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自分史上、最年少の宝石愛好家との出逢い。

私は大阪を拠点にジュエリーの事業を行っておりまして、海外への宝石の買い付けから、デザイン、自社工房での加工、修理やリフォームまで、すべてを手掛けております。40年近く前に父が創業しました。

弊社のジュエリーは全国各地の問屋様、小売店様にも卸しており、そのお付き合いの中で各地のジュエリー展示会、商談会に立ち会うことが多いのですが、これからお話ししたいのは2年ほど前のできごと。

ある展示会場でいつも通りお客様と商談しておりまして、話の流れでその方のお嬢様が宝石が大好きだという話になり、こう仰いました。「娘がいつも勉強している宝石の本があるんです。一度、図書館で借りたのですが、返した後にどうしても欲しいとお願いされてAmazonで購入したんです。」

そう仰るので、本の名前を聞いてみたら「見て楽しい宝石の本」とのことで、これは偶然にも宝島社様からのご依頼で私が監修させて頂いた書籍でした。

監修者の松本浩は私であることをお伝えすると、とても驚かれたお客様は「あとでもう一度、娘を連れて来ます!」と言って急いで帰られました。

数時間後、そのお嬢様が1冊の宝石本を抱えてお母様と一緒にご来場。本にサインをお願いされて、その本を手に取ってびっくり。

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明らかに読み込んでいるのが分かる状態で、付箋がたくさん貼られていました。ひらがなで書かれた宝石名を見て涙腺が緩みましたよ。

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お嬢様の年齢を聞いたところ、8歳でした。8歳といえば、私がちょうど宝石の仕事をしようと決めた年齢なんです。小学校2年生の文集に「将来の夢」を書くコーナーがあり、そこに私が書いたのは「将来はお父さんの宝石の仕事を手伝いたいです」という一文でした。

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お嬢様ははじめは緊張されていましたが、少しずつ笑顔が増えて、好きな宝石のお話を沢山して下さいました。

「松本さんが宝石のしごとをするきっかけは何だったのですか。私も将来宝石のしごとをする人になりたいのですが何を勉強すればなれますか。」という質問から始まり、付箋が貼られている箇所にそって実際のルース(裸石)やジュエリーをお見せしながら質問に答えるということを繰り返すこと2時間。8歳の少女が嬉しそうに宝石をルーペで覗く姿は、幼少時の自分と重なり胸が熱くなりました。

彼女は私がお逢いした中で、間違いなく最年少の宝石愛好家です。いつの日か、一緒にお仕事ができると嬉しいですね。

そんな日が来るのを楽しみに、宝石が紡いでくれた美しいご縁に感謝しつつ、ここに記しておきます。

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