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【北海道エアシステム(HAC)でマスク着用拒否】マスク着用拒否は安全阻害行為になることが確定か?

ロッシーです。

北海道エアシステム(HAC)で、ピーチ航空と同じような事件が起きました。マスク着用を拒否した乗客が、安全阻害行為に該当すると判断され、離陸前に機内から降ろされたとのことです。

機内でマスク着用を拒否すると、航空法が定める「安全阻害行為」に該当することがほぼ確定したのでしょうか?

そもそも安全阻害行為って何?

そもそも「安全阻害行為」とは何なのか、いまいちよくわかっていなかったので、きちんと一次情報を調べてみようと思い、条文を調べてみました。

まず「航空法」という法律の第73条の3に、安全阻害行為等の禁止等に関する規定があります。

(安全阻害行為等の禁止等)
第七十三条の三 航空機内にある者は、当該航空機の安全を害し、当該航空機内にあるその者以外の者若しくは財産に危害を及ぼし、当該航空機内の秩序を乱し、又は当該航空機内の規律に違反する行為(以下「安全阻害行為等」という。)をしてはならない。

では、この「安全阻害行為等」とは何なのか?

それについては、航空法ではなく「航空法施行規則」に規定があります。

施行規則とは

「施行規則? なにそれ?」という方に簡単に説明します。

「航空法」は国会で制定された「法律」です。つまり、私たち国民が選んだ代表者である国会議員が決めます。この法律でざっくり大枠を決めます。すべての事項を細かく定めるわけではありません。そのため、法律だけでは曖昧な部分や不明確な部分が残ります。

そうなると、その法律に基づき実際に運用する行政当局は困りますよね。だから、詳細な部分を実務的な観点から定める必要が出てきます。それが施行規則であり、いわゆる「省令」となります(政令というものもありますが、ここでは割愛します)。

つまり、「航空法」は法律であり国会で定めるものです。そして「航空法施行規則」は省令で、国土交通大臣が定めるものという違いがあります。

ちなみに、法律や省令をまとめて「法令」といいます。

航空法施行規則の規定はどうなってる?

さて、話がそれましたが「安全阻害行為等」について「航空法施行規則」ではどのように規定されているのでしょうか?

(安全阻害行為等の禁止)
第百六十四条の十五 法第七十三条の四第五項の国土交通省令で定める安全阻害行為等は、次に掲げるもの
とする。
一 乗降口又は非常口の扉の開閉装置を正当な理由なく操作する行為
二 便所において喫煙する行為
三 航空機に乗り組んでその職務を行う者の職務の執行を妨げる行為であつて、当該航空機の安全の保持、当該航空機内にあるその者以外の者若しくは財産の保護又は当該航空機内の秩序若しくは規律の維持に支障を及ぼすおそれのあるもの
四 航空機の運航の安全に支障を及ぼすおそれがある携帯電話その他の電子機器であつて国土交通大臣が告示で定めるものを正当な理由なく作動させる行為
五 離着陸時その他機長が安全バンドの装着を指示した場合において、安全バンドを正当な理由なく装着しない行為
六 離着陸時において、座席の背当、テーブル、又はフットレストを正当な理由なく所定の位置に戻さない行為
七 手荷物を通路その他非常時における脱出の妨げとなるおそれがある場所に正当な理由なく置く行為
八 非常用の装置又は器具であつて国土交通大臣が告示で定めるものを正当な理由なく操作し、若しくは移動させ、又はその機能を損なう行為

この条文には、1項から8項まで列挙されていますが、これらに「マスク着用拒否」に関する文言はどこにも見当たりません(まあ最近の出来事ですから当然ですよね)。

ただ、そういう場合でも柔軟な対応ができるように、きちんと手当がなされているものです。それが第3項のような包括的な規定です。

おそらく、この3項に基づき、北海道エアシステムの機長は「安全阻害行為等」に該当するという判断を下したものと思います。

三 航空機に乗り組んでその職務を行う者の職務の執行を妨げる行為であつて、当該航空機の安全の保持、当該航空機内にあるその者以外の者若しくは財産の保護又は当該航空機内の秩序若しくは規律の維持に支障を及ぼすおそれのあるもの

ピーチ航空のケースも、北海道エアシステムのケースも、マスク着用を拒否したことのみをもって、それが「安全阻害行為等」に該当すると判断されたわけではありません。

マスク着用拒否におけるCAとのやりとり等の態様が、当該航空機内の秩序若しくは規律の維持に支障を及ぼすおそれがあると判断されたことが原因となっているようです。

つまり、"マスク着用拒否" プラス "CAとのやりとり等の具体的な状況" により、3項に該当するかどうかの判断がなされることになります。

そうなると、今後のマスク着用拒否事案については、個別具体的なケースにより「安全阻害行為等」に該当するかどうか判断が分かれるかもしれません。

CAに怒鳴ったり大声を出したら、安全阻害行為等に該当する可能性は非常に高まるでしょう。

逆に、マスク着用拒否に合理的な理由(健康上の理由など)があり、医師の診断書も持っていて、本人が冷静な態度を保っているようなケースであれば、安全阻害行為等に該当すると判断される可能性は低いでしょう。

航空会社のほうでも、そういう乗客がいる場合には、周囲が空いている座席への移動を促すとか、何かうまいやり方を考えてもらいたいです。

運航スケジュールが遅れることは誰のメリットにもなりませんからね。

Thank you for reading !


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