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高専から藝大を目指した話

群馬高専機械科3年の時に東京藝大に興味を持って、藝大デザイン科を目指して予備校に通っていました。

結論を言うと、高専卒業後1浪して東京藝大は2次試験で落ちて、造形グラフィック、多摩プロダクト、武蔵野工デ、金沢インダストリアル専攻、愛知県芸デザイン専攻に受かりました。

藝大以外受けた大学は全て受かって、結局愛知県芸デザイン専攻に進むことにしました。


事の発端は高専3年の春休みで、新型コロナウィルスの影響で5月の上旬くらいまで春休みが続いていました。

俺はこの長すぎる休みで完全に鬱になってしまって、自分の人生というか人間って何で生きてんだろうみたいなことをずっと考えてました。

その時に思い立ったのが、どうせいつか死んでしまうならやりたいことやって死のうみたいな事で、今やりたい事ってなんだろうと考えた結果なぜか藝大に行きたいってなりました。

そこから藝大のデザイン科を目指して、今に至ります。何でデザイン科かというと、今までの経験が生きそうだなと思ったのもあるんですけど、多分1番募集定員が多くて入りやすそうだと思ったからだと思います。今思うと全然そんなことは無い。

高専から大学に進む場合、ほとんどは3年次編入を利用して大学に入るんですけど(東大は2年次)美大に編入制度はほぼ無いし、編入してもあんまり意味無いと思ったので普通に1年生から入学しました。


具体的に何をやっていたか


高専3年生の9月くらいから地元の予備校に通っていました。群馬県にある高崎美術学院というところで、毎年1、2人藝大生が出るか出ないかくらいのところでした。規模が小さい予備校なので、結構出てる方だと思います。

最初はひたすら石膏デッサンをやっていて、平面立体に手を出し始めたのは4年生になってからだと思います(受験する前の年)。割と石膏デッサンが得意っぽかったので、藝大は2回とも石膏選択で受けています。

5年生の秋くらいからちらほら良いデッサンが描けるようになって、1次は頑張れば通るんじゃないかなという感じでした。平面立体は正直微妙でした。

高専の5年生は卒業研究をする必要があって、だいぶ忙しかったです。特に追い込みの時期なんかは卒論に追われて予備校に行けない日もあったし、藝大1次の前日は普通にホテルで卒論書いてました。そんなんで受かる訳ないよなと、今になって反省してます。

そのくせ5年生の時は本当に藝大しか行きたくなくて、受けたのは藝大と金沢ホリスティックだけでした。結局どっちも落ちたんですけど。


それで浪人することになるんですけど、浪人してた時が1番実力が伸びたと思います。平面立体もまあまあな物が増えてきて、デッサンも安定して描けるようになっていったと思います。

あと、夏や冬はお茶美に通ってました。やはり東京の大手予備校に行くのは大事で、絶対受かるような人がゴロゴロいるので参考になるし、刺激を受けました。YouTubeでよくお茶美の動画を見ていたので、酒井先生とかに実際に指導してもらったのとか嬉しかったです。あとマイケルに会えた。

最終的に藝大は落ちるんですけど、1次試験は凄くよく描けました。直前にお茶美に通って色々調整したのが良かったと思います。

2次試験は正直受けた時からこれは落ちたなと思っていて、それもあって後の金沢愛知は切り替えて受験することができました。この2校はどっちもいい物が作れて、藝大での失敗で自分の弱点みたいなものに気づけたんだと思ってます。


高専生が藝大を目指すということ


正直な話、高専から藝大目指すのはおすすめしないです。そんなやついないと思うんですけど。

というのも、卒業の時点で20歳なので、世間的には2浪の年齢という事になります。それで実力は現役みたいなものなので(人によるが)、余程上手くないかぎり合格は厳しいと思います。俺は現役(20歳)の時は1次で落ちました。

そこから1浪、2浪して藝大を目指すとなると、世間的には3浪、4浪と同程度のリスクを負っている訳で、それで受かるかも分からないし、それなりの覚悟がないとやってけないと思います。俺は1年が限界でした(金銭的にも)。


藝大を目指すというのはめちゃくちゃタイパが悪いというか、確かに誰にも負けないくらいの実力がつくと思うんですけど、就職のこととか考えると別にタマムサとか他の美大に行けばいいと思います。年齢を重ねてしまっている分現実的な選択肢を選ぶべきで、藝大を目指す労力は大学に入ってから頑張ることに使った方がいいと思います。

それでも俺が藝大にこだわったのは、もう自己満足です。現実的に考えれば高専から千葉大のデザインコースとかに編入するのがいいと思うんですけど、やっぱり本物の美大に行きたいとか、藝大生になりたい、藝大に対する漠然とした憧れみたいなものが呪いのように俺を縛ってくる訳です。

藝大以外でもいいよなと頭では分かっているのに、藝大のことが好きすぎて藝大以外考えられない。藝大と受験生の構図は、DV彼氏と依存症の彼女みたいなもんだと思ってます。

でも、結果として愛知県芸に受かったりできたのは、藝大を本気で目指していたからだと思います。国公立5芸大やタマムサなんかは普通の高校生が第一志望にするような大学で、浪人してそこに入る人も沢山いるわけです。その中で俺が受かれたのは確実に藝大レベルの実力を求めていたからだし、本物の実力がついたのかなと思います。


これから藝大を目指す人達へ


藝大を目指すということは、他の芸大美大を目指すということとは訳が違います。東京藝大は真に最難関芸大であり、他の大学が同列に並ぶことはありません。

しかし、だからといって藝大以外の大学が実力が足りていないのかと言うと、それは間違っています。藝大レベルの実力者が他の大学にいることなんてザラにあることで、藝大生よりも素晴らしい芸術家やデザイナー、建築家になる人は沢山いると思います。

つまるところ藝大受験というのは、藝大に受かるという1つのゴールに執着するということではなく、そこを目指す過程で自分が何を得るのかということに絶対的な価値があるものだと考えます。

そしてそれは、いかに自分の妥協点を見つけるかということでもあります。自分の価値観が藝大以外を拒絶するのであれば、何浪しても藝大を目指すべきだし、自分がいいと思うのならどんな美大に入ってもいいと思います。


大学受験は単なる通過点です。ここから自分がどう成長していくのか、何を得るのか、腐るのか。全ては自分次第であり、裏を返せばどんな選択も間違いでは無いということです。

俺はこれから愛知という土地で、仲間達と共に自分の進むべき道を模索していきます。藝大を目指す全ての人に、自分が納得出来る結果が得られることを願っています。拙い文章でしたが、読んでくださりありがとうございました。

入学式のオーケストラ演奏を聴いた時、今までの苦労が報われたような気がしました。

おまけ

受験時代の作品です

○○だらけ
パインアメ、ピーマン、トマト、ガラス板
海に棲む生き物
歪み
重をテーマに+スポンジの模刻
3点で立つ立体

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