物事がひとりでに片づくことはない〜『終わりと始まり2.0』
◆池澤夏樹著『終わりと始まり2.0』
出版社:朝日新聞出版
発売時期:2018年4月
文学者にもし社会的役割があるとすれば、そのひとつは一昔前なら一般庶民の良識や常識を疑ってみたり、斜め上から世間を観察したり、というようなことがあったように思います。作家のエッセイには《無作法のすすめ》のようにしばしば挑発的な書名が付けられ、凶悪事件の犯人にエールをおくる言説が平然と雑誌に掲載されるようなこともありました。文学者のそのような言動を手放しに肯定するつもりはないけれど、それを読ん