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ロッドビルディングの本当の費用とは?

あんまり手を付けてはいけない沼の一つであるロッドビルディング。
わたくしは大好きでここのところは市販ロッドを買うより、作ったり改造する本数の方が圧倒的に多いです。
メーカーのロッドにはない、自分好みの尖った性能のロッドが作れる。
市販品には無いようなカラーやデコレーションが楽しめる。
古いロッドをリメイクして近代化仕様で復活できる等色々とメリットが大きいです。
そして何よりロッドビルディング自体が楽しい。
なのでわたくし個人としては、皆様ロッドビルダーになって、ロッド 作ろう!と言いたいんですがそう簡単に作れないのも事実。

最大の問題点は費用。
ネットで調べるとおそらく巣籠もり時期に書かれたであろう、釣り関連のニュース記事が出てきます。
高級ロッドも自分で作れば実際安い!
パパパッとやって終わりッ!簡単でしょ?
みたいなこと(誇張)ばかり書いてあっていまいち信頼性に欠ける。
ぶっちゃけ怪しい。

そこで実際1から道具を準備して、
価格10,000~20,000円くらいの一般的なルアーロッド
(スピニング、2ピース、6~7フィート前後、ルアー負荷5~14g)
を作ってみるとどうなるか?
という概算金額を出して試算してみようかと思いますわ。


最低限必要な道具

本当にこれが無いとどうにもならないレベルのものですわ。
ロッドビルディングを始める際は必ず買いましょう。


・スレッド 

ガイドを留めたり飾りで巻いたりする糸。
太さや色、果てはラメカラーや複合素材など星の数ほどもあるので値段もピンキリ。
ただ初めてロッドビルディングするために必要なものと考えると、シンプルなナイロンスレッドで700円くらいの物が3色あればどうでもなるとは思いますわ。
単価 700円×3個=2,100円

一般的なスレッドから特殊なスレッドまで
ロッドビルディングやってると際限なく増えます

・コーティング剤

巻いたスレッドに塗って塗膜でスレッドを固定するための液体樹脂。
基本的には2液性のエポキシ樹脂を使いますけど最近はUVレジンを使ったりする人も居ますわね。
メーカーや商品によって硬化時間や硬化後の硬さ、経年劣化耐性など色々あります。
とりあえず最初はちょっと大きい釣り具屋なら必ず置いてある、東邦産業かフジ工業のエポキシコート1セット買いましょう。
単価 2000円

これは富士工業から出てるものですけど好きなもの使えばいいと思いますわ。

・筆及び皿

コーティング剤を塗るための筆と皿で、ほぼ使い捨てになるのでホームセンターかネットの安いやつを買いましょう。
ただし筆は毛が抜けないものを選びましょう。
毛が抜けると毛が混じって大変なので申し訳ないがNG。
皿は塗料が染み込まなければなんでもいいと思います。
単価 筆400円+皿200円=600円

正直ちゃんと塗れればなんでもいいです

・各種接着剤

ロッドにグリップやリールシートを取付するためには必須。
これもすさまじい種類がありますが、まずは一般的などこにでも売っている60~90分硬化タイプの2液性エポキシボンドを買いましょう。
なお結構な量を使うときもあるので、少量の物はやめておきましょう。
単価 600円

どこでも売ってる銘柄にしたほうが補充もしやすいですわね

とりあえずはこれらがあれば最低限作業ができます。

計算すると
・スレッド×3個  2,100円
・コーティング剤 2,000円
・筆       600円
・接着剤     600円
合計       5,300円

既にこの時点でシマノやダイワの入門用ロッドに匹敵する費用になります。
加えてこれらは最低限必要な道具なので、後述するあったほうが良い道具が無いと快適なロッドビルディングはできません。

可能ならば必要な道具

ここでは無くても何とかなるけど、無いと快適な作業ができない道具をあげていきます。
結構高いものもあるのでここでガッツリ価格が上がります。

・ボビンホルダー

スレッドを巻く際に、スレッドボビンを固定して糸の出を一定にするための道具ですわ。
これが有るのと無いのではスレッド巻の快適さに雲泥の差が出ます。
単価 1,500円

糸の出や捩れを抑えてくれる優れもの

・フィニッシングモーター

前述したコーティング剤が硬化するまでロッドを回転させコーティング剤の偏りを防いでくれる道具。
これが無いとコーティング剤が硬化するまで(約1~2時間くらい)、定期的に手でロッドを回す羽目になるのでかなり必要度は高いですわよ。
単価 約7,000円

これが無ければ硬化までひたすら回す羽目になるので重要度は高いですわよ。

・マスキングテープ

コーティング剤のはみ出防止から仮止めまで色々使えるマスキングテープ。
物はホームセンターでもどこでも売ってるもので構いません。
ただしあまり粘着力の強い物や逆に弱いものは使いづらいので気を付けましょう。
単価 4巻セットで500円

・アルコールランプ

コーティング剤に気泡が入っている時、軽く炙って気泡を追い出すのに使用しますわよ。
ライターでも代用可能ですけど、煤が入って見栄えが悪くなるので嫌な人はこちらを使いましょう。
なおわたくしはライターで代用してるのでたまにミスります。
単価 1,500円

・グリップ開口用ドリル

ロッドのグリップ材の穴を大きくするのに使用します。
専用品もありますしホームセンターなどに売ってる木材用のドリルも代用できます。(専用品と違って少しぶれるとすぐに芯から外れるので、使用経験がない人は注意)
違う径の物が6種類くらいあると色々いじれます。
単価 1,000円×4本=4,000円

わたくしは主に木工用のを流用してます。

快適な作業のためにこれだけそろえると結構な初期投資になります。
計算すると

・ボビンホルダー     1,500円
・フィニッシングモーター 7,000円
・マスキングテープ    500円
・アルコールランプ    1,500円
・グリップドリル     4,000円
合計           14,500円

全部は必要じゃないけど、かなりの金額です。
これに最低限必要な道具が加われば約19,800円。
シマノダイワの中堅ロッドが普通に買えます。
もうこれ(安くなるか)判りませんわね?

ビルディング素材

道具が全て揃っても材料が無くてはロッドは作れません。
ただその材料もクラスによって価格が全く違うので、今回は一般的なクラスの素材を使用した場合で検討していきます。

・ロッドブランクス

今回は新品のブランクスを使用する前提で考えます。
中古のロッドをばらして使うのもよくありますけど、初めてでいきなりは難しいので今回は無し。
また前述したように一般的なクラスの物を使用するので、ロッドビルディング界隈では大手のジャストエースの商品あたりから選びましょう。
単価 8,000円

画像はちょっと特殊なブランクスでパックロッド仕様

・ガイド

これは大正義富士工業のガイドを使いましょう。
今回のコンセプトなら、ステンレス素材のバス用ガイドセットを買っておけば間違いないでしょう。
単価 4,500円

これも星の数ほど種類があるのでまずはセット品で。

・グリップ及びリールシート

これも本当はリールやグリップ形状を考えてパーツを選ぶんですけど、最初はジャストエースのシングルハンド用ストレートグリップキット買えば間違いないですわね。
EVAグリップ(硬質スポンジ素材) の方がコルクより安いのでそれを選びましょう。
単価 4,500円

ある意味ロッドと人間の唯一の接点。よく選びましょう。

・デコレーションパーツ

グリップ周りの金属パーツで、性能にはあまり関係しませんが見た目が格段によくなります。
あとはみ出た接着剤隠したりと、色々メリットが。
今回はグリップ周りに1個着ける想定で行きます。
単価 400円

個人の趣味で派手にもシックにもなる素材。

本当はこれにグリップとブランクスの隙間調整をするスペーサーや、バットエンドパーツも有りますが今回は省略。

合計すると
・ブランクス         8,000円
・ガイドセット      4,500円
・グリップキット     4,500円
・デコレーションパーツ  400円 
合計          17,400円

中堅ロッドだけじゃなくリールも買えそうです。
やはりヤバい。

総計

もう相当な金額になっているのは判りますが一応計算してみます。

・最低限の道具      5,300円
・可能なら必要な道具 14,500円
・ビルディング素材  17,400円
概算総計       37,200円

やっぱり安くないじゃないか(憤怒)
最低限の道具と素材だけでも22,700円です。
それだけでもメーカー品のロッドリール、ラインとルアーを含んだ入門セットが買えます。
何本も作れば道具代は償却出来ますが、そもそも初めてで何本もロッドは作りません。

しかもこれは組み立て前の価格。
自分で組み立てる必要があります。
ロッドビルディングに強いショップや、慣れてる人に教えて貰えば幾らかはスムーズに行くでしょうが、本や動画だけではなかなか上手く行かないでしょうしモチベーション維持は困難です。

これらの事を考えるとロッドビルディングすればロッドが安く手に入る!と言ったことは全く当てはまりませんわね…

買った方が安い(真実)

やはりどうしても自分専用の1本が欲しいとか、ロッドビルディングがとにかくしたい!と言う人以外はオススメ出来ませんわね。

けど最初に書いたようにロッドビルディングは実際楽しいので皆さんもロッドビルドしましょう!

おまけ 

ロッドブランクスを特注しよう(提案)

以前メーターオーバー前後くらいまでのタイメン(大陸にいるイトウ)やパイクをガンガン釣れるパックロッドが欲しくなったことがあります。
いろいろ探したけど当時(2017年位?)は、欲しいスペックのロッドが無く、いっそロッドブランクス工場に特注して作っちまえ!といった暴挙に及んだことがあります。
ここではその時にかかった費用と期間を書いていきますわ。

ブランク設計

まず工場と連絡を取り、いろいろ話し合った結果プロトロッドを1本作ってみることに。
ブランクスを作るためにはまず設計を行う必要があります。
一からの設計もできるらしいのですが、今回は似たようなスペックのロッドを基準にパックロッド化する方向で一部設計の短縮を行いました。
またカーボンの種類などもここで決めて、対応できるウェイトやアクションを決めていきますわよ。
この素材の選定は希望の対応ウェイトとアクションを伝えて工場の方の経験で決めてもらいましたわ。
ここまでで大体2週間くらいやり取りはしましたわね。

マンドレル設計

設計が終わるとすぐブランクスを作れるわけではありません。
ロッドはマンドレルと言う金属製の芯にカーボンを巻き付けて形にします。
これを焼き上げてその後成型、という工程でブランクスが出来上がります。
本来であればマンドレルも設計し、マンドレルを作成→ブランクス作成という流れになりますがプロトロッドの為にマンドレルを作ってたらえらいことになってしまいますわよ。
なので今回はブランクスの設計から逆算し、工場で持っているマンドレルの中から仕様に近いものを選定して流用しました。
これだとマンドレル代(物にもよるけど1セット50,000~100,000円くらい)と設計製作期間が節約できます。
ここは工場にお任せしたので1週間くらいでしたわ。

プロトブランクス作成

ここまで来るといよいよブランクスが作成できます。
工場の予定にもよりますが、1本作るのに発注から大体2週間くらいで到着しましたわ。
費用は特注価格で55,000円。
高いけどこれでも割引してもらってる上に特注だし仕方ないですわよなぁ?

プロトロッド作成とテスト

ブランクスが手に入ったらプロトロッドを作ってバランスや使用感などを確認します。
ブランクス自体のアクションを確認したり、それをもとにガイドやグリップセッティングを決めて作成。
フィールドに出て実際の使用感を確認など、ここでは自分で行う作業が沢山あります。
当然魚掛けたりなんだりもするので1月程度では終わりません。
この時は2ヶ月くらい色々テストをしていましたわね。
本来であればプロトロッドを何回も作って理想のバランスにしたり、破断テストもするんですが流石に予算的に厳しく諦めましたわ。

本命ロッドの設計~作成

テスト結果や使用感などをまとめたらそれらのデータをもとにロッドを設計~作成を行って行きますわ。
これもプロトと同じように工場の人と打ち合わせして、設計をしてもらいます。
これもやり取りは2週間くらい。

なお今回は5本くらい作るということもありマンドレルも作成しました。
5ピースのパックロッドだったのでマンドレルも特殊で150,000円くらいかかりました…
期間は設計含め2週間。

そしてブランクス代は量産効果が少しだけあって
54,000円×5本=270,000円
200本くらい作ると1/3くらいの値段になるようです。
絶対作らんけど。

ブランクス作成も2週間くらいかかったので合計すると6週間なので1カ月半くらいかかった計算になりますわね。

総計

これでプロトロッド1本+製造分5本の総計は
・プロトロッド(各種パーツ込み)
 55,000+15,000=70,000円
・マンドレル   150,000円
・本命ロッド(ブランクス代のみ)
 54,000円×5本=270,000円
総計      490,000円
総開発期間   約3ヶ月
ワーシャ+ステラが2セットくらい買える金額になりました。
凄いですわね(錯乱)

総評

ブランクスを特注してみて以下にロッド開発には期間や費用がかかるか判りました。
またロッドはブランクスに限らず、とりあえず市販品を買っておけということも骨身に染みて判りましたわ。
けどやってみては楽しかったし、今後余裕があればまた手を出しかもしれません。
とりあえず今後また何かやらかしたらここに書いて記録に残そうと思いますわよ。

おわり





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