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「映画芸術」誌ワーストワンの栄誉に輝いた問題作〜『怒り』

吉田修一を原作に仰いだ李相日の監督作品としては『悪人』に次いで二作目。主演級の役者をそろえた重厚なつくりの作品といえます。

凄惨な殺人事件が発生して一年。警察は整形手術や変装している可能性のある犯人の似顔絵を複数公表します。それに似た顔の男が三人。舞台は沖縄、千葉、東京。

本作は事件の謎解きよりも、むしろ、それぞれにワケアリの三人と三人に深く関わる人びとの苦悩を描き出そうと努めます。作劇としては破綻ギリギリのきわどい構成をとりながら、マイノリティ(基地問題を抱えた沖縄県民、性的少数者、家族のいない孤独な人間)の困難な生を浮かび上がらせていきます。

『映画芸術』誌の2016年度ワーストワン映画に選ばれてしまったようですが、本当の駄作・愚作はそのような場所にも登場せず、ただ無視されてしまうのがオチ。批評家から悪評を得るのもある意味で勲章といえるでしょう。具体的にどのような批判が向けられているのかチェックしていませんが、本作は一見の価値ありと思います。

*『怒り』
監督:李相日
出演:渡辺謙、森山未来
映画公開:2016年9月
DVD販売元:東宝

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