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本読みの記録(2016)

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ブックレビューなど書物に関するテキストを収録。ブログ「ブックラバー宣言」に発表したものをベースにしていますが、すべての文章について加筆修正をおこなっています。対象は2016年刊行… もっと読む
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#原田マハ

爆撃が生み出した芸術の爆発!?〜『暗幕のゲルニカ』

◆原田マハ著『暗幕のゲルニカ』 出版社:新潮社 発売時期:2016年3月 パブロ・ピカソ畢竟の傑作「ゲルニカ」。スペイン内戦中の1937年、ドイツ空軍によって行なわれたゲルニカ空爆に怒りを爆発させたピカソが描いた作品です。実物を鑑賞したことがなくても印刷物やネット上で観たことのある人は多いでしょう。 この20世紀を代表する絵画作品をモチーフに二つの物語がパラレルに語られていきます。一つはピカソと彼を取り巻く人びとの人間模様、ゲルニカの創作過程を描いたもの。もう一つは「ゲル

日本美術的な感性を愉しむ〜『モネのあしあと 私の印象派鑑賞術』

◆原田マハ著『モネのあしあと 私の印象派鑑賞術』 出版社:幻冬舎 発売時期:2016年11月 アートを主題にした小説作品で知られる原田マハがクロード・モネの魅力について存分に語った本です。モネとの個人的な出会いの回想にはじまって、モネの生涯、彼が生きた時代の背景、印象派の美術史的な意義づけなどを要領良く解説しています。 話の内容は、日本の浮世絵からの影響やチューブ入り絵の具の開発と風景画との関連など、毎度おなじみのもので特に斬新な視点が打ち出されているわけではありません。