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夏裘冬扇〜『歴史は予言する』

◆片山杜秀著『歴史は予言する』
出版社:新潮社
発売時期:2023年12月

週刊新潮に「夏裘冬扇」というタイトルで連載したコラムを収録した新書です。「夏裘冬扇」とは柿本人麻呂の歌から採ったもので、「仙人は夏にも冬にも獣の厚い皮のコートと扇子の両方を持っている」という意味らしい。浮世離れした仙人のように、斜め目線で妄言を述べるとの趣旨だそう。

今を思いながら遠い昔を描くという前口上にもあるように歴史的な視点を織り込みながら現在を語るのが本書の基本スタンス。「歴史は予言する」という命題じたいは歴史を学ぶことの意義を説いたありふれた認識で、とくに斬新なものとも思えませんが、個々のコラムにはなるほどと思わせるものがあります。

安倍内閣が長く続いた理由を「この国が下り坂に入っているのに、国民多数がその事実を認めたくなかったせい」というのは一理あるでしょうし、ホワイトカラー系正社員文化は大正時代からたかだか一世紀の歴史しかないという指摘も興味深い。

というわけで、それなりに学びのある新書には違いないけれど、どうもこの人の文章が好きになれません。斜め目線というより斜め上から見下ろすような語り口調は私には嫌味に感じられるのでした。

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