ボコボコグツグツ

ある夜。

おじいちゃんが入院したと連絡を受け、急いで親に連れられて車で病院に向かった。

訳もわからず急ぐ。

田舎の病院へ向かう道すがら真っ暗な夜空に星が見える。

”おじいちゃん”

言葉少なく焦る両親の後ろで妙に“お利口さん”になる。

おとなしく黙っている子どもたち。

私はこのとき小学校高学年だったと思う。


不安だ。

おじいちゃんの容態というよりこの時間のこの雰囲気そのものが不安だ。

冷たい風を感じながら(冬に窓開けて走ってるから)、スピードが出てるので事故らんようにだけ祈って不安とともに半分寝ながら病院に到着。


酔っ払って、夜道を歩く男女二人組にからんでボコボコにされて複雑骨折で入院と。


「この人、ロックだな」

ベッドで眠るおじいちゃんをそう思いながら興味深く遠目に眺めた。

祖母はおろおろとしながら情けないと嘆いていた。

確かに!


私は今もあのときおじいちゃんは眠ったふりをしていたと思っている。

久々に会う孫たちに見せる姿としてその方がマイルドに状況のスパイスが伝わる気がしたんじゃないかと。

起きてたら祖母とガチンコだったろうし、父(祖父の子)からも何を言われるか。

そうなるとスパイスがあっという間に味付けにまで進んで、ほのかに香り広がるどころじゃ済まない。

グツグツ煮立つだろう。


私はボコボコ事件と今のこの状況がおもしろくて笑いそうになったけど、親や祖母の暗さにそういう純粋なふるまいを控えた。

・・・わけもなく、私は感情がそのまま顔に出るのでニタニタして陽気だったけど、周りはおじいちゃんに釘付けで誰もそれに気づかなかった。

夜の病室でピエロみたいに笑う私はおじいちゃんの新たな一面を発見したようで、そのスパイスを噛みしめた。

サポートしていただけるととても嬉しいです。 創作エナジーに還元させていただきます。 そして、あなたに深い感謝と愛を送ります。