見出し画像

東アジア共同体の具体化を〜『21世紀の戦争と平和 きみが知るべき日米関係の真実』

◆孫崎享著『21世紀の戦争と平和 きみが知るべき日米関係の真実』
出版社:徳間書店
発売時期:2016年6月

外務省で情報調査局分析課長、国際情報局長などを歴任し、現在は評論家として活躍している孫崎享が文字どおり「21世紀の戦争と平和」について考察した本です。

第二次世界大戦後の国際秩序を概括し、日本の対米従属構造を明らかにしたうえで、集団的自衛権の行使が日本の平和にとってけっしてプラスにはならないことを説いています。恒久的平和を実現するためには「東アジア共同体」構想の具体化が必要だというまとめはよく見聞するものとはいえ、一つの見識を示すものではあるでしょう。外務省勤務時代は岡崎久彦の後輩・部下として仕えましたが、考え方は好対照だったようで、そのあたりの機微の描写も興味深い。

引用が多く、同じような話題があちこちに散らばるなど粗削りな印象なきにしもあらずですが、外交の現場にいた人ならではの具体的な論述はそれなりに説得力を感じさせることも確か。たとえば、湾岸戦争のときの日本の財政支援が国際社会で評価されなかったことを例にあげて軍事的行動の必要性を訴えるという常套的論法に対して、実際にはクウェートが日本に感謝していたことを孫崎は具体的事実にそって指摘しています。

また末尾に引用されている伊丹万作の「戦争責任の問題」と題された論文はネット上でも昨今よく引用されているけれど、なるほど一読に値するものだと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?