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ありふれた日常

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ほのぼのとした日常の風景を切り取ります。
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2019年12月の記事一覧

帽子

帽子が飛んでいる。 帽子はしばらく町の上空を旋回し、ある停留所に着地した。停留所といって…

meerkat
4年前
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あるバス停

バス停に列ができている。 100人はいるだろう。いや、「100人」という言い方は正しくない。並…

meerkat
4年前
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階段

K氏の職場はビルの37階にある。 ある日K氏は気まぐれで、オフィスまで階段でのぼることにした…

meerkat
4年前
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男、オウム、カラス

ある男が、飼っているオウムに「ボク、カラス」という言葉を覚えさせようとした。 しかしオウ…

meerkat
4年前
3

老人と橋

ヴルタヴァ川に架かる橋から老人が飛び降りた。 近くで見ていた物売りの老人も飛び降りた。 …

meerkat
4年前
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湖にて

湖で2人の男が釣りをしていた。 2人は同じ餌を使い、お互いのいる場所は10メートルと離れ…

meerkat
4年前
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最後の食事

ある老人が死にかけている。あと数日というところだろう。最期は自宅で迎えたいと、少し前に病院を出た。今は家族と穏やかに過ごしている。 「とんかつが食べたい」 体の状態が少し良いときに老人がそう言った。 ここ数年油物は控えていたが、元々とんかつも、から揚げも、天婦羅も大好きだった。 死期を悟って最後に好きなものを食べたいと思ったのだろう。家族も察した。 「そうだな、親父。昔みんなでよく行ったとんかつ屋に行ってみようか」 老人は自力ではほとんど歩けない。出前を取ることも