さざ波のようにくりかえしくりかえし。-おとなの目で読むこどもの本ー13
眠りの番人たち。
『しきぶとんさん かけぶとんさん まくらさん』
眠るのが好きです。
ごろんと横になっているのが好きです。
とことんインドアなので、寝床でだらだらしていると心が休まります。
(あとで時間の使い方について色々反省しますが)
そのようなわけで、おふとんが大好きです。
おふとんさま、と言ってしまいたい。
そんな私がある日、素敵な絵本に出会いました。
もう、これは運命だと思います。
『しきぶとんさん かけぶとんさん まくらさん』
作・絵: 高野 文子
出版社: 福音館書店
表紙はとてもシンプル。
丸刈り頭でパジャマの裾をズボンにインした男の子が布団を敷いた和室の入り口に立っているところで、もうここから物語が始まります。
季節はおそらく晩秋から冬のちょっと肌寒い夜。
男の子は、しきぶとんさんと、かけぶとんさんと、まくらさんへ語りかけます。
男の子のお願いは、それぞれ一つずつ。
それに対し、しきぶとんさん、かけぶとんさん、まくらさんは、たのもしくも応えてくれます。
寝る前の、寝てからの不安のあれこれを、心強い味方が「まかせとけ」と答えてくれるお話です。
私のお気に入りはそれぞれの問答の前のページに必ずある、儀式めいた四コマの絵。
敷き布団の上に枕と畳んだ掛布団だけの図から、人が座り、掛布団に手を伸ばし、そしてそれを被って横になる。
台詞のない場面がちょっとしたアクセントになって次の場面へといざなうのです。
なによりも、高野文子さんのとても不思議な配色と絵と構図と繰り返される丁寧な言葉遣いのリズムは、誰の心にもすんなり溶け込めるのではないでしょうか。
また、そんなところが読み聞かせに向いているような気がするのです。
本のサイズは小さめですが、はっきりした線なので後ろまで見えるのではないかと。
なんなら、寸劇仕立てにして四人で語るのも面白いかな・・・。
男の子、しきぶとんさん、かけぶとんさん、まくらさん。
最後が輪唱または合唱のような感じになるので、そのような演出もありかと思います。
ただ短いから、声色を変えてみるというのも手かもしれない。
ついつい、そんな想像をしてしまう楽しい展開。
語り合いが素敵な、安心を届けてくれる優しい言葉運びになっていて、ゆっくり、ゆっくり楽しみたくなります。
そして何より。
日本の付喪神文化の良いところどりで、慣れ親しんだ寝具の一つにも感謝の気持ちを忘れない生活も大切だなあと思うのです。
それをおしつけがましく説くのではなく、楽しく優しく魅せてくれる作品です。
ところで、この布団に入る前の小さな不安と緊張感。
ここのところ眠りが浅くてどうにも体調のすぐれない私としては、わかるわかると深くうなずく状態になってきました…。
生まれたときからロングスリーパーとして名を馳せた私がなんてこと。
しきぶとんさん、かけぶとんさん、まくらさんへの感謝が足りないと言う事でしょうか。
歳を取ったからなどではない、感謝の気持ちが足りないのだ。たぶん。きっと。
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