息子ルグ)とも呼ばれます。

シーフラ河(Siofra River)

シーフラ河は地下にある河のエリアで、凶悪な狙撃能力を持つ祖先の民や無敵の雷球がいる地獄のような場所で、永遠の都ノクローンともつながっています(ノクローンって名前絶対ムアコックのパロディですよね?)。シーフラ河の「シーフラ(Siofra)」は非常にゲール語っぽい綴りで、特に "CioCa"(Cは子音)の並びが極めてゲール語的です。しかしゲール語の語彙にはこの単語を発見できなかったため確信はありません。

2022/03/27追記
Siofraは現代アイルランドの一般的な女性の名前であり、ゲール語síabair「霊、超自然的存在」に遡り、妖精のような子、チェンジリングの子を意味する名前です。情報提供:メキ氏(Twitter@Ph_karka)典拠:Wikipedia, Changeling

ゲール砦(Fort Gael)

ゲール砦はケイリッドにある砦で、近くにはゲール坑道(Gael Tunnel)もあり、この地域の地名でしょうか。。Gaelとは英語でゲール語の「ゲール」で、ゲール語の "Goídel" を英語化したものです。これはゲール人を意味します(わかりにくい)。
ダークソウル3に登場した奴隷騎士ゲールもまたGaelですが、こちらを想起させる単語選びです。
なお同じくケイリッドにある「牢獄洞窟」はGaol Caveとなっています(gaolはjailの古形)が、ゲール砦ゲール坑道の近くにあるため、Gaelの誤字かもしれません。
2022/04/03追記:英語版でプレイした結果、エルデンリングでは牢獄を一貫してgaolと表記しているため、誤字ではなさそうです。


ゲール語っぽいもの

ゲール語っぽい綴りだけど確信が持てなかったものです。

エインセル河(Ainsel River)

シーフラ河と同じく地下エリアということで英語を当たってみたら、こちらもゲール語っぽい綴り(CiCeCの並び)でした。しかし同じくゲール語の語彙にこの単語を見つけられませんでした。ゲール語読みすると「エンシェル」となります。

2022/03/27追記
エインセルはノーサンブリア民話の妖精譚 "My Own Self, Me Aan Sel or Ainsel" が由来のようです(情報提供:メキ氏;参考:Wikipedia)。シーフラとあわせてチェンジリングであることを示唆しているのでしょうか。
ノーサンブリア起源ということなので、Ainselの語源はゲール語ではないようです。

番外編:ウェールズ語のもの

半狼のブライヴ(Half-Wolf Blaidd)

ウェールズ語(カムリ語)はゲール語と同じくケルト諸語の一つです。
半狼のブライヴは英語版では "Blaidd" といいます。これはウェールズ語で「狼」を意味する単語で、音を日本語にするなら「ブライズ」です(ウェールズ語のddは /δ/ の音、英語の that の th に近い)。実はそのまんまの名前です。(情報提供:メキ氏)

余談ですが、宮崎Pはケルト語が大好きで、ダークソウルでも使いまくっていました。例えば薪の王グウィンは "Gwyn" ですが、これはウェールズ語で「白い」「神聖な」を意味する単語です。太陽の王にはふさわしい名前ですね。グウィネヴィア、グウィンドリンも同じです。さらに余談ですが、gwyn はゲール語の finn に当たり、これはアイルランドの英雄フィン・マックールの(Fionn mac Cumhaill)の名前の語源になっています。
他にもアルトリアス(Arthorias)はアーサー王(King Arthur)由来であることは有名ですが、アーサー王伝説も元をたどるとウェールズで、"Arthur" は「熊」を意味する語が元になっている名前です。

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